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kingdom fantasia  作者: 衛刀 乱
黎明を告げる咆哮
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邂逅

パトミリアはアウリスの目をじっと見つめた。その後にゆっくりと口を開く。


「そうですか。しかし、私を助けたとて何も変わりません。そして、助かろうとも思いません。私はたくさんの命を奪ってしまいました。それは許されることではないのです。」


「みんなが望んでいるんです! パトミリアさんが戻る日をずっと待っています!」


アウリスは鍵を開けようと一つずつ鍵穴に鍵を差し込んでいく。その様子を見ながらパトミリアはアウリスの身体中についた傷やあざを見つけた


「まさかその怪我は私の為に負ったのですか。もうよいのです。私はここで罰を受けなければなりません。あなたは今すぐここから出なさい」


構わずアウリスは鍵を次々と差し込み続けるがどれも合わなかった。残るは最後の一つ。


「おいおい、遅いと思って見に来てみれば。

まさか元州候が狙いだったとはな」


くっ! とうとうバレてしまった


急いで最後の鍵を差し込んだ


!?


合わない!


この中にはなかったのか


ドゴッ


アウリスは顔横面を殴られ吹っ飛んだ


「おやめなさい!」


パトミリアは立ち上がり、鉄格子まで歩み寄った。


「こんなにボロボロになるまで痛めつけておいてまだ足りないのですか!」


「フン、元州候様は助かるためにはこんなガキまで使うんだな。恐れいったぜ」


看守はアウリスをさらに蹴り飛ばし、突き当たりの壁に体を押し付けて殴った。


「もういいでしょう! やめなさい!」


「ダメだな、こいつはここに来た時点で死刑確定だ」


看守はそう言ってまた殴り始めた。どうやら死ぬまでこのまま殴り続ける様子である。パトミリアは目の前の暴力を止めさせる為に叫び続けている。


ここまでか……


でも最後まで生きることを諦めちゃダメだ……

ガロと約束したから……


意識が朦朧としながらも抵抗していたアウリスに、看守の後方から気配を殺した黒い影が見えた。


ハクレイ!


すでにハクレイは音を立てずに抜刀しており、間もなく刀の間合いに入る。


!!


アウリスは力を込めた目でハクレイに合図を送る。


なっ、動くなというのか


殴られ続けながらアウリスは目でハクレイを制していた。その真剣な眼差しにハクレイは動きを止めた。


「くそう! もう少しだったのに! なぜ鍵が合わなかったんだ! ここの鍵はどこにあるんだ!」


突然アウリスは悔しそうに叫んだ。そこで看守は手を止めて笑った。


「ハハハハ! 残念だったな。ここの鍵は管理が別だ。最重要人物だからな。鍵の場所は俺ともう一人しか知らねえ」


「そうだったのか! 机や棚は調べたのに! くそう!」


地下に下りたすぐに看守が常駐する部屋があった。アウリスは入った事はないが隙を見て探るつもりだった。


「ダハハハハ! 惜しかったな! 鍵は棚の裏の壁をくり貫いて隠してんだよ! 機密事項だがここまで来たご褒美だ!」


「ハクレイ!」


看守が話終えるのとアウリスの声とハクレイが動き出すのが同時だった。

次の瞬間には看守の首が転がっていた。


「ハクレイ、ありがとう! 来てくれたんだね」


「かなり無茶をしたな。ここまでするとは思わなかった」


「初めて会った時のハクレイも似たようなものだったよ」


「フッ、そうか」


ハクレイ? ……まさか!


パトミリアは聞き覚えのある名に驚いた。


「久しいな、パトミリア殿」


過去に二度、父リハクに連れられたハクレイと会った事があった。最後に会ったのは五年前だが頭巾とマスクを外したその顔は、間違いなくパトミリアの記憶の中の面影と一致した。


「まさかあなたに会えるとは……セキレイの事はこの中で知りました。リハク様は生きておられて?」


「いや、父上は殺された。私と僅かな者だけしか残っていない」


「そうですか.……惜しい人を亡くしました。あなたの父君には色々と助けて頂いてたのですよ。主人が生きていた頃から主人を亡くした時、そして今日に至るまで本当にお世話になりっぱなしで……

あなたが生きていて良かったわ」


「うむ。そなたにはここを出てもらう。アウリス、鍵を取ってくる」


「お待ちなさい! 私はもう」


「罪を感じているのか? では、なおの事生きねばならぬ。私は大切な人達を失った。だがそなたにはまだ守るべき者たちがいるではないか。そして、以前のヨリュカシアカを取り戻さねば、数多の悲劇が生まれ続ける。以前にはこのような場所やボロという者はなかったではないか。獣子師達も決死で蜂起するようだ。それも今なら止められる。まだ間に合うのだ」


意固地とさえ思えるパトミリアの言動にハクレイは優しく諭した。


「…………本当に父君と似ておられるのね。存命ならば同じように仰ったことでしょう。分かりました。お世話になります。長く生きていてもあなたのような若い方に教えられる事もあるものね」


「フッ、私もアウリスに教わったのだ。まだ世界を変えられると」


そう言い残すとハクレイは鍵を手にいれる為に走り去ったのだった。




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