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イケメン兄弟。  作者: ぷちはむ。
6/22

雨の日の朝

次の日はあいにくの雨だった。

いつもはテニス部も朝練があるが、雨の日は休みというのが暗黙の了解だ。


みどり「あ、お兄ちゃん、まだこの時間に家にいるの珍しいね。」と小学6年生の妹みどりがトーストをほおばりながら話しかけている。


はじめ「今日は雨だから朝練ないんだよ。そういえば、あきらは?あきらも朝練なしか?」

みどり「あ、あき兄ならまだ寝てたよ。」

はじめ「そうか・・・。って今起こさないとヤバくね?」

みどり「そうかなぁ。あき兄はダッシュで行けば学校まで5分くらいだし、いいんじゃない?」

はじめ「そういう問題か?」


と本人がいないところで焦っているはじめとのんびり静観しているみどりの会話をよそに次男のあきらはすっかり夢の中。


はじめ「おれ、あきら起こしてくるわ。」

みどり「ほっとけばー。」

はじめ「あいつ寝起き悪いんだから、起こしてやらないとほんとに遅刻するだろ。」

みどり「はっ、そんなの自分の責任じゃん。ちゃんと目覚ましかければいいんだから。」


はじめには分かっていた。

あきらが毎日何時間もへとへとになるまで練習をしていることを。

雨の日にはオートテニス場へ行き、延々球を打ち続けていることを。

だから、くたくたに疲れていて起きるのが辛いのだ。

自分にも覚えがある。だから、あきらを放ってはおけなかった。


はじめ「あきらー。起きろ。遅刻するぞ。」

あきら「・・・。」

はじめ「あきら!!!」

あきら「はい!!」

あきらは、ガバッと飛び上がるようにして起きて目をぱちくりさせている。

そして「兄ちゃん!!ってか今何時??」

あきら「7時45分。」

はじめ「ええ?!」


だから起こしたんだ・・・と言う前に走り出すように部屋を飛び出すあきら。

それを大笑いで見ている母とみどり。

だいたい、雨の日はこんな光景が見られるのだ。


はじめの通う高校は電車で片道30分のところにあった。

雨の日は特に電車が混んでむせ返る臭いがして嫌な感じがした。

駅から歩いてさらに15分。

テニスができない日は、朝からつまらない。

何だかテンションがあがらない。

傘をさしてイメージトレーニングをしながら歩いていると、信号の向こうで風にあおられて傘がひっくり返っている人がいた。

よく見ると・・・昨日、コートであった美少女天野優衣だった。


信号を渡って近づいていくとぼろぼろになった傘とまだ格闘しているところだった。


はじめ「天野さん、おはよう。」

優衣「・・・もうっ。何なのよー。朝から最悪。テニスできないってだけでもテンションさがるのに。」

はじめ「おはよう!!」

優衣「??あっ、お、おはよう。」

すごく驚いた顔で振り返った優衣は、はじめを見つけて少し恥ずかしそうに顔をしかめて傘を指差した。


はじめ「見てたよ。朝から傘と遊んでたの?」

優衣「・・・。」優衣はただ黙ってにらんでいる。

はじめ「・・・冗談だよ。悪かったよ、茶化して。な、なぁ・・もしよかったら傘入ってく?」

優衣「え?」

はじめ「い、いや・・・嫌ならいいんだけど。だったら、俺の傘貸してやるから。俺、ランニングしながら行くし。」

優衣「嫌・・・なわけじゃないんだけど・・・。」

はじめ「じゃ、早く入んなよ。」

優衣「う、うん。ありがとう。」


こうして2人は駅から高校までの15分を一緒に傘に入って歩くことになった。


優衣「ねえ、はじめ君ってテニスいつからしてるの?」

はじめ「6歳から。」

優衣「そうなんだ。どうしてテニス始めたの?」

はじめ「音が忘れられなくて。」

優衣「音?」

はじめ「うん・・・。」そして、はじめはテニスに出会った日のことを優衣に聞かせた。

優衣「へぇ、そうなんだ。でも・・・筒を抜く音だとか、突っ込みを入れる音だとかって(笑)なにその発想!」と爆笑している。

はじめ「いいだろ。本気でそう思ってたんだから。啓吾さんにも笑われたけど・・・。何でみんな笑うんだよ。」

優衣「ねえ、はじめ君って天然なの?」と、まだおかしそうにおなかを抱えながら優衣は笑っている。

天然は母さんで俺じゃない・・・と心の中でつぶやきながら「そんなことない・・・はず。」と返事をするはじめであった。


そんな話をしているうちにあっという間に高校に着いてしまった。

周りで2人を見ながらいろいろな噂が飛び交っているとも知らずに、楽しそうに玄関に入る。

話しているうちに2人は隣のクラスで、選択教科が同じものもあることを知った。

そして、1時間目はその選択教科「音楽」だった。

結局、くつ箱もすぐ近くで、はじめのくつ箱からドサドサッと出てくる手紙を横目で見ながらも会話は途切れることなく教室の前まで2人で歩いていった。

じゃ、と手を挙げて別れ教室に入った途端、どちらも友達から囲まれた。



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