夢と現実。
あたしの夢は、綺麗なお嫁さんになることだった。
大好きな人と、カミサマの前で永遠の愛を誓う。
あたしは真っ白なウェディングドレスを着て、ブーケを持って、彼と笑い合う。
それは、あたしの些細な夢。
多くは望まない。
億万長者になれなくてもいい。
ただ、大好きな人達と、平和に暮らしたかった。
…それだけだったのに。
「君は、死んだんだよ」
ある日突然、何の前触れもなく、それは言った。
死…?
だってあたし、普通に息してるよ?
今日だって授業受けたし、帰りに友達と遊びに行った。
いつも通り、だったはずなのに。
「君はもう、肉体を持たない。―証拠にほら、向こう側が透けて見えるだろう?」
…うそ…そんなはず、は…
「…酷い事故だったよ。運転手の居眠り運転が原因で、歩道を歩いていた君に車が突っ込んだ。…即死だったよ」
うそ…うそ!
そんなの…信じられない。
「だから君は、成仏しなければならない。…大丈夫、君ならきっと、すぐに輪廻出来るよ」
だってあたしまだ…高校生だよ?
やりたいこといっぱいあるし、恋だってまだ―…
「…さぁ、おいで。迷える魂よ」
あたし…あたし、は、
暖かな光が、彼女を包み込み、飲み込んでゆく。
無垢な魂は、聖なるそれに導かれ、やがてゆっくりと消えていった。
「…ごめんね…」
やがて眩いばかりのそれは、跡形もなく消滅した。
その場に残された少年は、悲しそうにそう呟く。
―真っ黒な黒装束と身体に合わない大きな鈍色の鎌が、やけに目立って見えた。