傷ついた商人
「この野郎、放しやがれ!」
アウリス達が街の出口に向かって走っていた時、どこか近くの叫び声が聞こえた。
さっきの店の事といいこの街はこんな事が当たり前に起こっているのか。何故こんなに殺伐としているのか。そして、アウリスはそんな状況を変えることも出来ない自分の無力さに情けなくなる。店での件も何とかしようとして迷惑をかけて騒ぎが大きくなるなり、今は逃げるように去ろうとしている。その間にもまた、悲しい事が起きては何も出来ない自分がいる。だがそこでふと気が付く。
ん!? さっきの声、どこかで聞いたような……
「ライ! さっきの叫び声、僕の知り合いかもしれない!」
突然アウリスが声がした方に向きを変えて走り出すと、ライも追従して横に並ぶ。
「また人助けか? いいぜ!」
別段何事かと考える様子もなくライは楽しそうにしている。実際今までの村の生活よりもはるかに新鮮で刺激的な日々に、まだ短いながらもアウリスと過ごす時間がライには楽しくて仕方がなかった。
どこだ? どこから声がしたんだ?
二人は声がした気がする路地の中を進み、建物に囲まれた目の前のT字路で立ち止まると左右を確認する。
右は!
誰もいない
左は!
あれは!?
ロキ!
距離があってまだ遠目にしか見えないが、灰色の上着を着た背丈が低いあの少年は、ムトールで助けてくれたロキに間違いなかった。何よりも特徴的な大きなリュックがロキであることを確信に変えたのだった。
軽装備の防具を着けた二人組の男に口を手で塞がれている。そして今、羽交い締めされて引きずられていた。目的地と思われる建物の前に着くと、扉を開かれてロキが中に連れ込まれる。
「ロキー!」
アウリス達は、ロキが連れ込まれた建物まで走った。その建物に掲げられた看板には、バラン州軍第二兵舎と書いてある。
くっ! 軍に捕まったのか
とにかくさっきの様子は普通じゃない
所々錆びた鉄の扉をアウリスは迷うことなく開けると、中から複数の視線が向けられる。その中で一番近くにいた柄の悪そうな男がアウリスに向かって面倒そうに言い捨てる。
「なんだ、入隊希望者か? ここは裏口だぜ。表に廻れ」
中には大きなテーブル二つとテーブルを囲むように椅子があった。
中にいたのはロキを連れ去った男達と同じ革製の防具を着けた軽装備の兵六人だった。それぞれに賭け事や武器の手入れなどをしている様子が見て分かった。
「今ここに入った少年に用がある。どこに連れていった」
アウリスは部屋を見渡してロキがいないことを確認すると、声をかけてきた男に言った。
「なんだ知り合いか? あのガキは不審者だそうだ。今から取り調べだ。終わるまで外で待っておけ」
取り調べ? あの状況でまともな取り調べが行われるとは思えない。ロキが不審者であるはずがない
「ダメだ! 今すぐ会わせてくれ」
アウリスはまず何があったか聞きたかった。何か犯罪を犯したのか……
「ああ? ガキが偉そうにほざくな。まずはここの入館料を払えよ。 二人で1000ジルだ。払えないならお前らも犯罪者だ」
ふざけてる! ロキが何の罪もなくここに連れ込まれたのだとアウリスは確信した。
「アウリス、こいつらに何を言っても無駄だ。力づくでいいんじゃねえか?」
わざと相手に聞こえるように言ったライは、煽るように大きく肩をすくませる。
「面白えガキどもだな。そんなに痛い目に合いたいのか? なら泣きながら命乞いさせてやる」
バラン州軍第二兵舎は二階建てで長方形の形をした長細い建物だった。一階は詰所や食堂に休憩所といった共用の部屋が多く、二階は兵士の寮室となっている。取り調べ室はアウリス達が今いる入り口から、一番離れた奥にあった。
「離せよ!」
腕を極められ拘束されたロキが暴れながら叫んだ。
「うるせえ」
部屋の中ほどから男に思いきり投げ飛ばされ、ロキは奥の壁に激突する。
「うぅぅっ、ってぇな! なにしやが……」
投げ飛ばした男はロキの言葉を遮るようにふらつくロキの顔を三発殴った後にロープでロキの体を縛った。
「大人しくしてりゃ、あまり痛い思いをしないで済むかもしれんぞ」
ロキを部屋に連れ込んだ二人の男は獲物から略奪する楽しさでニヤついていた。
「ふざけんな! 俺が一体何をした!」
「うるせえんだよ!」
男の一人が縛られて動けないロキの腹を思いきり蹴り飛ばす。
「うあっ! ゴホッ ゴホッ っっぅ」
「ああ、確かにお前は何もしてないな。まあ運悪く俺の目の前にいただけだ」
男はそういってロキのリュックの中身を漁りだす。中から出てくるのは少しの水や食料と日用品、あとは色々な薬や調合材料だった。
「お前、薬みたいな高級なモンをこれだけ持っているのはおかしいだろ。一体どこで盗んだ」
「盗んでなんかいない! 全部俺が集めた物だ」
実際、ロキは街を渡り歩き仕入れた薬や材料を売ったり、または調合をして薬を作って商売をしていた。
「はあ? ガキが嘘をつくんじゃねえ」
もう一人の男がまた、ロキの顔を殴った。殴られたロキは男を睨みつける。
「なんだその目は」
男は続けてロキの顔を二発蹴った。ロキの鼻と口から一筋の血が流れ、目のまわりは腫れ上がっていた。荷物を漁っている男が次に取り出したのはお金が入った袋だった。
「おい、こいつ結構もってやがる。 俺達は運がいいぜ」
そう言って男は自分の懐にしまいこんだ。
「ふざけんな! 返せよ!」
ロキは動けないまま必死に暴れた。縛られた箇所もロープが食い込み、血が滲んでいる。
「ふん、大人しくしてろ」
ロキの近くにいる男は、暴力に酔いしれた目をしながらロキの体を見境なく蹴り続ける。ロキの視界は次第にボヤけ出して意識が遠のいていく。
「許さねぇ……お前ら 地獄に 落としてやる……」
「ハッハッ! お前、自分の状況を見て言えよ」
男はそう言いながらリュックをひっくり返したが、それから出てきたのは空きビンや簡単な生活用品だけだった。
「まあ、こんなもんか」
男は満足そうに言った。ロキは奪われた物を取り返そうと男の方に顔を向けるがもう視界がボヤけて何も捉えられない。暴れる体力もすでにない。
「お前らは いつだって 奪うだけだ…… 奪って 殺して…… のうのうと生きて やがる……」
ロキは全身の痛みに顔を歪ませながら自分の体力が尽きる事を感じていた。
姉貴ごめん……せっかく生かしてくれたのに……こんな所で、こんなやつらに殺されるとは……全てを奪われるなんて……
ロキには一人の姉がいた。国の内乱で両親を亡くし、頼る人もなく焼け果てた街でどうにか命をつなぎ止めていた。アウリスはガロに出会えて良かったのだがロキ達は、そんな幸運には恵まれなかった。
七年前
ゴア州の街ネロカーナはひと月前にバラン州の反乱で焼け果てた。今は復興が始まり、少しずつ建物も修復が進み、活気を取り戻しつつあった。
「ロキ、寒くない?」
「大丈夫だよ、姉ちゃん。今日は仕事見つかるかな?」
「そうだね、頑張って探そうね」
ロキは姉のミリーとネロカーナ郊外の村から働き口を探しにネロカーナに来た。住んでいた村は完全に壊滅し、少数の生存者は散り散りになった。身寄りのないロキとミリーは住む家もなく、野宿を繰り返す日々を過ごしている。
ネロカーナは街といえどそれほど大きな街ではなかった。仕事を探しているのはロキ達だけではなく、しかもロキ達はまだ幼かったため、どこに行っても相手にしてもらえなかった。
「ここで働かせて貰えませんか?」
「うちは間に合ってるよ」
断られれば次の店に行く。
「ここで働かせて下さい!」
「あんた達、前にも来たね。言っただろ? あんた達みたいなガキに払う金はないんだよ! 商売の邪魔だ。とっとと失せな」
一日中こんな感じである。
「姉ちゃん、お腹がすいた」
ロキ達は、二日前に二人の前を通りかかった婦人が落として気付かなかったリンゴを拾い、半分ずつ食べたきりまともなものを口にしていない。もともとロキ達は、それなりに裕福な家庭に育ったため、空腹に悩む事は初めてであり、食べ物を調達する術も知らず、犯罪を犯す事も出来ずにいた。ようやく最近では雑草や木の根をかじったり、水溜まりの水で渇きをしのぐようになっていた。
「食べ物分けてもらおうね」
手を繋いだ二人は僅かな希望にすがり、焼け跡から新しく建ち並び始めた民家を訪ねる。
「少しでいいので食べ物を分けて貰えませんか?」
「自分達が食べていくだけで精一杯なんだ。よそを当たってくれ」
申し訳なさそうに断ってくれたが何も貰えなかったことには変わりない。泣きべそをかいているロキを見て、ミリーは隣の家に行こうねと頭を撫でてから、また手を繋いで歩き出した。
「食べ物を分けて貰えませんか? お願いします!」
「甘えんじゃないよ。あなたたち臭いわね。早くここから離れなさい。どこかで野垂れ死にな」
必死にお願いしてもまるで汚い物を見るかのような視線を向けて、冷たい言葉を言い放ってくる。確かに二人の服装は汚い。それでも着替えがないのだからどうしようもない。開いた扉と目の前の女の隙間からテーブルの上に盛られた果物がロキの目に映った。
「果物があんなに一杯あるじゃないか! 少しくらい分けてくれよ!」
その言葉に女の形相が変わる。
「覗いてんじゃないよ! 卑しい奴め」
そう言った女は手近にあった菷でロキを何度も殴りつける。
「すいません!すいません!」
ミリーはロキを庇って代わりに殴られながら謝り続けた。やっとの事で気が済んだのか女は家の中に入ると乱暴に扉を閉めたのだった。
「姉ちゃん、ごめんよ」
「いいの。他の家にお願いしに行こうね」
涙ぐんで謝るロキに、ミリーは微笑みながらまたロキの手を取った。次は断られてもロキの為にミリーは諦めないつもりである。
「この子の分だけでいいので食べ物を分けて貰えませんか?」
「お金持ってるか」
「持ってません」
「フン」
出てきたのは小太りで背の低い醜悪な顔をした男だった。ミリーの全身を舐め回すような卑しい視線に二人は吐き気が込み上げてくる。
「姉ちゃんが相手してくれるなら少し分けてやってもいいぞ」
その言葉にミリーの目が見開いた。ロキは相手するの意味が分からなかったが、ミリーの顔は泣きそうになっていた。二人は何も言わずその家を離れて、広場の脇にある木にもたれた。
「姉ちゃん、お腹すいたよお……」
ロキはあまりのひもじさに涙を流していた。ミリーは何も言わず何か考えているようだった。
「ロキ、少しだけここで待っててね」
ミリーはロキを残して広場を離れた。
一刻後、ミリーは小さなパン二つとソーセージ一本を両手に抱えて戻ってきた。
「ロキ、食べて」
「わあ! ありがとう!」
ロキは歓喜して顔を綻ばせる。
「姉ちゃんも食べようよ!」
「私は食べてから来たから、ロキが全部食べていいんだよ」
嘘である。ただロキの為に、ロキの為ならと空腹に耐えてごまかした。
「やったー!」
次の日もその次の日も仕事は見つからなかった。
ロキがどうしようもなくお腹を空かせるとミリーが食べ物を持ってきてくれることが数回あった。この頃になるとロキはお願いすれば食べ物が食べられると思うようになっていた。
「姉ちゃん、また食べ物貰ってきてよ」
ミリーは無言で微笑んで歩いていく。その姿を見送ったロキは、ついてきてはいけない。ここで待つように言われていたが、二人で行った方がたくさんもらえるかもしれないと思いつき、ミリーの後を追いかけた。
「お前みたいな痩せ細った体はもう飽きたんだよ! もう二度と来るな!」
遠目に見えるミリーは家の人に怒鳴られていた。その声にロキは怯えて、声をかけられずにいた。ミリーは肩を落としてその場から離れると、それから何軒か廻ってある家でミリーは中に入っていった。ロキが家の扉に着いたもののどうしていいか分からず、隣の家から箒を持った女性が出てくると、それを見たロキは叩かれるかもしれないと怯えて、急いでその場から逃げて、結局離れた場所で身を潜めていた。
暫く時間が経って、ミリーが少しの食べ物を片手に持ち、片手でズレたシャツを直して歩いて行った。
あれ? 広場はこっちなのにどこに行くんだろう?
ロキはミリーの後をついていった。
「うわぁぁぁぁ うぅぅっ うわぁぁぁ」
ミリーは民家から離れると、崩れた塀の薄暗い場所で大声で泣いていた。
姉 ちゃん……
この時初めてロキは幼いながらも全てに気付き、自分の愚かさに気付いた。
「姉ちゃん! ごめん! ごめん!」
ミリーの側に駆け寄り、ロキは泣きながら謝った。
「ロ キ……」
ミリーは涙を流しながら驚いた表情をしていたが、すぐにロキを抱き寄せた。
「ロキ」
「姉ちゃん」
その夜、二人は泣き続けて抱き合ったまま眠ったのだった。
ある朝、
「ロキ、起きて。仕事探しにいこ」
「おはよう、姉ちゃん」
まだ朝早くに二人は歩きだした。もう二人の体力も気力も限界で、体は骨と皮だけと言っても過言ではない状態だった。
仕事を探すというのも、最早存在意義の欠片でしかなかった。
!?
「姉ちゃん?」
ミリーの歩き方がおかしいことにロキは気がついた。
どうしたんだろう……フラフラしてる
バタン
突然ミリーが倒れた。
「姉ちゃん!」
ロキはミリーの首に手を回して上体を少し起こした。
「大丈夫、今日はお休みしようか」
ミリーはフラフラと立ち上がり、ロキに支えられ広場の木の下に戻った。
ヒュウ ヒュウ
ミリーの顔が真っ青で、呼吸も明らかにおかしい。
「姉ちゃん!」
「少し 休んだら きっと 良くなる から」
ミリーはロキに心配をかけまいとしたが途切れ途切れの細い声にロキは気が動転していた。
姉ちゃん! どうしよう……
そのまま眠ったのか気を失ったのか分からなかったが夜になった
あれ、姉ちゃん?
いつのまにかミリーの身体中に赤黒い斑点が数え切れないほど出来ていた。
なにこれ!?
ミリーは目を半開きにしながらガタガタと体を震わせている。
ああ! 姉ちゃんが死んじゃう!
薬だ! 薬を飲ませなきゃ!
「姉ちゃん!少し待ってて ! 」
ロキは住宅地へ走り出した。
ドンドンッ
「なんだ!こんな時間に!」
「薬をください! 姉ちゃんが! 姉ちゃんが死んじゃう!」
「はあ? 薬だぁ? そんな高価なものあるわけないだろ! 失せろ」
ああっ 早くしないと姉ちゃんが……
ロキは全速力で隣の家に行った。
「薬をください! 姉ちゃんが死にそうなんです!」
「何の病気なんだ?」
「えっ 身体中に黒い点が出て 何でもいいです! 薬をください!」
「何の病気か分からないんじゃなあ。どちらにしろここにはないよ。医者に見せな」
医者? そうか!
ロキはミリーの所へ戻り、小さな体でミリーを背負った。恐ろしく軽いミリーの体に驚愕する。
「姉ちゃん! もう少しだから!」
ヒュウ ヒュウ
容態はますます悪化していた。耳元でミリーの漏れる息がロキの心を絶望で埋めつくし、涙が溢れて止まらなかった。
ドンドンッ ドンドンドンドンッ
「すいません! 開けて下さい!」
ドンドンドンッ
「うるせぇ! 何なんだ。ん、なんだガキ」
「姉ちゃんが! 姉ちゃんが死にそうなんです! 助けて下さい!」
「はあ? 今日はもう閉まったんだ。明日来い」
「お願いします! 今じゃなきゃ死んじゃう!」
「うるせぇな! おい!? これは貰い病じゃねぇか」
医者の男がミリーの顔を見て後ずさった。
「そこまで進行してんならもう助からねぇな。そうなるまでには全身にかなりの痛みがあったはずだ」
そんな……全然気付かなかった……
何がどうであれ諦められないロキは必死に懇願する。
「せめて薬を! どうかお願いします!」
「分かんねえ奴だな! 大体金持ってんのか? この病気の薬は10000ジルだ」
「働いて払います! お願いします!」
「馬鹿か! お前みたいなガキが稼げる額じゃねぇんだよ!」
その時、子供を抱いた婦人が走ってきた。
「先生! うちの子が熱を出したんです。診て下さい」
「奥さん、今日はもう閉まったんです。今からだと診察料を二倍程貰わないと……
「払います! 三倍でも払いますから」
「そうですか! さあ早く! 早く中に入って下さい!」
それまで面倒そうに応対していた男の態度が急変した。
「お願いします! 姉ちゃんを!」
「うるせぇ! 今忙しいんだ! とっとと失せろ!」
バタン
扉が閉められた。
そんな……
「ロ キ …… 広場に 広場に連れていっ て……」
ロキに背負われたミリーが苦しそうな声で囁いた。
「姉ちゃん……」
「お 願い ……」
雪がちらつき始めた広場までの道をロキは涙を流しながらミリーを背負って歩いた。ゆらゆらと降ってくる雪はまるで、ミリーの残りの命がこぼれるように一つ一つ落ちては消えていく。ロキは悲しくて悔しくて歯を食いしばりながらも何故か楽しかった日々を思い出してしまう。元気な姿のミリーを思い浮かべては地面に涙を落とした。
いつも夜を過ごした広場の大きな木の下までたどり着くと、ミリーを木の幹にもたれさせようとするが、力なくロキに倒れかかる。
「ロ キ … ごめ ん ね … ひと り に して し まう け ど 生き て …」
「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 姉ちゃん、死なないで! 姉ちゃんがいないと嫌だ! お願いだから……姉ちゃん……」
ロキの必死の言葉にもミリーからの反応はなく、やがてミリーの体から力が抜けていく。腕に抱かれてミリーはそのまま息を引き取った。
うあああああああああああああああ!
何なんだこの世界は
お金がそんなに偉いのか
何故姉ちゃんが死ななければならなかった
何故だ
何故なんだ
憎い
全てが憎い
助ける事が出来なかった自分が一番憎い
ううぅううぅうぅぅぅっ ……
そこで、ロキは意識を取り戻した。
何故あんな昔の事を思い出したんだ……
「ああ、そろそろ飽きたな。お前が女なら遊んでやったんだが、生憎俺は少年に欲情する趣味は持ってねぇ。そういえば、ドドの奴がいたな。おい、ドドを呼んでやれ」
男はもう一人の男に言った
「ドドの奴はお前みたいなのが大好きだからなあ、まあ可愛がってもらえよ。もしかしたら気持ちよくなるかもしれんぞ。まあアイツはいつも遊ぶだけ遊んだら体をバラバラに引きちぎってしまうがな。ハッハッハ」
ううぅっ
ロキはもう声が出なかった。歯と歯が当たってガチガチと音が鳴るくらいに震えていた。