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魔王現る

「……というわけで俺は妹に唆されて魔王を倒しにこの世界に来たわけだ。別に冒険したいわけじゃない。あんまり長居しても夕飯に間に合わないからな。」


 俺は説明した。


「あ、まあその辺の事情はどうでもいいんですけど。たぶん冒険しないと魔王倒せませんよ。魔王どこにいるのかわかりませんから。魔王を探すための冒険は必須です」


 何だと!騙したのか!

 俺は村長の胸倉をつかんでゆさぶった。

 冷静に考えれば別に誰も俺をだましていないことには気づいていた。

 旅に出ることが必要なら俺は旅に出よう。

 しかし冒険には準備が必要だ。

 そのために必要なものを俺は村長から得ようと考えたのだ。

 交渉をするにはクレームをつけるのが己を利するのに有効な手段である。

 クレームをつけるには何でもいいから突然キレるのがよい。

 俺は小売のバイトもしたことがあるので客からそのことを学んだのだ。

 しかしこの村長クールな目で俺を見つめている。

 俺のクレームが効いていないのか……?まさか村長も小売業経験者!?



「勇者があらわれたのはここか!」

 

 叫び声とともに壁がふっとんだ、というか穴が空いた。

 そこから出てきたのは……幼女?10歳ぐらいの女の子だ。

 半裸にボンテージというすごい格好をしている。

 青みがかったくせっ毛からうずまき状の角が突き出している。


「幼女ではない!魔王じゃ!わしを倒しに来た勇者とやらを討伐しに来た!」


 ごめん村長、魔王むこうから来たわ。

 俺は村長の胸倉から手を離した。けど遅かった。

 村長は俺の頬を思いっきり殴ってきた。

 痛い!突然人を殴るなんて何を考えているんだ!


「すいません。けど胸倉をつかまれたんでつい……。暴力も使えないとこの世界では村長なんてやってられませんからね」


 そうかそうか……ぼくが悪かったよ。

 まあ魔王が来てくれたんだからお互い水に流そうじゃないか。

 というわけで俺は魔王を倒そうとのこぎりを構えた。

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