合流
待ち合わせの場所へ早くに着いたロキは、アウリスとハクレイを待っていた。その時偶然にライとリンが合流した。
「よくここが分かったな。そっちはどうだった?」
「とりあえずこっちはオッケーだ!」
「ムトール州、独立したのでムトール国ですね。あちらでパトミリア様を受け入れて頂けます。準備を整えてこちらに迎えの隊を派兵して頂きますので、こちらはパトミリア様を救出しましょう。それから派兵ルートに沿って護衛しながら進み、ムトール軍と合流する話になっております」
ライとリンからの報告を受けたロキは、ムトールの積極的な協力に感心した。そして、キョロキョロと辺りを見回すリンを見て察する。
「ああ、アウリスとハクレイは情報収集に行ってる。そろそろここで合流する予定だ」
そんなやり取りをしていると、遠目にアウリスが見えたのでライが両手を上げて誘導する。それに気付いたのかこちらに向かって走って来た。
「おーい! アウリス!」
「ライ! 着いたんだねー!」
近くまで来たアウリスの姿を見て三人が驚いた。何やら服は土埃で汚れており、顔を腫らしている。どうやら道端で転んだという訳ではなさそうだと容易に分かる。
「おいおい、何があったんだ? 怪我してるじゃねえか」
「あっ、まあちょっとね。でも全然大したことないよ! それでね、街の人にパトミリアさんの事を聞いてもダメだったよ。知っていそうなのに教えてくれないんだ」
心配そうに全身を見て回るライを横目にロキは、まあそうだろうなと思った。ロキも宿の確保と平行して聞き込みをしていたがその話題は禁止されているようで処罰の対象になるようど。場合によっては軍に連行されるらしい。
「どうせまたトラブルに顔を突っ込んだんだろ?」
図星とばかりにアウリスはロキに苦笑した。
「あっ! 姉様!」
ハクレイも歩いて来たが平然と、普段通りだったのでロキは、ハクレイも情報はまだ得られていないと思ったのだが。
「パトミリア殿は第6兵舎の場所にある、新たに地下に拡張増設をして出来た通称中央北収監所という名の場所にいるようだ。第6兵舎はナリュカの北東にある。」
これにはロキが驚いた。街に着いてまだ間もなく、パトミリアの居場所を突き止めるには時間がかかると思っていた。実際にアウリスとロキもまだ有力な情報は得られていない。それなのに情報を入手してきたハクレイの情報収集力に唖然とする。
「よ、よく分かったな。なんだ、その、目立っても上手くいくもんなんだな」
「ロキ様、姉様なら当然です。姉様は拳で語らうのです」
なっ その容姿で力ずくなのかよ……
半ば呆れながらもこれからどうするかを話し合う為に、宿へと移動を始める。
ヨリュカシアカ州 アパタ山奥
「遅い。もう時間がないのじゃぞ。皆何をしておるのだ!」
「おやっさん、もう来ねえよ。おそらくこれで全部だ」
「なっ、ムムム……」
ヨリュカシアカ州には平地が多いが山林も多くを占める。その地形は畜産農家、獣子師に深く恩恵を与えていた。山は深く奥に進めば進む程、人が無闇に踏み込むには危険な獣たちが徘徊している。そんな所に無防備に踏み込めばたちまち凶暴な獣に狙われてしまうだ。だが今は、集結した獣子師達が身を隠すのに適した場所になっている。
その中で一番の年長であるダダは立派な白い頭髭を逆立てながら怒りを露にしていた。団結して州軍に抵抗するというのはダダの発案だ。呼び掛けた当初は百名程集まる目算だったが現在は三十名がそれぞれ騎獣を連れて集まるに留まっている。
「デカレオが向こうに付いてしまったからな、仕方ない」
「あの馬鹿者が! 恩を仇で返しおって」
「おやっさんの一番弟子だからな、こうなるとは思わねえわな」
獣子師の職は自営の個人稼業である。その中で獣子師同士で情報交換したり協力して捕獲するコミュニティを作り上げた第一人者が人望の厚いダダの弟子のデカレオだった。
デカレオに付いていった獣子師は少なくない。これが大きな誤算となって現実的に問題となっている。
「もう少し待ってみよう。あと少しでもこちらの数が増えればいいのじゃが」
集まった獣子師達は、隠れている今の場所が見つかるのは時間の問題だと認識している。それでも少しでも頭数を増やしておきたいというジレンマと戦っていたのだった。