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脇役たちの哀歓  作者: ERIKA
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わたくし、第一皇女にして皇太子様の正室ですの

わたくし、「四つの州の国」を治める「日の御子様」の第一皇女です。夫は第四皇子にして異母兄である皇太子様ですのよ。さあ、羨ましいとおっしゃい。正直に。


わたくしの名前は「春の宵」というのですけれど、皇太子様は「おい」か「お前」としか呼んで下さいませんわ。その上わたくしは正室だというのに、ご自分のことも「殿下」「皇太子様」としか呼ばせて下さいませんの。


原因は分かっていますの。義妹です。「木洩れ日」という名のもと巫女ですわ。皇太子様はその女を正室にしたいと熱望していらしたとか。許せませんわ。皇太子である以上、実の妹を正室にするのは当然ですもの。あんな属州から来た皇族でもない女を好まれるなんて、殿下も物好きでいらっしゃるわ。


思えば女癖の悪い皇太子と噂されたあの方が、ひどく禁欲的になられていた時期がありました。「木洩れ日」を狙っていた頃ですわ。あの女が第七皇子の正室に収まってからはその反動のように次々と妻を娶り、毎夜ハシゴをしておられたようですわ。はしたない。でもその甲斐あってあの女が出産した頃には側室たちに続いてわたくしも懐妊しましたの。


これでもうあの女には負けませんわ。懐妊をお知らせしたとき皇太子様は深く安堵なさっておっしゃったの。「助かった」。続けて「これで義務は果たしたぞ」。何なんですの。その後は閨どころかおいで下さることも無くなりましたわ。


皇太子様は妻たちに興味が失せたご様子でした。あの女はすでに子持ちと言うのに、未練がましいこと。お父様が「側室に迎えたからには分け隔てなく、どの相手とも子を成すように」と諭された時は真っ青なお顔をしておられました。当然ですわ。側室9人に加えて婚約者まで控えておりますもの。


でも、それも自業自得というもの。皇太子様が目ぼしい皇女様たちを妻にしてしまったせいで、同母の弟である第五皇子は降嫁されたもと皇女様のお生みになった姫を正室にするしかありませんでした。皇女様を頂きたいとずっと希望していたのに、不憫ですわ。



皇太子様の側室が10人になって間も無く、わたくしは出産しましたの。殿下にとっては第四子の第三皇女でしたわ。付き添って下さったお母様は明らさまにがっかりしたご様子。でも、わたくしは満足ですわ。だって、皇太子様に申し上げるつもりですもの。


「わたくしは第一皇女にして皇太子様の正室ですもの。世嗣ぎの皇子をお授け下さるまで、許しませんわ」


殿下の嫌そうなお顔を想像して、わたくしはくつくつと笑い声を漏らした。

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