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kingdom fantasia  作者: 衛刀 乱
黎明を告げる咆哮
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激変の戦場

何が起こっている!?


開戦する気配が濃厚だった。

だが奇怪な音が聞こえたと思えば突然砂煙が巻き起こり獣達がどこかへ走り去っていった。

そして、どうやら軍内部の反乱らしく多数の兵士が身を翻してヨリュカシアカ軍と対峙している。

目の前で起こった事象についてすぐには頭の整理がつかなかったハクレイだがすでに平野まで進出しており、どう対応するのか決断に迫られていた。


少数の獣子師達を援護して逃がすつもりだったのだが……

すでに大戦の様相に変わってしまった

ならば!


「姉様!」


状況が急変したことは目に見えて分かったリンだが方針を聞いておかなければならなかった。


「我らはヨリュカシアカ軍の指揮官を優先して叩き、指揮系統を麻痺させる!」


「はい!」


「了解ッス!」


ハクレイ、リン、キトラは馬に乗って疾走していたがライは途中でズールが暴れ続けた為、どうにか落ち着かせたもののかなり遅れて後方を走っている。


ライなら任せておいて大丈夫だろう


ハクレイは今までの戦いぶりを見て思った事だがライにはその時の状況に応じて何が大切か、何を優先させるべきかという判断力の高さが優れているという事であった。


そして、当の本人はズールに振り回されて参っていたが、ようやくまともに進むことが出来るようになり、ハクレイを追っている。


「デケ! 急に暴れるからビックリしたじゃねえか! さあ! もう少しだから頼むぜ!」


片手で手綱を持ちながらズールの頭を撫でてやるとブゴッと返事が返ってきた。


ロマリオは自分の罪深さを深く感じていた。だがそれは事を起こすまでに散々悩んできた。

人殺しとは無縁な民衆を扇動していること。

同じヨリュカシアカ兵士としてかつての仲間を手にかけることになること。

間違いなく多くの死者が出る。


私は間違っているのかもしれない


しかし!


「今、敵は混乱している! 勝機は今だ! 我らがこの国を救うのだ! 全軍突撃!」


ロマリオを先頭にいよいよ蜂起軍が動き出したその時、対峙する両軍の真ん中に急降下した竜がそのまま着地した。


「グガアアアアアアアア!」


凄まじい地響きの後に心臓を掴まれるような感覚に陥る轟音の咆哮、その場にいる全員が凍りついたのだった。


「全員動くな!」


アウリスの叫びは驚くほど平野全域によく通った。


「争いは不要だ! パトミリアさんは救出した!」


引き続き叫んだアウリスの言葉にどよめきが走る。

突然現れた竜、そしてその竜に乗った少年、さらにパトミリア救出。

どれもが信じがたい事で目の当たりにした者は思考が停止している。

だが獣子師達だけは違っていた。とりわけダダは目を輝かせながら竜と、そしてアウリスに心を躍らせている。


「天晴れじゃ! 誰かは知らぬがまさか竜を手懐ける者がいようとは! 長くこの生業を続けているが未だかつて見たこともないわい!」


「竜に乗ってるぞ! 凄いな!」


「どうやって捕まえたんだ!? 有り得ない!」


獣子師達は口々に感嘆の声を漏らしている。

この時点で既に蜂起軍は動けなくなっていた。

騎獣は怯えて座り込んでしまい、何をしても身動き一つしなくなってしまった。

人間にしても竜を越えて戦いを挑むなど論外であり、戦意は喪失していた。

かといってヨリュカシアカ軍に天機が訪れたともいえない。

蜂起軍と同じく竜に近づくのは自殺行為に思える事とパトミリアが救出されたという事、ヨリュカシアカ正規兵にとっては後者の方が重要なのであった。元はパトミリアに忠誠を誓った者が多く、心の内は大いに揺れていた。ゆえに正規軍内部からいつ反乱が起きてもおかしくない状況に陥っていた。


軍としては戦闘は不可能になったがロッジブラハと側近だけは自身の命惜しさに裏切った事を恥じており、命尽きるまで戦う覚悟だった。


「隊長、我々は最後まであなたに従います! どうか指示を出して下さい」


「うむ。竜を迂回して側面から」


「ロッジブラハ殿!」


ロッジブラハが指示を出し終える前に声が届く距離まで近づいたロマリオが呼び掛けてきた。


「お前にはしてやられたな! だが! 我々も意地を通させてもらう!」


「この州のためにどうか共に戦ってはもらえませんか?」


「この州のため? 反乱で州を乱すお前がそれを言うのか!」


「あなたにも民の悲鳴が聞こえていたでしょう! このままではこの州は崩壊してしまいます!パトミリア様も救出された今、あなたが軍に尽くす意義はないはずです!」


ロッジブラハの気持ちはロマリオが一番良く分かっていた。

パトミリアが投獄された時、何も出来なかった。

決死で救出を試みた訳でもない。

新体制の軍に身を置いていつかは州が良くなる事を願っているにも関わらず民を苦しめる事ばかりさせられてきた。

それを自分の罰とさえしていることも。


ロマリオから必死の説得を受けて思う所が無いわけではなかったが今までしてきたことを思えば到底それを許すことなど出来なかった。


「パトミリア前州候の救出が欺瞞ではない証拠がどこにある? そのような戯れ言に踊らされるものか!」


「断じて欺瞞でも戯れ言でもない!」


突然二人の間に割って入ったのはハクレイだった。

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