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kingdom fantasia  作者: 衛刀 乱
黎明を告げる咆哮
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有志の一計

はあ はあ やったか


周囲に歓声とどよめきが上がり統率力を失った敵部隊は次々に倒されていった。

全ての敵を殲滅した所でラズベルの元に皆が集まる。


「隊長! やりましたね!」


「ああ、やったな!」


「途中もうダメかと思いましたよ!手強かった」


集まった人達から少し離れた所でジンは立っていた。なんとなく部外者である自分に居場所がないように思えてしまったのである。


仲間っていいな


ジンは今の自分の仲間はティナとゴゴだけだなと苦笑しながら兜を外してゴゴの角にかけたときにこちらに向けて声をかけられた。


「おーい! 守護神!」


えっ!?

守護神? 僕が?


戸惑うジンに笑顔のラズベル達が寄ってきた


「これは驚いた! 思ってたよりずっと若いな! アウリスと同じぐらいか? いや!すまん! アウリスから君を助けるように頼まれてたんだが逆に助けてもらっちまったな! ありがとう!」


「へっ? あっ、いえ! こちらこそ一人では大変でしたので助かりました! ありがとうございます!」


ジンの返答に全ての者が唖然とした後、わあっと歓声が上がった


「ハハハハ! 一人では大変か! 参った! さすが守護神だ!」


「あの……守護神って……僕の名前はジンといいます」


「そうかそうか! 君はジンというのか。あの戦いっぷりは守護神そのものだ! そうだ!ウチの隊に入らないか?」


何が何やら分からなくなって戸惑い気味のジンだったがどこからか呼ぶ声がした。


「ジーン!」


あっ! アウリスの声だ


周囲を見渡しても見あたらないのだが誰かが空だと叫んだ声でジンは空を見上げた。


「ジン!」


「アウリス! って! ええええええっ!」


その場にいる誰もが自身の目を疑った。いることさえ疑わしかった竜の存在を目の当たりにしたどころかそれに乗ったアウリスを見て、現実だと思う方が難しい。


おいおい、マジかよ


ラズベルも竜の話は聞いた事があったが実際に見たのは初めてである。その竜はゆっくり下降すると当然のように着地してアウリスが飛び降りた。


「ジン! 無事だったんだね! 良かった! ラズベルさん! ありがとうございました!」


「アウリス、あの、それって竜だよね?」


「そうだね! 竜だよね! 話せば長くなるんだけど実は……」


皆の疑問が明かされようとするときに遠くから何者かが凄い速さでアウリスの所まで駆けてきた。


ハクレイと同じ黒装束!?


「アウリス殿とお見受けするが相違ないか? 私はハクレイ様に仕えるコウガと申す」


コウガと名乗る男は茶色の豹に騎乗していた。事情を聞いたアウリスはすぐに行動を開始した。


※ナリュカ郊外西門前※


ギィィィウィイイイイ!


獣子師レムが持つ筒から放たれた物から凄まじい金切り音が辺り一帯に響き渡った時、その場にいる全ての騎獣が暴れだした。ある者は騎獣の背から振り落とされ、ある者は異常な状態に自ら飛び降りる。

乗り手がいなくなった騎獣から四方八方散り散りに全力疾走を始める。

その中で獣子師だけは技法によって大人しくさせていた。これは獣子師が有事の際に使用する緊急措置の一つである。結果、獣子師以外は騎獣を失う、それはデカレオが意図して作り上げた状況である。


「おやっさん!」


ヨリュカシアカ騎獣用兵部隊として所属していた獣子師達はそのまま蜂起集団と合流することになった。


「デカレオ! これはどういうことじゃ! 何故鳴き玉なんぞ使ったんじゃ!」


「師匠、これは正規軍のロマリオ様と協力してパトミリア様を助けるために必要だったんだ」


ダダの元に駆けつけたデカレオが弁明している間にロマリオも輪に加わった。

周囲ではロマリオとデカレオの同志が仲間を説得している。


敵は想定以上に混乱に陥っている。今、この瞬間の一秒一秒は千金に値する貴重な時間ではあったが敵味方全てを欺いていたため、一度結束させる事がどうしても必要だった。


「私は前ヨリュカシアカ軍副隊長だったロマリオだ。デカレオには無理を言って共に一計を案じさせてもらった。秘密裏で動いた事、裏切り者の汚名を着せてしまったことを申し訳なく思っている。こちらの企みが暴かれて失敗することは許されなかったのだ。目的はパトミリア様の救出、そしてバリアンを州候の座から引きずり下ろす事である。そなたにも苦労をかけた。少数になってもよくぞ蜂起を決断してくれたものだ。これで軍の騎獣を全て無力化することが出来た。おそらくこのような好機は二度と来ない。今暫く力を貸して欲しい」


威圧的ではなく誠意が感じられる目の前の男をダダも信じてみようかと思えた。


「そういうことじゃったのか。よし! 我らも力を合わせるぞ! どのみち戦って散るつもりじゃ! デカレオ! よくやった! 共にゆくぞ!」


「師匠……」


デカレオは目頭が熱くなった。だが戦いはこれからである。敵の機動力を奪ったとはいえ、兵数差はまだまだ向こうが上回っている。加えて相手はこちらと違って戦闘訓練を受けている集団である。不利な状況には変わりがなかった。


こっちには戦う意義がある!士気で上回れれば……


デカレオは軍から支給された剣の柄を強く握り締めた。


なんということだ!


突然の出来事に軍は混乱状態にあった。最早統率出来る状態ではない。ロッジブラハは事態の収束に全力を注いでいる。

そして、前進していた部隊がいつの間にか翻って相対していることに気が付いたのだった。


まさか! あの者共め、謀ったな!


このまま突撃されようものなら大変な事になるのは間違いない!


「全軍に通達! 歩兵防御陣形に切り替えろ! 急げ!」


下唇を血が出るまで噛んだロッジブラハは前方に攻撃態勢が完了し、いつ突撃を始めるかわからない騎獣部隊を忌々しく睨んだ。



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