誘惑された話
世の中には、誘惑が多い。
例えば食べ物。最近はコンビニだの24時間スーパーだので、何時でも何処でも買えてしまう。
疲れて会社から帰る途中ふらりと立ち寄ったコンビニで、高カロリーなポテチなりアイスなりを簡単に購入出来てしまうのである。
「……気になる」
帰り道にたまたま寄った、とあるコンビニ。商品棚に並ぶ新製品の文字に、俺は思わずそう呟く。
カラフルな外袋に詰め込まれた、個包装された飴玉達。そこにでかでかと書かれた、期間限定・焼き肉味入り、という一文。果たしてそれが美味いのかどうかは甚だ疑問だが、物凄く気になる。
買うべきか、買わざるべきか。しばし悩んだ後、買い物かごに放り込んだ。
「ありがとうございました~」
会計を終えてすっかり常連となったコンビニを出ると、むあっとした不快な空気が身を包み込んだ。まだ五月だというのに、酷く蒸し暑い。
「しまった、アイスも買えばよかったか」
そう思うが、今からもう一度戻るのもめんどくさい。それにこの暑さだと家に着く前に溶けてしまうかもしれない。今日は諦めることにしよう。
仕方なしに、そのまま帰路に着く。
「あ、そうだ。さっきの飴」
買ったばかりの飴玉の袋を取り出して、早速口へと放り込む。
「……うわっ」
瞬間、数分前の自分の行動を激しく後悔した。
--どうすんだよ、この大袋。
どうやってこの量の飴を処分するか考えながら、家のドアを開ける。ああ、明日は一体どんな誘惑が待ち受けているのだろう?