自慢話
かなりくだけた口語にしています。友人気分で読んでください。
じつはさ、俺に初カノが出来たんだよ。20になって初めてかよって感じだけど、中高一貫の男子校だったから仕方ねえって。
彼女の名前はミユキ。苗字は教えてくれてない。めちゃめちゃ美人でさぁ、青いくらい色白で、髪は腰くらいまであるロングのストレート。首のところにアザがあるんだけど自分である証、みたいな感じで服も首を隠すようなやつは着ていない。
出会いはさ、友達数人とワゴンで行ったキャンプ。友達はみんな彼女連れてさ、俺だけなんか浮いちゃって居場所がないっつーか。んで、運転していた友達が「ここって女の幽霊が出るらしいぜ」なんつって助手席の彼女がキャーっつってそいつに抱きついてさ、もう見てらんねー…みたいな気分だったのよ。んで、ちょっとトイレ行ってくるわっつってその場から逃げるように出てきてさ、うろうろしてたら突っ立ってるミユキに会ったんだよ。そりゃ、最初はドキッとした。さっき幽霊が出るって聞いたところだったし。でもあまりにも美人だったからそんな想いは吹き飛んでさ、思わず声掛けたよ。さすがにこんな所でナンパって言うのもおかしいから「どうしたの?」って。返事はしないんだ。見た感じ結構な薄着だった(白いキャミソールみたいなワンピースだけ。俺は長そでが丁度良い位だった)から「寒いだろ。友達がいるからこっちにおいでよ」って誘ったんだけどやっぱり反応なし。「ま、この近くだから来たかったらおいでよ」って言って帰ろうとしたんだけど、どうやら後ろからついてきているみたいだった。足音とかはしないんだけど気配があるっつうのかな、とにかくついて来ているなってわかった。
ワゴンの中に入ろうって思ったんだけど中はイチャついた奴ばっかりだし、と思ってワゴンの近くに座った。さあて、なんつって自己紹介しようかなぁって思ってたら
「……」と彼女が小さい声でなんか言った。
「ん?ゴメン、よく聞こえなかった。何??」
「……ミユキ…」
彼女が初めて喋ってくれたのが嬉しくて、
「そうかぁ!ミユキちゃんかぁ!」って大袈裟なくらいリアクションをとった。そっからは早かったよ。お互いもっと早く会えれば良かったなって言って笑った。ミユキは前に振られた彼氏を引き摺っていて、彼を思い出す度にこの山に来ていたって。でもそれも俺と会った事でこの山に来ることもなくなるかもしれない、なんて言ってさ、もう俺、めちゃくちゃ嬉しくって。
それからは毎日この山に来ているんだ。いつ来てもミユキはいるし、少し話して帰る程度の極々健全な付き合いだったけど楽しかった。
でも最近はミユキの元気がないっつうか、白い肌が一層青く見えるような感じで、心配だった。どうかした?って聞いてもなにも言わないし、いつもどおりなんだけど、でも明らかに何かが変だった。
こんな関係が1カ月続いて、今日も懲りずにいつもの場所へ行ったらさ、ミユキ、今日は連れて行きたい所があるって。ミユキはどんどんどんどん山の中に入ってさ、もう2mも離れたら見えないだろうなって思うくらい鬱蒼とした森を歩いた。背丈ほどの草を掻き分け、ふと気がつくと目の前に大きな木が突然現れた。あと一歩でも踏み出していたら木にぶつかっていただろうなっていうくらい気付かなかった。
ミユキはその木の反対側へ行った。
木の反対側には泥だらけのワンピースを着た骸骨があった。首には腐りかけのロープが付いている。首をつって、死んだあと、ロープが切れて落ちたのだろう。ワンピースは今では泥だらけだけど、はじめはきれいな白いワンピースだったんだと思う。そう、ミユキのワンピースのような。ミユキはその骸骨の前に佇み語りだした。
「……前に言った彼に振られた後の私よ。ショックでショックでショックで……彼に可愛いって言われたワンピースと、似合うって言われた靴と、奇麗って言われた指輪を付けて……死んだの。そしたら死んだ直後にあなたに会うんだもん。悲しかった。本当にもうちょっとでも早くあなたに会っていたなら、私は死ななかった。こんな恨みつらみだけでできた見えない体を持つことはなかった。……本当を言うとね、仲良くなっていった時、あなたを道連れにしようって思った。でもね、本当に好きになったのよ。いくら私が死んでいても、あなたを殺すことはできなかった。だから……だから、あなたはこの山から出て。これ以上いたら私はあなたに憑りついてしまうわ。だから、お願い。あなたを殺したくはないの…!」
僕はその言葉を聞いて、ゆっくり服を脱いだ。
僕のおなかにはポッカリと穴が開いていた。向こうを見ようと思えば見える。
ミユキはビクッ!として、ゆっくり僕の顔を見た。
「そうか、ミユキは1か月前に死んでいたのか。僕はね、半年前だ。前から走ってきた男がいきなりナイフで俺を刺したんだ。かなり大ぶりなナイフでさ、貫通しちゃって。俺の体が倒れる前に、俺は上から倒れる様を眺めていた。1か月前は友達が俺を忘れるためなのか、忘れないためなのかわかんないけど、俺の為に開いてくれたキャンプだったんだ。でもみんな彼女連れてさ、全然俺の為じゃねえじゃん、みたいな。……ん、まぁ、だからそう言わずにさ、もうちょっと一緒にいようよ、な。」
ミユキにそういうと、ミユキは俺にぎゅうっと抱きついてきた。ミユキにしては大胆な行動でびっくりしただ俺も嬉しかったから抱き返してやった。
自縛霊と浮遊霊。なかなかお似合いのカップルじゃないか。
読んでいただいてありがとうございました。
初期設定のお話は全然違っていて、その主人公が「ま、女の幽霊が出るところで彼女でも捕まえるわ」って言って死ぬシーンがあって、気づいたらここだけのストーリーになってしまいました(笑)
私自身死ぬという事にとてつもない恐怖心を持っているな、って思います。だから私の書くお話は大抵人が死ぬんです(笑)
私も女子校生活7年目(中学&高校&大学ですよ)に突入しちゃって、出会いがないなぁ〜。主人公みたいになっちゃうんじゃないかな〜。死なないようにがんばろ〜。と思ってこの辺で終わらせていただきます。
皆さんありがとうございました。