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ディザイアゲート  作者: M.O.I.F.
第1部
10/39

第九話 再戦

どうも、Make Only Innocent Fantasyの三条海斗です。

毎度毎度、更新が遅くなってすみません。

今回はインターバルです。次回から、バトル開始です。

それではどうぞ!

「ふぅ……」

校舎のすみ、日の当たらない場所で一息つく。

アリーナの初戦が終わり、初めての授業。

まさか、由真と蓮花が俺と同じクラスだったとは……。

というか、大体うちのクラスは順位の低いペアが集まっている気がする。

……そういえば、一学年の生徒数は少ないのに、なぜ4クラスに分かれているのだろうか。

う~ん、謎だ。

そんなことを考えながら一人でうなっていると、怪訝な顔をした裕香が近づいてきた。

「遅かったな」

「……」

なぜか白い顔をしている裕香。

そこまで変な声を出していただろうか……。

それでも、裕香は俺の隣に腰を下ろすと自分の昼ご飯を広げた。

「……何を一人でうなってたの?」

ゆっくりと、裕香が尋ねてくる。

少し経って、何を考えていたのか気になったのだろう。

「いや、大したことじゃない」とだけ答えると、裕香は短く「そう」とだけ答えた。

「ところで、アリーナって次からはどうすればいいんだ? 対戦を申し込まなくちゃいけないんだろう?」

「雨音先生に、挑戦したい順位と対戦希望日を書いた申込書を出せばいいよ。でも、今の私たちだと、Dランクまでしか挑めないけど」

なるほど、申し込み方法はわかった。

だけど、Dランクってなんだ?

そんな疑問が顔に出ていたのか、裕香はすこしだけ考えると「えっと……」と言葉をつなげた。

「アリーナには順位以外にもランクっていうブロックで分かれてるの。上から順にA、B,C、Dっていう風に。ランクはクラスと同じだから、DクラスはDランクってこと」

へーそうなのかー。

って、雨音さんの言ってたすぐに分かるってこういうことか。

「つまりはランクを上げていかないと、1位には挑戦できないということか」

「そう。Dランクの一位になれば、Cランクに挑戦できるようになる」

ランク毎の1位をまずは目指さないといけないわけか。

そういえば、斎藤・武藤ペアがうちのクラスのトップだったな。

……なんだか、勝てそうな気がしてきた。

「それじゃあ、次はDランクの1位に挑戦するとしようか」

「練習試合の時と同じとは、いかないよ」

裕香の言葉は、叱責というよりも意気込みという感じだった。

軽率といっているのではない。

むしろ、戦いに行くことに関しては賛成を示しているようだった。

「そうだな。あの時は相手が油断していた。同じ相手とはかぎらないけど、慢心だけはいけないな」

その言葉に裕香は返事をしなかったが、小さく頷いていた。

そうと決まれば、行動は早いに限る。

昼を食べ終えると、俺はまっすぐに職員室へと向かった。


 * * * * * * 


「はい、確かに」

雨音さんは俺から申込書を受け取ると、承認印を押す。

申し込みって意外とあっさりしたものなんだな。

「各ランクの一位って日時の調整が必要になるから、絶対に希望日に対戦できるとは限らないってことだけは理解してね」

「それは、問題ないです」

まぁ、当たり前だよな。

ランクが上がらないと、そもそも一位を目指せない。

誰もが、最初の目的がランクアップになるだろう。

競争か……。

「そういえば、『順位』に対して挑戦するってことは、直前で相手が入れ替わるってこともありえるってことですか?」

「ええ、そうね。例えば佐伯君が勝った直後に挑まれたら、佐伯君は防衛側になるわね」

なるほど、入れ替わりが激しそうだ。

明らかに防衛側が不利な気がするが……まぁ、上に行く気がないのに居座られてもな。

「日程が決まったら、対戦表に張り出しておくから確認してね」

雨音さんに礼を言うと俺は職員室を後にする。

さて、これからどうしようか。

そんなことを考えていると、由真が職員室の前を通りがかった。

「あ、佐伯君じゃないか。こんなところで何を? ……もしかして」

「いや、呼び出し喰らうようなことしてないから。対戦の申込に来たんだよ」

由真は俺の返答を聞くなり、すごくがっかりしたような顔をする。

一体お前は、俺に何を期待しているんだ。

「お前はしないのか? 申込」

「私たちは興味ないから」

……すこしだけ耳を疑った。

そんなあっさりといっていいものなのか?

「最下位でもペナルティがあるわけじゃないからね。対戦しなくてもいいなら、するつもりはないよ」

あくまでも前回は挑まれたからやっただけ。

いままでも、試験だから戦っただけ。

そういうことか。

「まぁ、佐伯君が私にご褒美をくれるなら、考えてもいいけど」

「やらん。こっちはこっちで手いっぱいだ」

「ざーんねん」

ちっとも残念そうに聞こえない声で、由真はいう。

「……お前、友達いないだろ」

「れ、蓮花がいればいいんだよ!」

あ、ちょっと顔が赤くなった。

いつもはちょっとひねくれているが、もしかしたら素は素直な奴なのかもしれないな。

「それより……気を付けなよ、佐伯君」

「ん? 気を付けろって……何に?」

「君のパートナーに」

その言葉に、すこしだけ身構える。

由真が言っているのは、裕香の……異名のことだろう。

「噂には尾ひれがつくものだけどね、あの子のパートナーが死んだのは事実なんだよ」

「それなら心配ない」

由真の目を見て言い切る。

真実がどうであれ、過去がどうであれ、裕香は俺のパートナーなんだ。

信じてやらなくて、どうするんだ。

「はいはい、次の対戦を楽しみにしてるよ」

そういうと、由真は軽やかな足取りで去っていく。

言葉はどうであれ、心配してくれてるのは事実だろう。

昨日の敵は今日の友、か。

心の中で礼を言うと、俺は教室へと向かう。

昼休みは間もなく終わりを迎えようとしていた。


 * * * * * * 


翌日、対戦表を確認すると俺たちの名前があった。

どうやら、相手はこれで確定のようだ。

「佐伯君」

「ああ、決まったみたいだな」

対戦表にある『佐伯・水瀬ペア』の文字。

そして、その横には『斎藤・武藤ペア』と書かれていた。

練習試合で瞬殺した相手だ。

だが、あの時と同じとはいかないだろう。

「相手が決まれば対策も考えられる。裕香、奴らの特徴を教えてくれ」

裕香は頷くと、教室を指さした。

場所を変えようということか。

俺は頷くと、教室に向かって歩き出す。

裕香もその後ろに続いてくる。

2戦目。

前回は相手にやれっぱなしだった。

今回はそういうわけにはいかない。

対策が立てられるのなら、対策を立てる。

準備ができるのなら、準備をする。

前回の失敗は繰り返さない。

教室につくと、裕香はノートを取り出した。

文字がびっしりと書き込まれたノートは、それだけ使い込まれているのがわかる。

もしかして、ペアの特徴が書き込まれているのか?

それだとしたら、かなり有益な情報になるんじゃないか?

裕香は何枚かページをめくる。

目当てのページをみつけたのか、そのページを俺に見せてきた。

「斎藤君と武藤君は、肉体強化を得意とするペアなの。2人とも、近接戦闘に特化してる」

「前の練習試合でも突っ込んできたな。あれはそういうことか」

前の練習試合を思い出してそういうと、裕香は静かに頷いた。

「斎藤君は手数で相手を倒すタイプ、武藤君は一撃で相手を倒すタイプ」

「厄介だな」

一人が戦闘で、もう一人が後方支援……というようなタイプなら、戦闘系を潰せばどうにかなる。

ただ、2人とも戦闘系となると、1対1もしくは1対2の戦いに持ち込まれかねない。

そうなった場合、明らかに戦闘に向いていない裕香は危険だろうし、俺も2人相手に勝てる自信はない。

やはりどちらかを早々につぶす必要があるだろう。

だが……。

「近づけさせなければいい話だが……そうはいかないんだろうな」

「前に銃撃で負けてるから、対策はしてると思う」

俺の射撃も一般人の射的程度の精度だからな。

動き回られたら宛てられる自信はない。

「バレットは牽制で使うことになりそうだ」

「接近戦はどうするの?」

「ソードで対応するが、それ以外にも必要だな」

剣以外か。

「ヒット&アウェイを主体とするしかないだろうな。手数で攻めるタイプだ。それに……少し考えがある」

「考え?」

裕香がキョトンとした顔をするので、俺はその考えを耳打ちする。

「……できるの?」

「まだ試していないからな、断言はできない」

「……わかった、こっちでも準備してみる」

「頼んだ」

あとは、裕香の準備と俺の想像力次第、か。

対戦は……たしか明日だったはずだ。

それまでにできることをしよう。

そう心に誓い、俺は自分の席についた。


 * * * * * * 


「準備は……いいみたいね」

白い戦闘服に着替えた俺たちの姿を見て、雨音さんがつぶやく。

目の前には青白く光るゲートがある。

「2人とも、頑張ってね」

「はい!」

雨音さんに力強く返事をすると、ゲートの前に立つ。

隣を見ると、右手をぎゅっと握った裕香の姿があった。

「大丈夫か?」

「……うん、大丈夫」

裕香はそう返事をするが、やはりなれないのだろう。

右手の緊張は全然解けていなかった。

深呼吸をしたあと、気合を込めて叫ぶ。

「よし、行くぞ!」

戦いの幕はもう間もなく、上がろうとしていた。

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