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kingdom fantasia  作者: 衛刀 乱
譲れない思い
24/104

またどこかで

ムトール候邸宅の中に入ればそこは大きな広間になっており、沢山の者達が集まっていた。入ってきたアウリスとガロにジレイスが気付いて寄ってきた。


「アウリス! 無事だったか! あれから君とライの姿が見えなくなったから心配していたのだ」


「心配かけてごめんなさい。ライは治療中ですが命に別状はありません」


「いいのだ。私は今回もアウリスに助けられてしまったな。本当に今回は生きて帰れるとは思っていなかったのだ。感謝するよ」


ジレイスは右手をアウリスに差し出したのでアウリスも手を出して握手を交わす。その時、ジレイスの後ろから声が掛かる。


「ジレイス、その少年は?」


奥から一際衣服の整った男性が近づいてきた。年齢は三十代半ばで知的な印象を受ける。


「ラムザ様、この少年は二度も私の命を救ってくれた勇気ある戦士です」


「そうか、それは私からも礼を言わねばならないな。君のお陰でここムトールは救われた。ありがとう。私はムトール州の州候をしているラムザだ」


「アウリスです。僕も戦場ではジレイスさんに助けてもらいました」


素直なアウリスに好感を持ちラムザは微笑んだ後、ガロに顔を向けた。


「貴方は?」


「ガロといいます。流れ者ですよ」


「貴方がガロ殿でしたか。今しがたラズベル殿とローレンス殿から恩人であり、今回の件でお二人を動かした方と聞いております。話はよい方向に進んでいます」


そう言ってラムザは頭を下げているがガロは苦笑する。


ラズベルとローレンス、僕を担ぎ上げて何を企んでいるのやら……


話が盛られているとは思ったが後程二人に問い質すとして、今は合わせておく。


「いえ、民が幸せに暮らすためには貴方のような人物が必要だと思ったまでです」


その時、ガロを見つけたラズベルとローレンスが来た。


「ガロさん! もうどこかに旅立ったかと思ったぜ!」


ラズベルが笑顔で言ってからアウリスを見た。


「アウリスだよ。ラズベル、後で聞きたい事があるのだが」


ガロがラムザを見てラズベルに目配せをするとラズベルの顔が引きつる。


「アハ、アハハハ。そうか! 君がアウリスか! ガロさんから話は聞いてるよ! 猪を狩りに行ったら逆に追いかけられたり、川で顔を洗おうとしたら躓いて全身を洗う羽目になったとか、あとはえーっと」


「ストーップです! ガロ!」


顔を真っ赤にしたアウリスはガロを睨んだがガロは楽しそうに笑っていた。


酷い……誰にも言わないでって言ったのに……


「ハハハ。でもガロさんはいつも君のことを話すときは嬉しそうに話すんだよ」


ラズベルとは雰囲気が違う丁寧な感じでローレンスが横から言った。


「ところで、君達はこれからどうするんだい?」


ガロはラズベルとローレンスに聞いた。


「そうだなあ、ひとまずはここの危機も去ったし、セガロの野郎とその前に騎士団連中を殴り付けないとな。まあそれでも今の戦力じゃ話にならないからローレンスと話をして何処かで協力者を探そうと思っているんだ」


「そのことなんだが」


ラズベルの言葉の後にラムザが話始める。


「ラズベル殿とローレンス殿をこの地に迎えさせて欲しいと思っているのだが如何であろうか? 失礼だがお二人とも元は知る人は知る騎士団の団長でありましょう。王国の軍が攻めてくるのはまだ準備に時間がかかるという見解は同じであり、その間にこちらも対抗出来る力を付けねばなりません。今回の話でソルテモート州とは同盟を組んで王国から独立して民を守ることとなりましたが、お二人がいれば皆安心すると思います。この地に縛り付けるつもりはないので自由に動いて頂いて結構、客将として待遇させて頂く、勿論資金面でも協力させて頂きましょう」


「願ってもない話です。是非ともよろしくお願いします」


この話にローレンスが間髪入れずに答える。両者の利が完全に一致しているのであった。


「やったぜ! これで金の心配は無くなるな!」


「おい! ラズベル……」


はしゃぐラズベルにローレンスが手を額に当てて困り顔になっている様子を見た一同は声をあげて笑った。そしてラムザはアウリスに顔を向ける。


「アウリス君はどうするのだ? 良ければ恩人である君にはダムタールに家を用意させて貰うが?」


「僕はまた仲間と旅に出ようと思います! 色々な人と知り合ったり、色々な場所で様々な状況を自分の目で見て、感じる事が今の僕には必要なんだと思います」


それを聞いたガロが微笑む。変わらないアウリスの素直さを嬉しく思うのだった。


「そうか、少し残念だが次に会うときが楽しみになったよ。近くに寄ることがあったら気軽に訪ねてくれ。いつでも歓迎するよ」


「ありがとうございます! では、友達が待っているのでこれで失礼します」


その場にいたラムザ、ジレイス、ラズベル、ローレンスに別れを告げてアウリスとガロはムトール候邸宅を後にする。


「次はどこに行こうかな」


アウリスが誰に言うでもなく呟く。


「アウリス、ソルテモートの南東のヨリュカシアカ州に入った所にあるロズンという村の立て札にね、誰も知らない文字が書かれているらしいんだ。周辺の人は模様だと思っているらしいのだけど失われた文字かもしれないね。本当に模様かもしれないけどまだ目的地が決まってなければ行ってみる価値はあると思うよ」


「ヨリュカシアカのロズン? 分かった! 行ってみるよ!」


「うん。じゃあ僕はここでお別れだ。またすぐに会える気がするよ」


「僕もだよ! またどこかで!」


アウリスはガロを引き留めたり、旅を誘っても仕方がないことが分かっていたので笑顔で別れた。


ライはまだ目覚めないかな


また三人での旅が始まると思うと胸が躍るようだった。

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