烈火の騎士ラズベル
「悪いがこいつの相手譲ってくれないか?ちょっとした因縁の相手なんだ」
ジンの後ろから斬撃を飛ばし、橋を渡って駆けてきたのは騎獣ピロモコに乗った赤色の鎧を着た男だった。
誰だろう? 敵ではないようだけど……
万が一後ろから攻撃されては堪らないと警戒しながら少し後退りしてワネゴバとこの男の両方に身構えた。
「俺の名はラズベル。アウリスの……まあ友達だ!」
アウリスの友達!?
ジンは思いがけない援軍に驚いた。だがもっと驚いたのはラズベルの方であった。
見渡せば数えきれない程の倒れた敵兵、後方は崖が広がり一本だけ架かった橋を渡るにはこの鎧騎士を倒さなければ進めない。
この状況、まさかこの男一人でやったのか!?
凄まじいな
相手は大勢、それに加え王国屈指の武力を持つワネゴバに一歩も退かずに戦う事は生半可な事ではない。
「第二!てめえノコノコ出て来てんじゃねえ!こいつを殺ってから相手してやる!」
「そういうなよ。俺はずっとお前に会いたかったんだぜ? 待ってろっていうのか?無理無理。もう一秒だって待てやしない……」
朗らかな笑顔が緩やかに崩れ、まるで別人の相がそこにあった。
「みんな死んだ……俺達は騎士だ。戦場で死ぬのは仕方がないことだ
だが、王国を守る騎士として同じ想いを持ってたはずの者に殺されるなんてな
悲しいじゃねえか
それは仕方のないことなのか?
まあいいさ……
だから別に恨むつもりはない……
だが!
お前らは!
俺が殺してやる!!」
烈火の騎士だったな。たぎってやがる。
面白え
「ガハハハハ! 馬鹿め! 弱いから死ぬんだよ!」
「その言葉よく覚えておけ!」
ガキン
ラズベルとワネゴバが斬り結ぶ。
その時、後続から追い付いてきたラズベル隊副長の女性騎士ミリアと隊員が橋を渡り始めた。
あっ あれはまさか!? 第八騎士団!
何故こんな所に!
ミリアの目に映ったのは敵の前線に並んだ黄色の鎧で揃えた一団、そして団長のワネゴバがラズベルと一騎討ちを始めていた。
「ラズベル隊長の一騎討ちを邪魔させるな!
仲間達の無念を今こそ晴らすのだ!」
ラズベル率いる隊員の多くは元王国第二騎士団員で構成されている。
騎士団同士の戦いで敗北を喫し、仲間達を失なってから仇討ちの機を探し続けた。月日は経ったが思いがけずその時は訪れたのである。
この巡り合わせ、ララア神に感謝します
それにしてもラズベル様が我々への指示を出す事を忘れるぐらい集中している
相手はあのワネゴバ、無理はない
でもそれ以上に……
私も!
「総員目の前の敵だけに囚われるな! 第八は囲む事に長けている! 突撃!」




