遭遇
「……ということがあったんだよ。危険な目にもあったけど行って良かったよ。……アウリス?」
アウリスは目を見開いて俯いている。
「聞いたこともない国の名前やこの国の根の昔話だからアウリスにはとても信じられないだろうけどね」
ガロはそう言って微笑んだ。
「ガロ……まだガロに言ってなかった事があるんだけど。母さんから受け継いだのはこの石だけじゃないんだ。名前も受け継いでて僕の名前は……
アウリス……オーラ-ロージクラヴィリアなんだ…」
「えっ、オーラ……じゃあアウリスは」
あまりの衝撃にガロは体が震えた。
なんということだろう。偶然出会ったアウリスが滅亡したロージクラヴィリアの末裔で、しかもオーラの名を受け継いでいるのなら間違いなくグラの血筋ということか
その時、ローネとミラがやってきた。
「そろそろ帰るわよー! たくさん採れたでしょ?」
!?
ローネはガロとアウリスが持った見るからに薄い袋を見て目を吊り上げた。
「ちょっ! ちょっと袋の中を見せなさい!」
アウリスとガロは気まずそうに袋をローネに手渡す。
「なっ! 何これ! アウリスがマレの木の実五個でガロがマレの木の実一個!?」
盛大な溜め息を漏らすローネの横でミラが控えめにクスクス笑っていた。
「はあ……よーく分かったわ! あんた達が実に役に立たないということがね! まあ感謝しなさい! 私達が大収穫だったから帰ってあんた達にも旬のメニューを食べさせてあげるから!」
その時、何かを察知したガロの表情が険しくなる。
「みんな、音を立てずにそこの茂みに隠れて!」
アウリス達は何が何だか分からないといった顔でガロに連れられ静かに隠れた。遠くから馬の蹄が地を蹴る音が近づいてくる。
「こっちには何もないな」
見るからに柄の悪そうな男二人が馬の足を止めて話し出した。
それを見たアウリス達三人の顔が青ざめる。
賊だ !
アウリスは緊張して、賊の二人を見ていた。隣のミラが今にも泣きそうな表情をしている。その肩を抱いているローネも青ざめた不安な表情をしていた。
「この辺じゃさっきの村だけだな。帰って報告するか」
「ケッ、あんな小さな村じゃあ三十人の食料なんかすぐ尽きちまうぜ」
男の一人が来た道を戻っていくと、もう一人も後を追っていった。
「大変だ!あいつらレトに行く気だ!」
アウリスがガロに言った。
「賊の数は三十、村に行けば間違いなく大変なことになる。すぐに知らせに戻ろう!」
四人は走ってレトに向かった。村の近くまで戻った頃にガロは足を止めた。
「僕はやることがあるから先に戻って皆に知らせてくれるかい。
アウリス、二人を頼んだ!でも絶対に無茶はしちゃいけないよ。では後で」
「分かった!ガロも無理しないで!」
アウリスはガロからミラとローネの麻袋を受け取り、三人でまた走り出した。
「大変だ! もうすぐ賊がここに来るぞ!」
村に着くなりアウリスは見かけた人すべてに叫んだ。声を聞き付けたダンガスが駆け寄ってきた。
「どうして来ると分かるんだ」
「湖で賊の二人の会話を聞いたんだ!」
「そうか、でも大丈夫かもしれん。さっきトーマ達が賊のアジトを見つけたから討伐するって張り切って全員引き連れて行ったでな!」
自警団全員といっても十人だ
とても勝てるとは思えない
「ダメだ!賊は三十人いるんだ!」
ダンガスの顔が真剣さを増した
「それはいかん。すぐにトーマ達を助けに行かなければ。皆を集めよう。アウリス、手伝ってくれ。ミラはマキナ亭で待っとれ。ローネは帰って母ちゃんを安心させてやるんだ」
レトは騒然とした。村の男達は武器を集めたり、女達は子供を家に入れて閉じ籠った。