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ディザイアゲート  作者: M.O.I.F.
第1部
1/39

第一話 始まり

お久しぶりです。Make Only Innocent Fantasyの三条海斗です。

久しぶりに物語を書きます。初めてのジャンルでもあるので、うまく書けるかはわかりませんが、最後までおつきあいいただけると幸いです。

それではどうぞ!

「ふぅ……」

目の前には大きな門。

そして、その向こうには白い大きな建物がそびえ立っている。

この門を潜れば、おれはしばらく外へは出られない。

覚悟は……できているか?

おれは自分に問いかける。

答えは決まっているじゃないか。

開かれた門の向こう側。

俺―――佐伯 一弥―――は、そこの中へと入っていった。


 * * * * * * 


「いらっしゃい、佐伯くん」

職員室にはいるなり、とても包容力のありそうな、きれいな茶色の髪の若い女性がいた。

この人は、見覚えがある。

というか、忘れるわけもない。

俺は、この人のせいで……いや、この人のお陰で、ここにいるのだ。

「ようこそ、天ヶ瀬学園へ。歓迎するわ」

「そりゃどうも、雨音さん。といっても、半ば脅迫でしたけどね!」

「うふふ~」

俺が学園にはいるきっかけになった日のことをいうと、彼女は柔らかく笑った。

どうやら、あの日のことについてはノーコメントということらしい。

「さて、とりあえず学生寮に案内するわね~」

彼女は、いくつかの資料を手にすると、俺を連れだって学生寮へと歩いていく。

学生寮は、本校舎からすこしはなれた場所にたってあり、それなりの距離があったが、それでも学校の敷地内。

ものの数分で俺たちは学生寮の前に立っていた。

「ここが学生寮。貴方がこれから生活する場所よ」

目の前にある建物は、趣だけでいうとホテルのようだった。

ただロビーにはホテルマンの代わりに警備員がたっており、入り口には監視カメラが配備されている。

「ここは泥棒被害でもあるのか?」

「まさか。泥棒なんて怖がって近づかないわよ」

率直な疑問を投げ掛けると、雨音さんは「こいつは何を言ってるんだ」みたいな感じで答えた。

まぁ、ここにたどり着くまでに正門を突破しなくてはならないから、生徒以外に泥棒なんて現れるわけもないか。

異様に警備が厳重なロビーを抜け、階段を2つあがる。

3階の一番奥。

それが俺の部屋のようだった。

雨音さんが鍵を開けてなかに入ると、それこそまさにビジネスホテルよりもすこし広い部屋が目の前にあった。

「テレビとパソコンはあるけど、消灯時間を過ぎると使えなくなるから注意してね」

「そういうところは学生寮みたいだなぁ」

「みたい、じゃなくて学生寮です~!」

ほわほわとした雰囲気を持っているからか、ツッコミもどこかほわっとしている。

「ところで雨音さん、明日から編入予定って聞いてるけど、俺のクラスはどこです?」

「ああ、そういえばまだだったわね」

いま思い出したように、胸の前で手のひらをパチンと叩くと、職員室を出る前に手に取った書類を渡してきた。

「これが編入届けのコピーで、これがクラス名簿。あなたは1年のDクラスよ」

「へぇ~アルファベットのクラス分けなのか」

「まぁ、ね。理由はすぐにわかるわよ」

雨音さんの物言いは、どこか含みがあったように思えた。

しかし、そんなことなど気にならないくらい、手にした資料をまじまじと見ていた。

「それじゃあ佐伯くん、また明日ね」

「はい」

雨音さんは手を降りながら、部屋をあとにした。

一人になった俺は、ベッドに腰かけて資料を見る。

「やっぱり、いまだに信じられないな……」

俺がここにいる理由、この資料にかかれている理由。

その理由は自分でも、理解できるものではなかった。

しかし、現実に俺はここにいる。

あの日の出来事が、夢でないと俺に告げてくる。

それは、遡ること2週間前―――。


* * * * * *


「麻弥!」

「お兄ちゃん! 助けて!!」

俺は、目の前の光景を疑った。

妹の―――麻弥が謎の光に包まれ、その光が周囲のものが全て砂と化していくからだ。

それは、家具だけじゃなくて畳や柱、挙句の果てには鉄でできたフライパンでさえも砂へとなっていく。

「麻弥! 落ち着け!!」

俺は必死で声をかける。

だが、パニックになっている麻弥は「助けて」と叫び続けるだけだった。

時間は無情にも過ぎていく。

台所だった場所は、いまは何もない空間へとなっていく。

これが2階とかであったのなら、俺たちは落ちてしまっているだろう。

だが、1階だからといって安心はできない。

麻弥の周囲に起きている現象は壁までも砂に変えていく。

壁が壊れ、俺たちがつぶされるのも時間の問題だろう。

あの光が物体を砂に変えるまでは、少し時間がかかる。

あの力があっても、天井が落ちてくれば麻弥は助からない。

何とかしないと!

「麻弥!」

俺は手を伸ばす。

だが、その光に触れたとたん、手のひらに激痛が走った。

「ああああああ!」

熱した鉄板に手のひらを押し付けるような感覚。

掌の皮膚が溶けていくような、そんな痛みを感じ激痛に思わず手を引っ込めてしまう。

あの光に触れることができない。

それは同時に、麻弥に触れることができないということを意味していた。

いや、俺が命をかけて飛び込めば麻弥の元にたどり着けるだろう。

どれだけの痛みが俺を襲うのか、想像もつかない。

もしかしたら、溶鉱炉で溶かされた方がマシな痛みが来るかもしれない。

「麻弥っ……!」

俺は何もできないのか……!

そんな悔しさが胸を締め付ける。

『力を望むか?』

「なっ!?」

どこからか聞こえた声。

辺りを見回してみるが、俺たち以外誰もいない。

「誰だっ!」

『力を欲するか?』

俺の問いかけに応えず、その声は淡々と問いかけを続ける。

「俺は……」

『力を欲する者よ、汝の願いを言え』

願い……。

俺は考える。

この問いに応えなければ、こちらの問いにも答えないだろう。

ならば、考える。

俺の答えは……!!

「俺は、麻弥を……妹を助けたい! 力をよこすっていうのなら、さっさとよこしやがれ!!」

『汝の願い、確かに。ならば、我は汝に力を与えよう』

その声が聞こえた直後、俺の体が光に包まれる。

その光は、どこか温かく、どこか冷たくもあった。

「これが力……?」

感覚的に変わったところはない。

だが、頭の中に強烈なイメージが浮かび上がってくる。

光がまっすぐに伸びていく。

そんなイメージ。

いける。

俺はまっすぐ手を伸ばして駆け出す。

「麻弥ぁぁぁぁぁぁ!!」

手のひらを光が包む。

焼けただれるような痛みは襲ってこない。

俺は、麻弥に向かって走る。

あとすこし―――!

「ああああああああああああ!!」

そう思ったとき、麻弥が叫んだ。

直後、俺の体は光の外に吹き飛ばされていた。

「っ! 麻弥!!」

俺は、目の前の光景を再び疑った。

俺達は自分の家にいたはずだ。

だが、今俺たちは更地のど真ん中にいる。

家は跡形もない。

手の下にはさらさらとした砂が広がっている。

麻弥がすべてを砂に変えてしまったんだ。

そう理解するまでに時間はかからなかった。

「麻弥……!」

俺は地面を強くたたく。

力が制御できていないのか、俺の手が麻弥に届かない。

「助けてよ、お兄ちゃん!!」

泣きながら叫ぶ麻弥。

ただそれを、俺は見ていることしかできなかった。

「どうやら、間に合ったようね」

俺の背後から聞こえた声。

そこには、茶髪でスーツを着た女性が立っていた。

「お願い、沙良ちゃん」

「……」

スーツを着た女性が呼びかけると、後ろにいた学生服を着た少女がうなずき前に出る。

「お、おい! 麻弥に近づくと砂になっちまうぞ!」

「大丈夫」

少女はとても静かな声で、そう答えた。

そして、ゆっくりと麻弥に近づいていく。

その後ろには、学生服の男が立っていた。

「……障壁展開」

少女がつぶやくと、彼女の周りに光の壁が出来上がっていく。

その壁は少女を守るように広がり、ある程度の大きさになると何やらプログラムのコードのような文字が浮かび上がった。

それを確認すると、少女は麻弥に近づいていく。

「お、おい!」

「大丈夫だから、ね」

スーツを着た女性は、俺の肩に手を置く。

それは母親が子供を落ち着かせるような、そんな動作だった。

少女の障壁が麻弥の光に触れる。

障壁が砂になる―――。

そう思ったとき、麻弥の光が消えていくのを感じた。

少女の障壁が麻弥の力を飲み込んでいる。

そんな風に見えた。

「お願いします」

少女が後ろにいた男に声をかけると、男は麻弥に手を伸ばす。

「ま、待て! 何をするつもりだ!?」

男は応えない。

次の瞬間、麻弥の顔が恐怖に染まった瞬間、糸が切れたように倒れこんだ。

どうやら、麻弥が意識を失ったようだ。

意識を失ったことを確認すると、どこからか取り出した檻に麻弥を入れる。

まるで動物を捕獲するような檻だった。

嫌な予感が頭をよぎる。

「隔離」

男が静かにつぶやくと、麻弥が闇に飲まれていく。

だんだんと、ゆっくりと飲まれていく麻弥。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

手を振り払って麻弥の元へ駆け寄ろうとするが、つかまれた手が振りほどけない。

そこで俺は、落ち着かせるためではなく押さえつけるために肩に手を置いたのだと悟った。

手を伸ばす。

あの男を離れさせないと!

そう思った直後、俺の手から光線がまっすぐと伸びた。

「っ!? アビリティ!?」

少女が驚いた顔をした直後、あの障壁が広がる。

その障壁に当たり、俺が放った光線は霧散した。

「くそっ! 麻弥! 麻弥!!」

俺は必死に叫ぶ。

その声が麻弥に届くと願いながら。

だが俺の声は麻弥に届かず、彼女の体は完全に闇に飲まれた。

「お前ら! 妹に何をした!!」

感情を隠そうともしない、怒鳴り声。

そんな感情は読み取っているはずなのに、スーツを着た女性は落ち着いた声で淡々と告げる。

「力が暴走してしまっていたから、別の空間に隔離したの」

「力が暴走? 隔離? 一体、何を言っている!」

「説明をするのは、ちょっと手間ね。う~ん……」

女性は何かを考えているようだった。

そして、「そうだ」と何かを思いついたような声をこぼす。

「妹を助けたかったら、こちらの要求に従ってね」

「脅迫だと!? 一体、何が目的だ!!」

突然の脅迫に少し驚いたが、俺は問い詰める。

だが、女性は笑顔を崩さない。

「どうする? 君がこちらの要求に従えば、妹さんの安全は約束する。従わなかったら……わかるわね?」

「くっ……! ……要求はなんだ」

妹を人質に取られている以上、要求に従うしかない。

金か? 命か?

いや、もしかすると犯罪を要求されるかもしれない。

人殺しとか。

冷汗が流れるのを感じる。

だが、スーツを着た女性が放った言葉は意外なものだった。

「天ケ瀬学園に転入すること。ただ、それだけ」

「……は?」


 * * * * * * 


そんなこんなで、俺はここにいる。

一応は事情を説明してもらい、俺と麻弥がアビリティと呼ばれる能力に目覚めたこと。

その力が暴走してしまい、麻弥自身に命の危険があったこと。

それを守るために、麻弥を監視下に置いていること。

麻弥を助けるには、麻弥の力がなくなるのを待つ必要があることを教えてもらった。

だが、それは長い時間を必要とするもので、麻弥は最低でも3年は眠ったままである必要あることも。

そして、麻弥を助ける別の方法も。

「アビリティアリーナか。要は闘技大会だよな」

雨音さんからもらった資料を一通り目を通したあと、一人でつぶやく。

まぁ資料だけじゃわからないことは、明日にでもわかるだろう。

雨音さんもそう言っていたし。

そう思った俺は、ベッドに横になる。

目を閉じると、睡魔はすぐにやってきた。

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