「らしく」
男の子は、男の子らしく。
女の子は、女の子らしく。
そう言う風に言われるのが、一番嫌いだった。
男の子らしさって、何?
女の子らしさって、何?
男の子は、料理や裁縫をしちゃいけないの?
女の子は、外で泥んこになって遊んだり、かけっこしたりしちゃいけないの?
…どうして、性別で区別しようとするの?
それは私がずっと前から持ち続けてきた疑問であり、永遠の難題。
解決することはきっと、ずっとない。
人間は生物学上、二種類に分けられる。
でも、誰がその二種類しか分けちゃダメ、って決めたの?
一人一人個性があるのに、どうして二種類に無理矢理分けようとするの?
…分からない。
どうして?
私は、私らしく。
それでいいと思うのに。
「坊ちゃま、何処におられまする…?!またそんな格好をして…貴方は新王寺家の大切な跡取り息子なのですぞ…!」
「……」
だから、嫌いなんだ。
男とか、女とか。
そんなくだらないもの、消えてなくなってしまえばいいのに。
「…さぁ、こちらへ。そのくだらない格好からも、着替えてもらいますぞ」
老執事はそう言って、まだ幼さの残る主に手を差し伸べる。
主の本当の望みなど、知りもせずに。