放課後の約束
また帰りに玄関で会った2人はどちらからともなく一緒に歩き出した。
もう雨は降っていない。
だから、一緒に歩く必要はない。
それでも、2人は一緒に歩き始めた。
はじめ「なあ。」
優衣「なに?」
はじめ「俺さ・・・」
優衣「ん?」
はじめ「俺・・・いや、何でもない。」
優衣「ええ~?気になる言い方だなぁ。」
はじめ「いや、何か言いたかったけど、どう言ったらいいのかわかんねーし、いいや。」
優衣「なにそれ~。もしかして、はじめ君って優柔不断なの~?」
はじめ「俺・・・優柔不断ではないけど・・・。そもそも優柔不断はテニスにはネックだろ。」
優衣「確かに・・・そうよね。ボールが来るのにフォアかバックか迷ってたら決められちゃうもんね。」
などとテニスの話をしながら一緒に電車に乗り込んだ。
はじめ「そういえばさ、俺、天野さんがどこの駅から来てるのか知らなかった。」
優衣「わたし?わたしはあと・・・5つ目。」
はじめ「ん?それ、俺と同じ。」
優衣「え?」
今まで全く会わなかったのだが、実は同じ駅で乗り降りしていたらしい。
いろいろ聞いていくと町内会まで同じだった。
はじめ「なんだ、ご近所さんか。」
優衣「そうみたいだね。」
はじめ「今度、一緒にテニスしないか?」
優衣「え?」
はじめ「いや・・・家も近いことだし・・・あのコートも近いし・・・。ってだからあの時、あのコートに来てたのか。」
優衣「あぁ・・・家の近くのコートって言ったらあそこだもんね。」
はじめ「今日は部活もないし、体なまってるな・・・。これから打たないか?」
優衣「いいね!じゃ、あとでコートで会おうよ。」
はじめ「ああ。・・・あっ、その前にメアド教えて。」
優衣「え?」
はじめ「だってもし何かあってコートに行くのが遅れるとかあったときに連絡できないじゃん。」
優衣「それもそうだね・・・。」
そして2人はそれぞれの家に向かった。
~ はじめSide ~
なんか俺、勢いでメアドまでゲットしちゃったよ。
よし、俺。それでこそ男だ。えらいぞ、俺。俺大絶賛中。
こんなに俺をほめること、コートの上でかなりいいショット打ってもないぞ。
俺は明らかに天野優衣を意識していて、好意を持っている。
向こうはどうか知らないけど、嫌いではないだろう。
ああいうタイプははっきりしているし、外国から帰ってきているから自己主張にも慣れている。
嫌なら嫌だとはっきり言うはずだ。
にしても、俺をつかまえて優柔不断だと?
言ってくれるじゃないか。
どっちかって言うと迷いのないほうだと思っているのに。
どうも天野優衣が絡むと俺らしくない方向に流れていく。
もっと彼女のことを知りたい。もっと話をしたい。もっと一緒にいたい。
今までもかわいいな・・・とか思う子はいたけど、こんな気持ちになったのは初めてだ。