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kingdom fantasia  作者: 衛刀 乱
仰ぎ見る偽りの空
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青の巡回

フェンローナ城にて、ズワルテと四名の評議員はファラエルと会った後、忙しく次の予定へと足早に歩いている。


「ズワルテ殿、ファラエル様が理解を示してくださり良かったですな。それも、第七騎士団がタイミング良く来た事も大いに影響しているかと」


「そうだな、ガラドール殿が良からぬ事をほのめかすような事を主張しているが、王国に恭順を示すほかに生き残る術はないであろう。ファラエル様は政に関心を示されないが、王国に従う事も先程確認出来た。騎士団に便宜を図り、事を円滑に進めようぞ」


「それでは我々はこれで」


利害が一致する五人は、それぞれに水面下で動き回っている。評議員の中で同意する者も増やし、現在七名が方針に賛同しており、明日の議会では確実にガラドール派に勝てる見込みだ。廊下で別れたズワルテは計画通り進む現状に満足している。


次は騎士団だな


本当は騎士団が来ることは好ましくないのだが、事前に情報を得たズワルテは、避けられないのであればと、今回の巡回のタイミングを調整させたのだった。そして今、手配した騎士団の滞在先に向かう。


「ヴァインズ卿、物資の補給は足りましたかな」


「うむ、問題ない。しかし、情報が足りんな。反逆者の目撃情報はどうなっている」


対外的な事は必ずズワルテが関わっている。騎士団の物資や情報提供も手の者を使って色々と手配していた。


「目撃情報はこの地図に記しております。しかし、特徴だけでは特定が難しい所です。この人物は一体何をした者なのでありましょうか。目的なども分かればもう少し絞り込めますが」


ズワルテから地図を受け取ったヴァインズは執務用の椅子から立ち上がり部屋の扉へと歩きだす。


「反逆を企てている者だ。それ以上は詮索するな」


そのままヴァインズは部屋を出ると、副長のテアトリスを呼び出して街を巡回する。


「この地図の調査に三名向かわせろ。あとは一度集める」


「分かりました。しかし何も掴めないですね。民も特に反意を持っていないし、口実がないか」


追従する隊員達に指示をしながらテアトリスはヴァインズからの指示を待つように視線を向ける。


「フン、口実がなければ作ればよいのだ。どのみちここの軍備力は削いでおく。反逆者を仕立てて軍備を縮小させて、反抗してくるなら容赦はしない。半数で城内の制圧と州候の身柄を抑えさせろ。残りで城下一帯の掃除を行う。決行は明日、準備をしておけ」


「了解」





翌日


「では行動を開始する」


ヴァインズの号令により、騎士団が動き出す。フェリスもこの中にいたが、全身が粟立つようだった。

これまででの巡回で多数の人が粛清として殺されていた。今日ここでそんな事が起きないようにと願うばかりだった。だが、巡回を始めてすぐにそれは起きてしまう。


「おい、お前を連行する」


「そ そんな! 俺は何もしていない!」


「反逆者に協力していると通報があった」


「そんな訳ない! ここで商売をしているだけだ! 」


「では大人しく取り調べを受ければよかろう」


果物を屋台で売っていた男が、騎士団に強引に連行されていく。

街の中の人々は騎士団が滞在する期間は大人しく、不要な外出も控えていた。騎士団の噂は広まっていたので、ここ数日は街の活気も息をひそめていた。

それでも生活する上では、仕事や買い出しで外出するし、商売を休むわけにはいかなかった。


なっ なんだこれは……


フェリスの周りで仲間達が民に詰め寄って連行していく。そんなはずはない、ノーブリアの民が反意を持つなど考えられなかった。


「フェリス様! 助けて下さい! 私は何もしてません!」


目の前で連行されようとしている男から助けを求める声に、フェリスの頭の中は真っ白になる。


そんな……何故……一体どうすれば……


また別の所から上がる悲鳴に混乱しながらも我にかえる


「捕縛を解いて下さい! これは何かの間違いです!」


フェリスの必死な説得にも全く耳を傾けることがない団員になおも食い下がる。


「何故こんなことをするのですか! 証拠もないのにこれは横暴です!」


「団長命令だ。それに通報の文書ならここにある」


そう言って目の前に出された文書を見て、フェリスは目を見開いた。


「こんなもの証拠にはならない! もう止めてください!」


「邪魔をするならお前も同罪になるぞ。理解出来るなら手伝え」


そんな……


その言葉にフェリスの膝が崩れる。目の前では自分に助けを求める声が止まない。遠くからも悲鳴が聞こえるあたり、ここだけで起きているのではないのだろう。そして、聞こえた声の中で知った声があった。


まさか!


フェリスは立ち上がり、声の元へと走り出す。するとそこにはアンナとカーラを庇って、剣を構えるカイゼの姿があった。対するはよく知った先輩騎士の二人だ。


「カイゼ!」


フェリスの声にカイゼが反応する。だが、その表情は険しいものだった。


「フェリス! これがお前達のやり方なのか! アンナや母さんが犯罪者なわけないだろ!」


「違う! これは! ジータスさん! 止めてください」


「団長命令だ。反抗するものは斬れと命令されただろうが。命令に従えないのか」


すでに剣を構えているカイゼは粛清対象になっている。ジータスの隣の騎士がカイゼに斬りかかり、カイゼが剣で受け止める。後ろのアンナは泣き声をあげて、カーラも涙を流している。


ふざけるな……こんなこと……

させてたまるか!


騎士団員と街の警備隊に過ぎないカイゼの実力差は歴然だ。次の一撃で斬られてしまう。


瞬時に矢を番えたフェリスはそのまま団員の腕を射った。それによりカイゼはかろうじて剣を弾き返す。


「貴様! 」


「カイゼ! アンナとカーラさんを連れて逃げろ!」


!!


その瞬間にカイゼがアンナの手を握り、カーラと共に走り出す。


「お前はもう反逆者だ。これでノーブリアも終わりだな」


カーラさんの身体では逃げ切れない。ここでこの二人を確実に仕留めなければ。だが……


フェリスが相手をするのはただの雑魚ではない。そして、フェリスの武器は弓であり、相手は習熟した剣士だ。フェリスにとって勝ち目のない戦いが始まる。

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