Tシャツとスパッツ
服屋に着いた。
路肩(?)に馬車を止めて店に入る。
服がほしい。他になにもいらない。
「え!愛も?」
店員が驚いていた。
こいつは何を言っているのだろうか。
愛は必要だ!それより服がほしい。
こいつが半裸なんだ。
「幼女が半裸ボンテージ!犯罪だ!犯罪祭りだ!」
いや、こいつ魔族だから。
「魔族だから倫理的に許される?そんなことがありえるのか???」
え、だめなの?普通に犯罪説三度目の浮上?
「にゃー、話が進まないからおまえは引っ込んでるにゃー」
猫娘だ!語尾ににゃーが付いている!
期待を込めて声の方を向くと人型の猫がいた。
人に猫耳とかじゃなくて二足歩行の猫だった。
期待と違……いや、猫娘だ!たぶん娘だろう声的に。
いや年齢はわからないけど牝であってるはずだ。
そして俺たちを出迎えた男性店員はどこかへ追いやられた。
「にゃー、いらっしゃいませだにゅー」
あれ、にゅーって言ったぞ?猫娘である自信がなくなってきた。
にゅーってなんだ?何人?
「噛んだだけだにゃー。わたしは見た目の通り猫獣人だにゃー」
猫耳を触らせてくれませんか。俺、勇者なんで。
「粗相をするようなら警察を呼ぶにゃー。お客様が勇者であるかどうか当店ではわかりかねるにゃー。そもそも勇者だから他人の体をさわっていいという倫理観が一般に流布しているわけでもないにゃー」
あ、ごめん、こっちきてから調子いいから調子にのってたわ。
調子にのってるところへ常識を突き付けられるとへこむような恥ずかしいような変な気分になるよね。知らねーか。
「誰に向かって言っておるのじゃ?(古典的漫画ギャグ!)それよりわしの服を買うのならゴスロリがいいのう。魔族的にボンテージが駄目ならゴスロリに着替えるのが常道じゃろう」
何を言っているのだこいつは?
おまえをこの街に馴染ませようと努力している馬(カッポカッポ)の気持ちがわからないのか!
見た目を普通の幼女にするのが今回の目的なのだ。
……普通の幼女ってどんな格好しているんだ?
えーと、Tシャツとスパッツ?(90年代的小〇生ファッション)
そして本当にあったTシャツとスパッツを幼女に着せる。
なかなか似合っているな、さすが幼女。
しかしボンテージを着たままなんだが……。
幼女のボンテージはいわゆる女王様という感じではなくベルト状の平たい革が体全体をぐるぐる覆っていて隙間が多いので半裸になっている。
そのベルトが服の間からちらちら見えているのだが幼女によるとこれは自身の魔力のかたまりらしく幼女の意志で消すことができた。
あの変態的な格好を自分の意志で行っていたなんて……恐ろしい子!
ボンテージを消せることに感心していると調子に乗った幼女が
「ほれほれ、わしの魔力は変幻自在じゃ。魔族らしく羽と尻尾を出すこともできるぞ」
と言って蝙蝠っぽい羽と先の尖った細い尻尾を出す。
羽と尻をふりふりしてアピールしてくる。
当然、服が破れたので頭を殴っておいた。
もう一枚買う羽目になったじゃないか。
しかし幼女の頭に生えた角で俺の拳も負傷した。




