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食べたい男
「アイスが食べたいんだ」
不意に、男が言った。
「どうしたんだ、突然」
「いや、どうもこうもない。俺はアイスが食べたい」
アイス、アイス、と、うわ言のように何度も呟く男に、もう一方の男は苦笑する。
「そんなに食べたいのか」
「食べたい。今すぐにでも、食べたい」
ギラギラとした両の瞳が、まっすぐにこちらを見る。その余りの迫力に、男は思わず息を飲んだ。
――ああ、そういえば僕の名前は、何だったっけ?
「君が食べたいんだよ、アイス君?」
目の前の男が、にやりと笑いながら言った。