冒険者ギルド
特に収穫がなく話も進まなかったので茫然とした気持ちで街道をふらふら歩いた。
すると冒険者ギルドという字が目に入る。
冒険者!冒険するならこれが基本だよな。
きっと薬草を採取したり魔物の討伐部位を持って帰ったりしてお金を稼ぐにちがいない。
この筋道だたない旅にもきっとストーリーが生まれるだろうと思い俺は幼女の手を引いて冒険者ギルドの扉をくぐった。
ギルドに入ると屈強かつ粗野な男たちがこちらに目を向けてくる。
みんな不敵に笑っているので俺も合わせてニヤニヤしてみた。
男たちは虚をつかれて戸惑っている。
それを見て俺も戸惑っている。
俺たちはカウンターへ近づいた。
「冒険者ギルドへようこそ!」
受付の女性に挨拶される。
今度は猫人間ではなく人間に猫耳の生えた本物(?)の獣人でしかも結構かわいいがまあいいや冒険者登録をお願いします。
「いいのかよ!まあいいやこちらに必要事項をご記入ください」
俺と幼女はそれぞれ記入を始めた。
なんか普通にボールペン(ゼ〇ラ)とコピー用紙(ア〇カ)なんだが気にしないことにしよう。
久しぶりにペンを持つので手が震える。
書き損じで5枚無駄にした。
「チッ、紙を無駄にすんなよな」と小声で言って受付は紙を受け取った。
聞こえてるし怖い……。
「わしも書けたぞ!」
何が嬉しいのか幼女がにこにこして紙を差し出す。
受付もにこにこ受け取る。
明らかに角が生えている幼女なんだが別に警戒されていない。
まあ猫耳が生えている人も、猫そのものの人間もいるし関係ないのかな?
しかし馬は幼女の格好を気にしていたよな……。
服は気にしても身体的特徴は気にしないのか。
なかなか文化的な世界だな。
「えーと、男性の方が年齢24歳、職業勇者、出身地クローゼット。幼女さんの方が年齢いちまんさい、職業まぞく、出身地まかい。ですね」
いや違うな。幼女のまぞくは人種であって職業ではない。
やつは魔王もしくは勇者パーティーの魔法使いを目指しているのだから今はさしずめモラトリアムだな。
「それを言うならおぬしの勇者もいわば使命のようなもので本来の職業はニートであろう」
「わかりました。男性の職業がニート。幼女の職業がモラトリアムですね」
あ、登録されちゃった。
それにしてもふざけた内容だな。
ふたりとも素直に書いたから恥じることはないが。
正直は美徳である。
「まあ個人が特定できればなんでもかまいません。冒険者としての履歴はこれから付きますからね」
そういって受付がプラスチックじみた薄いカードを差し出してくる。
これはもしやご都合主義の頂点ギルドカードでは!?
「おっしゃる通りギルドカードです。冒険者としての活動が記録されます。魔物を倒した場合自動的に記録される優れものです。それによって冒険者ランクが決まるので討伐部位を持ち帰る必要はありません」
そうなのか。ということは冒険者の収入は依頼達成の報酬ということか。
「魔物の素材や採取した薬草などは依頼とは別にギルドおよび普通の商店でも買い取ることができます。たとえば採取系の依頼は決められた数を納めることによる成功報酬ですが、依頼が無くても採取したものを売ることはできます。逆に討伐系は討伐記録による成功報酬と素材の売却による利益、両方を得ることができます」
うーむ……この設定覚えていることができるだろうか……。
「素材の販売は自由ですが依頼に関してはランクによって受けられるか否かに制限があります。ランクは依頼を達成することで上昇し、失敗することで下降します。受けられる依頼はランクの上下ひとつ分までです。冒険者ランクはA~Gまでで最初はGランクスタートです。ではギルドカードをどうぞ」
受付がギルドカードを渡してきた。
この小説に珍しく真面目に話したので息が切れている。
読者もめまいを感じた。
覚えていられるかわからない設定のために……。
「あれ、わしのランクがEになっておるぞ?」と幼女が言った。
受付が確認をする。
「ギルドカードが直近の戦果を拾ったみたいですね……!盗賊団『黄金の太陽』と最近王都を騒がせている『謎の触手魔物』が討伐成果に入っています!」
黄金の太陽……王都に来る途中に燃やした盗賊団か。
名前がかっこいい。
謎の触手魔物……はたぶんさっき公園で燃やしたやつだ。
燃やしてばっかりだな。
ん?盗賊は魔物じゃないよな?
「討伐系の依頼は対象の指定がありますがそれは魔物だけとは限りません。討伐対象にあがっていればギルドカードで照合されるのです」
そりゃそうか。
「それにしてもすごい戦果ですね。特に『謎の触手魔物』は都民が何人も被害にあっています。何でも子ども姿の疑似餌を出し、それを自ら襲うことで助けに来た人間を食べてしまうとか」
リックは罠だったのか。
どうりで馴れ馴れしいと思った。
しかし道理がついてしまうとどうにもつまらんな。
俺のなかではリックは不条理に殺された少年として記憶しておこう。
「勇者がGランク!わしがEランク!」
幼女がギルドカードを持って騒いでいる。
嬉しいらしいが子どもか!いや?子どもか?一万歳らしいけど……。
まあ外見が幼女なら幼女だろう。
「ちなみに、冒険者ランクはギルドの気まぐれでABC表記から123表記や、いろは表記に変化することがあります。内容は変わりません」
「ほんとうじゃ!わしのEランクがほランクになっておる!」
幼女がギルドカードを見て目を丸くしている。
俺はとランクになっていた。
しかし誰の気まぐれだ?どうやらギルドカードが常に同期していることはわかったが……。
それより説明はもういいな。
さっさと依頼を受けてストーリーを進めよう。
俺はGランクでできる依頼を探す。
「Gランク最初の依頼は薬草採取が定番になっております」
キタァァァァァ!基本パターン。
俺のチート武器で薬草やら討伐部位やらをたくさん取って来て受付が驚くという未来が見える。
やります、ぼくが取ります。
すると幼女が服を引っ張って来て「今日は疲れて眠たいからもう帰るのじゃ」と言う。
本当に子どもか!いや?子どもか。
まあ薬草採取は朝に行くというのが定番だからいいだろう。
俺たちは依頼を受けて宿に戻って馬に挨拶して飯を食って寝た。




