ヤマト作戦
戸村洋介
高校生。希望進路は防衛大学校、海上自衛官。
戸村幸一
海上自衛隊2等海佐。洋介の父親。戦艦大和艦長
西条美香
洋介の彼女。ポニーテール。
戦艦大和
のちに国連日本海軍に引き渡される予定の戦艦。
「ヤマト作戦発動!!」
あれは俺が高校2年生のころの出来事だった。
俺戸村洋介は初めて出来た彼女と、海でデートしていた。
西条美香。ポニーテールでとても愛らしい。
そこに突然、海上自衛隊のヘリコプター、SH60がやって来たのだ。
砂浜だから大変だ。ローターが砂ぼこりを巻き上げ、俺たち2人に降りかかる。
「ッ!」
「きゃ!」
美香を庇いながら俺は着陸地点に向かう。
中からパイロットが現れた。
ヘルメットを外しつつ、彼は俺らに話しかける。
「僕は海上自衛隊の一色。階級は3等海尉だ。…戸村くんに西条さんだね?」
「あ、はい」
「緊急事態だ。何も聞かず直ちにヘリに乗ってくれ」
「は、はあ」
言われるがまま乗り込み、離陸した。
親父が海上自衛官だからその関係かな。
おそらく携帯電話の位置情報で見つけたのだろう。
「実は…イージス艦こんごうが、テロリストに乗っ取られたんだ。ミサイルを改造してそれに核を搭載している」
「「なッ!!!」」
パイロットの言葉に俺たちは驚いた。
携帯電話でSNSや掲示板を調べると、確かに大騒ぎになっていた。
「…で、これからどこへ行くんです?」
「東京湾に停泊している護衛艦だ。戸村2等海佐がお待ちだ」
「親父が?」
ヘリコプターはその護衛艦に着艦した。
ん? この艦どこかで見たことあるぞ?
「そうだ。戦艦大和だ。まだ未完成だがな」
声をかけてきたのは親父だった。
「戦艦大和!?」
「『防衛出動に伴う、護衛艦こんごうの強制停船措置命令に基づく、国連日本海軍納入予定艦戦艦大和を徴用する、自衛隊統合任務部隊との共同作戦。』が発動されたんだ」
「長い名前だな」
「通称はヤマト作戦だ」
「へえ、…で、そんな大事な作戦に俺たちが来て良かったのか?」
「一応避難という名目だが、お前は将来海上自衛官で、お嬢ちゃんはその配偶者だろ?実戦を体験しておくべきだ。」
「「配偶者!!!?」」
親父め。美香が顔を赤らめているじゃないか。
俺たちは特別にCIC(戦闘指揮所)で観戦することになった。あくまでもこの艦は未完成だから、防衛機密は関係ないそうだ。もっとも親父の職権濫用の一面もあるだろうが。
「「ヤマト作戦発動!! 第一次攻撃開始!!」」
統合任務部隊司令官たる自衛艦隊司令官の命令が大和に届いた。
「了解。第一護衛隊群、第二護衛隊群、攻撃開始」
「F2支援戦闘機ファルコン隊、攻撃開始」
作戦第一段階では、敵を飽和攻撃して、弾薬を消耗させる。
思惑通り、敵は対空ミサイル等を撃ち尽くしつつあった。
「戦艦大和はこれより主砲レールガン攻撃を開始する」
作戦第二段階では、消耗させた敵めがけてレールガンをぶっ放す。ただし、核兵器を損傷しないよう、機関部のみ狙う。
「目標こんごう、主砲攻撃始め」
「撃ち方始め…用意、」
「撃て!!」
モニターに一瞬ノイズが走る。
とんでもない衝撃が大和を襲った。
倒れそうになる美香を支えつつ、俺は大和に感嘆していた。
大和のレールガンの初速はマッハ6に達するそうだ。
だが、今回はあえて威力を抑えているようだ。
そして…あっという間に弾着。
護衛艦こんごうは航行不能となり、テロリストは拘束された。
この出来事は、俺の、海上自衛官としての人生に影響を与えた。