表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

信じる者は救われる?

 


 --ねえ君、悪魔を信じるかい?

 街を歩いているとすれ違いざま、いきなりそうささやかれた。

 --何ですか突然。新手の宗教か何かなら、お断りですよ。

 見れば見るほど、気味の悪い男だった。

 青白い肌に、妙に小ざっぱりとした身なり。そのくせまぶかに被られた帽子と口元を覆い隠すマフラーによって、ほとんど表情を見ることはできない。

 けれども不思議なことに、彼が薄笑いを浮かべていることがわかる。それがますます、彼の疑心を色濃くさせた。

 --いえね、別に怪しい者ではないんだ。ちょいとたずねてみたくなっただけで。

 怪しい人間ほど、自分のことは怪しくないと言う。信用は限りなく地に近い。

 疑いの眼差しを送る。すると男はそれを感じ取ったのか、わずかに苦笑いを浮かべた。

 --さては君、信じていないね?

 当然だ。大体誰が初対面の人間を無条件で信用するというのか。もし私が逆の立場だったら、はいそうですか、と簡単に信じたりしないだろう。

 --まぁわからんでもないがね。だが、私の言っていることは事実であり、真実だよ。

 完全に言い切った。言い切ったぞこいつ。

 妖しさに磨きがかかった。いやもう、これで怪しくないなんて思うやつがいたら、もうそれはよほどのお人好しかバカだろう。

 --急ぎの用があるので、では。

 こういうのには、極力関わらないほうがいい。有無をいわせずにそう言い切って、逃げるようにその男から遠ざかった。

 --ああ、今日も救えなかった。

 ぼそり、とそんな声が、後ろから聞こえたような気がした。



 それは古い古い、どのくらい古いかわからないほど、古い言い伝え。

 もしも悪魔を名乗る者が現れたら、決して無下にしてはいけないよ。その人は、君を試しているんだ。君が生きるべき価値のある心を持っているかどうかをね。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ