いのちのはなし
世の中不公平だな、と、切に思った。
例えば、素晴らしい作品を世に残した名優や名作家は早くに亡くなってしまったりするのに、私のようなただ酸素の無駄遣いでしかない人間はのうのうと生き続けている。
どこかで「無駄な命なんてない」とか、「どの命も等しく尊い」とか、そういうのを並べた文を見かけるけど、そんなの綺麗事だ。実際立場が違うと、人の態度も異なるじゃないか。それなのに平等だなんだと声をあらげる人間は、私は苦手だ。
そりゃまあ確かに、神様に与えられた命、という点では、皆平等なのだろう。
けど、生まれた場所や時間、運命。全てを鑑みると、到底平等だなんて思えない。
特別神様とかを信じてる訳ではないけれど、もしいるのだとしたら、どうしてこんな世の中にしたのか尋ねてみたい。
皆違って、皆いい?本気でそう思ってるのだろうか?
*** ***
「……なんて、思われているのかしら」
下界の遥か彼方、つまらなそうに一人河原に佇む女子高生を見下ろしながら、一人そう呟く。
よく神頼み、なんて言うけれど、実際に神が人間に出来ることは少ない。
こうして見守るだけで思考を読み取ることは出来ないし、もちろん運命に介入することは出来ない。
案外、本物の神が人間に与えれることは少ないのだ。
「って言っても、まだ私新米だから更に少ないんだけど」
せいぜいが、少し頑張って直前に危険を知らせる程度だろう。……もしもそれをしたら、懲戒免職ものなのだが。
「ま、そういう訳だから、神様なんてあてにしたとこで無駄よ、無駄。……それがどうしてわからないのかしらねえ……」
ふぅ、と溜息一つ、新米神は嫌でも届く”願い”に耳を傾ける。
今日も、聞こえてくるのは身勝手な人間の”欲望”そればかりだった。