狼と子猫。
あるところに、狼がおりました。
狼はいつもひとりぼっちで、さびしくて仕方ありません。
何とか友達を作ろうと思いますが、肉食の彼に近付く者は誰もいませんでした。
そんなある日。
狼が一人とぼとぼと歩いていると、どこからか鳴き声が聞こえてきました。
か細く、今にも消え入りそうなそれは、聞いていて悲痛なものでした。
お腹が空いたよぅ…寒いよぅ…小さなその声は、誰かに助けを求めるように鳴き続けます。
いたたまれなくなった狼は、しかたなくその声の主を探し始めました。
がさがさ、ごそごそ。
狼は鳴き声のする方を目指して、茂みをかき分けます。
すると、ひときわ大きくにゃあ、と鳴く声がしました。
それと同時に、あったかい温もりが狼にすりよります。
驚いて狼が下を見ると、小さな小さな猫が、狼に甘えるようにすりよっていました。
子猫は狼が見ていることに気付くと、みゃあ、と小さく鳴いてゴロゴロとのどを鳴らします。
今までそんな風に甘えられたことがない狼は、それにどうすることもできずただされるがまま固まってしまいます。
にーにー、にーにー。
可愛らしい鳴き声と共に、子猫は何度も擦り寄ります。
その小さな頭をそっとななでて、狼は決心しました。
このちっぽけな命を、自分が守っていこう、と。