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kingdom fantasia  作者: 衛刀 乱
旅の始まり
8/104

出発

「さあ!早速始めようか」


アウリスとガロが辿り着いた所はアウル山脈のとある洞窟だった。ガロが旅の途中で立ち寄る無人のところなのであるが、近くには川があり、自然豊かな静かな所だった。

アウリスは村の外にはこんな場所があるのかと感心していた。

しかし、遊びに来たのではない。感動も束の間、気を引きしめる。


「これを使うんだ」


手渡されたのは普通の量産された剣ではないような鞘に彫刻が施してある綺麗な剣だった。


「昨夜、通りすがりの刀商に無理言って売ってもらったんだ」


「ありがとう!大切にするから!」


アウリスは涙が出そうな程嬉しかった。わざわざ刀商を探したりして大変な思いとお金を使わせたことは申し訳ないと思ったが、何よりもガロからの贈り物という物がとても特別に思えた。


「うん。頑張って強くなろう! あとここでは自給自足になるからね。これからのためにアウリスが一人で調達してくるんだ。ちなみに二人分ね。アウリスが頑張ってくれないと僕が飢え死にしてしまうから宜しく。では構えて! いくよ!」


キンッ


二人の剣が交わる音がのどかな山奥にこだまする。

初夏の風が二人を応援するかのように通りすぎていった。




王都 ロージリア


「今、国はどうなっておるのだ。本当に平和なのか?」


ハルト王は先日行われた毎年行われる建国日記念式典での雰囲気が頭から離れないのだった。式典に出席した皆の表情は平和な国とはかけ離れた殺伐としたものだった。


「この国に何か問題があるのか。それとも私が悪いのか」


ハルト王は常日頃からこの国はとても平和です。民は王の事をとても敬っています。としか聞かされていない。今まではそれを信じていい気分になっていたのだが最近はそれが嘘の報告であるような気がしてならなかった。ハルト王は再び左大臣に聞いた


「どうなのだ?正直に申してみよ」


「この国は王の威光により、民はとても幸せに暮らしており感謝の声が止みません」


いつもと同じか……


ハルト王は15才で王に即位したはいいが何が分かるでもなく全てを周りに任せきりにしていた。それは時が経った今でも変わらなかった。というより何もさせてもらえないのだった。口を出しても、さすがでございます、そのようにしましょう。と言いながら何の報告もない。聞いても平和であります。とばかり、最近ではうんざりして口を出すのも止めてしまった。


「はあ……」


溜め息を漏らしたその時、宰相セガロが王の間に入ってきた。


「どうしたのです? お顔の色が優れませんな」


「ああ、セガロか。近頃、皆の私を見る目が厳しいように思うのだ。何か要望があるなら聞いてやりたいのたが」


クックッ 気付いていたか


「それは、今年の食糧の収穫が悪天候が続いたので思いの外、悪かったのです。それで皆は多少、神経質になっておるのかもしれませんな」


セガロは腹のなかで笑う。


「そうだったのか、皆に苦労かけておるな。労ってやりたいが何かしてやれることはないか」


ハルト王は左大臣に言うと、左大臣がセガロの顔を見た。


「さすがはハルト王!では各方面へ労いの品々と支援金を渡しましょう。左大臣 ! 頼んだぞ」


左大臣の代わりにセガロが答えた。しかし、左大臣はこの言葉の意味は何もするなだということを心得ている。以前にセガロの言葉通りに実行して、無能と罵られ殺された官を何人も見てきた。


「では、そのようにしてまいります」


そういって左大臣は退室する。


「セガロ、私の世継ぎが出来る兆しはまだ現れんのか?」


ハルト王は再びセガロに話しかけた。そろそろ次の王に相応しい世継ぎを作らなければならないと思うようになっていた。


「はい、まだそのような話はでておりません。ですが諦めずに励むようになさいませ。相手を変えれば進展があるやもしれません。新しい相手を用意します」


またセガロは、心の中で笑っていた。実際は何人が身籠った報告を受けていたがその度に病死を装い殺害して揉み消している。


世継ぎが出てくるのは迷惑なのさ


王の周りは完全にセガロが掌握していた。




三ヶ月後


山の景色は既に秋の色を描いていた。暖色に彩られた木々から時折ゆらゆらと落下する葉が早くも夏を懐かしませる。


「これで剣を教えるのは終わりだ。よく頑張ったね」


ガロは三ヶ月の間に逞しくなったアウリスを眩しそうに見つめた。気のせいかもしれないが幾分身長も伸びたように感じていた。それは少なからず強くなったことにより内面から滲み出る自信によるものなのかもしれない。


「だけど毎日練習をするんだよ。そして、前にも言ったけど、いきなり軍には入らないでまずは自分の足で歩いてこの国をみてごらん。それから何をすれば一番いいのかを考えて欲しい」


「うん。一緒には行けない?」


答えは分かっているがアウリスは聞かずにいられなかった。


「僕はお尋ね者だからね。でも一人なら捕まらないから大丈夫さ。あと、やりたいことがあるんだ。それが出来るようになったらアウリスにみせてあげるよ」


「やりたいこと?」


「そう。出来るようになってからのお楽しみ」


「じゃあ、また会えるんだね?」


「ああ!必ずまた会えるよ」


ヒュンと涼しい風が通り抜ける中で二人は小さな約束を交わした。


「見送るよ」


大きな帽子を風に揺らしてガロは小さく手を振った。


「うん、またね」


アウリスはレトに向かって歩き始める。


アウリス、君に精霊の加護がありますように


ガロはアウリスが見えなくなると帽子を深く被り直して歩き出した。





「やっぱり行っちまうのか?」


ダンガスは我が子を送り出すような頼もしげだがどこか寂しい心境だった。実際アウリスの事を我が子のように育ててきた。それは、アウリスにもとても伝わっている。ミラと比べて何か差があるようなことはひとつもなかった。だから、アウリスも我が家を離れるようなまた戻ってくるつもりなのにもう二人に会えないような寂しさを感じていた。ミラも笑顔で接してくれていたが寂しさを隠しきれずにいた。


「これ持っていってね。」


お弁当と小さな皮袋を手渡した。皮袋の中身は銀貨五枚が入っていた。


「お金は要らないよ! しかもこんなにたくさん! お弁当だけもらうよ」


アウリスはそう言って皮袋をミラに返そうとしたがダンガスが大きな掌でそれを制した。


「お金はあって困るものじゃねぇ。使わなくてもとりあえず持っていくとええ」


「ありがとうダンガスさん。じゃあ行ってきます!」


ダンガスとミラに別れを済ませたアウリスは村を出た。少し歩くと村の周りを巡回中のトーマに会った。


「旅に出るんだってな。そろそろ自警団に勧誘しようとしてたのによ」


「ゴメンよトーマ。帰ってきたら入れてくれないかい?」


アウリスは笑顔で言った。


「ああ!それまで待ってるよ。ソルテモート州軍に用があったら俺の名前を出して、トトっていう軍曹に話しかけたら力になってくれると思うよ」


「ありがとう!じゃあ」


トーマ達にも別れを告げてアウリスは出発した。






アウリスはソルテモート州を抜けてムトール州に入った。ソルテモート州は山が多い地域であるのに対してムトール州は平地が多い。そんな中でアウリスは空腹と戦いながら歩いていた。


山の中なら食べ物はたくさんあるけどここら辺は何もないや……


ミラに弁当とは別に貰った日保ちのする堅焼きのパンを少しずつ、大事に食べていたのだがそれが尽きてから一日半が経つ。


あっ! 街だ!


遠目に見ると分からなかったが近づくにつれて大きな街であることが分かった。街路にはたくさんの出店が並んでいる。


うわー、こんなにたくさんの人がいる街は久しぶりだ


アウリスはガロと二年間、旅をしていたときに立ち寄った街の事を思い出した。


そういえば出店でガロに甘ダレで焼いた鶏肉をパンで挟んだサンドイッチを買ってもらったな


この街の出店も色々な物が売ってある。果物や野菜、金物や木工品。食べ物は小麦で作った麺をスープが入った器に入れた食べ物や、餅を黒いタレに浸けて焼いた物と様々だった。


アウリスはなるべく値段が安そうで量が多いものを探した


あれにしよう!


見つけたのは大きい丸の形をした表面がキツネ色の少し固そうなパンで、ムトールパン5ジルと札に書いていた。店の人に声をかけようとしたが先客と接客中だった。


「二つで8ジルだよ」


「はあ? 二つ買うんだから1ジルくらいまけろよ」


凄い……


おそらく年下だろうと思う顔で、背丈はアウリスより頭ひとつ分低いその子は、小さいが三角形のパンにウインナーを乗せたパンを二つ持って、値段の交渉をしていたのだった。


「クソガキ、文句があるなら他で買いな」


「ちぇっ! 分かったよ! はい! 金だ」


そう言ってクソガキと呼ばれた子は小さな銅貨を8つ渡した。


男の子? 女の子かな? 見た限りでは男の子とも女の子とも見えるけど口調からして男の子だな


アウリスはそう思いながら、自分の目的を果たそうとした。


「これください」


「5ジルだよ」


ここで戸惑う事となった。アウリスはお金を使った事がなかったのだ。ガロと旅をしていたときは、ガロが買い物していたのと、村ではお金のやり取りはダンガスかミラがしていた。


「これで足りますか?」


アウリスは店の人に銀貨一枚を手渡した。


「あいよ、おつりだな。お前さんお金使った事がないのか?」


「あっ、はい」


隣の少年は怪訝そうにアウリスを見ていた。


「初めてお金を使うのか。はい、パンとおつりだ」


店の人は手に持ったおつりを数え直して、アウリスにパンとおつりを渡した。


「ありがとう」


「ちょい待ち! その手のひらの中、見せろ!」


アウリスは突然、少年に声を掛けられ驚きながら手のひらを開いて見せた。


「おいオヤジ! 釣りが足んねぇぞ! 商人が金勘定間違えんじゃねぇよ!」


アウリスの手のひらには30ジルしかなかった。


「へへっ! 間違えてたか! わりぃな」


狼狽している店の人が追加で渡してきたお金をふんだくると、少年はキツイ眼差しをアウリスに向けて言った。


「おい! 行くぞ!」


目を丸くしているアウリスの腕を掴むと引っ張って店を離れた。


「お前バカか! もう少しで騙されるトコだぞ! 全くどこの田舎モンだ! お前が渡した銀貨一枚は100ジルだ! つまり、銅貨100枚だからさっきのお釣りは95ジルだ! 65ジルも余分に取られかけてたんだ! ほらっ!」


そう言って少年は広げさせたアウリスの手のひらにお釣りを乗せて、そこから銅貨五枚を掴み取った。


「これは授業料だ!安いモンだろ?もう騙されるんじゃねぇぞ!」


そう言って少年は人混みに紛れていった。呆気に取られたアウリスはお礼を言うのを忘れたことに気付いた。


次に会ったら、お礼を言おう


アウリスはムトールパンを4つにちぎり、一つを口で挟みながら残りをバッグにしまった。


パンを頬張りながら街を歩いた。どうやら人で賑わっている街路は街の中央の一本だけで道を逸れて通りを外れると家が並んでいた。さらに奥へ進むと人通りが少ない陰気な雰囲気の通りに出る。建物は看板を見ると飲み屋が何軒か並んでいたが、昼下がりの時間では開いている店はないようだった。


「おい!」


アウリスが後ろから声を掛けられた。振り返ると男の三人組がナイフを手に近づいてきている。


「俺達、金無くて困ってんだけど少し恵んでくれねぇか。今夜は飲み明かすから1000ジルだ」


えっと……お願い事する態度じゃないよね……しかも1000ジルって。一体どれだけ飲み食いする気なのだろう


「そんなにお金持ってないし、渡す気もない!」


「残念だ。じゃあ痛い目見て有り金全部置いていってもらうしかないぜ」


そう言って男はナイフを振りかぶってアウリスに切りつけた。


ドンッ


アウリスは攻撃をかわし、手刀で男の手首を打ちつけ、ナイフを手放させた。


「うっ、てめぇ」


武器を失った男は激昂して殴りかかってきたが、アウリスは相手の腕を掴みそのまま背負って地面に叩きつけた。


動きが遅いし、動作も大きいから当たるわけないよ

ガロが相手をしてくれた時はもう……

優しい顔をしていても容赦がなかった


ガロのお陰だよ


このまま三人とも、打ち負かす事は可能だったがアウリスはこれ以上傷つけるのは嫌だし、傷つけられるのも嫌だと思い、逃げる事にした。


「待てこの野郎」


投げた相手はまだ悶絶していたが、残りの二人が追いかけてきた。右へ左へ路地に入り込むがなかなか諦めてくれない。


通りに出よう


そう思ったアウリスだが、土地勘がない上に適当に走ったので完全に迷子になってしまった。すれ違う人達は後ろからの怒声にも無反応だ。


こんなことは日常茶飯事なのかな


走りながら思い巡らせて建物の角に差し掛かったとき、


ドンッ


アウリスは何かと正面衝突した。


「ってぇなー! どこに目をつけてやがんだ!」


「いてて、ごめんなさい! えっ?」


ぶつかったのは先程の少年だった。


「やあ! また会ったね!」


「お前はさっきの田舎者!」


少年は少し驚いたが別にどうでもいいという風に右を見て左を見た。すると、少年の後ろから怒声が聞こえた。


「待てクソガキ」


少年は三人の男達に追われていたのだった。


「しつこいんだよ!」


少年はアウリスを押しのけてアウリスが来た方向へ向かおうとしたがその先から走ってくる男達を見て顔を引きつらせた。


「こっちだ、待ちやがれ」


アウリスを追いかけてきた二人が追いついてきた。


「なっ!? お前も追われてたのか! ったく! ついてこい!」


少年が走り出し、アウリスも後をついていった。


少年はこの街に詳しいのか建物の中に入って窓から飛び出し、屋根の上を走っては高低差のない所で飛び降り、通行人にぶつかって怒声を浴びながらもメインストリートの人混みに紛れた。


「はあ はあ はあ、撒けたか」


少年は膝に手をつき、肩で息をしていた。アウリスもさすがに息切れしている。


「はあ はあ、一体何をしたの?」


「お お前がそれを聞くのか!? まぁいい、あいつらが詐欺まがいな物を売ってるから、本当の事を言ってやったら逆上しやがってこの様さ! リリクサの根を100ジルで売ってやがるから怪しいと思ったんだ。リリクサの根ってのは痛みを和らげる効能がある需要の高い薬の材料だ。相場は一本800ジルだぞ! 本物だったら全部買ってやるって言って売り物のリリクサの根をかじってみたら、姿形はそっくりだが中身は全くの別物だった。ありゃどこかで生えてた雑草だな。それで偽物じゃねぇかって言ったら、因縁つけやがってって鬼ごっこが始まった訳さ。これでもオレは薬の商人なんだぜ? まぁそれ以外にも何だって取り扱うけどな。お前は何をしたんだ?」


「僕はいきなり金を出せって言われたから逃げてきたんだ」


「ああ、脅されてたのか。お前は見るからに田舎者丸出しだからな。大体そんな大層な剣を持ってんだからやっつけろよな」


「それはちょっと……」


「なんだよ! 使えないのかよ!」


「あっ、さっきはありがと! お礼言えてなかったから。僕はアウリス」


「ん? ああ、いいよ。オレはロキだ。国中を廻って商売してる。ここへ来たのはたまたまだ、もう会うこともないと思うがな」


「じゃあまた会うかもしれないよ。僕はこの国中を旅するつもりだから」


アウリスは村を出てからこんなに人と喋ったのは初めてだとふと気付く。


「旅? 何のために?」


「この国から争いを無くすために何をすればいいのかを考えようと思って」


「争いを無くす? ハハハハハハッ! アウリス、お前ホント馬鹿だな! そんなの無くなる訳ないだろ。国の王が悪いんだ! 国中どこ行ったって戦争と略奪が絶えないんだよ! 悪いことは言わねぇからさっさと故郷に帰れ!」


「国の王が悪いと争いが起こる?」


「ああ、細かく言うと国王とその周りの人間だな。いずれにせよ、この国の中枢が腐ってるからどうにもなんねぇよ」


僕一人じゃどうにもならないのか……

でも、何か出来ることがあるはず


「見てみろよ」


何やらそこら中にいた街の人が、道を挟んで両側に分かれた。その空いた道に歩いて来たのはムトール州軍だった。そして、アウリス達の前を通りすぎる時に見た姿は、誰もが傷を負い、疲れ果てた状態で帰還したようだった。


「ムトール州の州候はよく出来た人物という噂だ。そして、州候に仕える内政官や将軍も悪くないらしいが、隣のバラン州の反乱のせいでずっと戦争状態だ。いくらその人、街、州、国が悪くなくても争いなんてもんは周りから起こるんだから無くしようがない」


「バラン州が悪いんだね……何故戦争なんてするんだろう」


「そんなこと知るかよ! こんな光景なんか毎日どこかで起きてるのさ。そろそろオレは行くぞ! お前もせいぜい死なないように気を付けな。じゃあな」


そう言って、ロキは大きな荷物を担いで人混みに消えていった。


バラン州の反乱か。今から行かなくちゃいけないのにな……


アウリスはガロから最初に必ず行くようにと行き方が書いてある紙を貰っていた。しかも、途中で寄り道せずそこに行ってからは気の向くまま旅をしなさい。と言われていた。どうやらその目的地がバラン州の端にあるらしい。夕方になる頃、アウリスは街を出て、バラン州へと向かった。

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