81.Lightning in the blue sky{19}
なんにせよ、
青い空に、稲妻は、よく似合う。
稲妻が、走る。
稲妻が、落ちる。
青天から、落ちる。
青天に、走る。
空から地へ。
いや、正確には、宙から地へ。
気象衛星は、観測する。
大気の動き等を観測し、地上に、伝える。
地上では、それを元にして、気象予測を、する。
気象衛星は、落とす。
人工的な稲妻を、地上に、落とす。
地上に、気象予測した結果を元に、気象制御の為の稲妻を、落とす。
未だ、人工的には、微々たる稲妻しか、起こせない。
そんな稲妻では、気象制御に、使えない。
稲妻の威力を、増幅する必要が、ある。
気象制御に使える稲妻にする必要が、ある。
それには、増幅装置が、必要。
増幅装置と云うか、そう云うものが、必需。
色々、試した。
無機物から、有機物まで。
鉱石・薬品から、昆虫・動物まで。
結果、一つのものに、落ち着く。
人間に、落ち着く。
それも、濃い記憶を所有している人間、に。
濃い記憶を持っている人間ほど、役に立つ。
気象制御の為の、稲妻増幅に、役に立つ。
記憶が濃い程、稲妻は、増幅される。
が、身体に、電気(稲妻)が走る訳なので、無事には、済まない。
人間の神経や脳には、電気信号が走っている訳なので、無事には、済まない。
代償として、増幅装置になった人間からは、失われる。
増幅装置として使われる度、記憶は、失われる。
新しい記憶から、最近の記憶から。
法律が、制定される。
その法律の為、気象制御を名目に、人が、強制的に招集される。
体のいい、祭の人身御供、戦時の赤紙招集。
招集する人間は、その資格から、高齢者が、多くなる。
が、『濃い記憶を持っている』資格さえあれば、若年者も、招集される。
表立っては、苦情を、言えない。
災害を防ぐこと、多くの人の利便に関わること。
そうやって、善意の犠牲者を出し、日々は、続いてゆく。
{case 19}
「綺麗、やな」
「ほんに、ほんに」
男は、呟く。
女は、頷く。
二人は、夫婦。
長年連れ添った、老夫婦。
男は、気象衛星に乗っていた為、記憶が無い。
「眼の前の女が誰なのか」、分かっていない。
それを承知の上で、女は、男の世話をしている。
夫婦は、夜景を見ている。
窓の外は、暗い。
漆黒に、暗い。
だからこそ、映える。
星が、映える。
星の光が、遠くまで、届く。
「あれが、北斗七星」
「ほんに、ほんに」
「あれが、カシオペア座」
「ほんに、ほんに」
「あれが、ベガ」
「ほんに、ほんに」
「そうですか」
背の高い若い男が、女に、言葉を返す。
若い男は、夫婦のかかりつけ医、だ。
「そうなんです。
星と云うか、夜景と云うか、そう云うものに、興味を示して」
「それは、いい兆候ですね。
もっと見せてあげたいですね」
「どうしたら、いいですかね?」
「う~ん・・・配信とか、どうですか?」
「配信?」
女は、分かりかねる。
「今、テレビで、ネット配信のやつ、見られるでしょう」
「ああ、そうみたいですね」
「それで、夜景とか星とかの配信のやつ、見繕って、見てみれば」
「ああ、なるほど」
女は、ネット配信を、検索する。
ワードに、「夜景」と入れ、検索する。
検索結果を表示せず、AIが勝手に、トップの動画を流す。
画面は、明滅している。
夜景は、所々、明滅している。
画面からは、音が、響いている。
重低音が、響いている。
デューーーーードン!・・・・・
ピカッ!
デューーーーードン!・・・・・
ピカッ!
デューーーーードン!・・・・・
ピカッ!
・・・・・・・・・!・・・・・
・・・!
・・・・・・・・・!・・・・・
・・・!
・・・・・・・・・!・・・・・
・・・!
画面では、レポートしている。
腕に、腕章を付けた人が、マイクを手に、レポートしている。
話す言葉は、アラビア語っぽくもあり、ヒスパニック語っぽくもあり、アフリカ語っぽくもある。
「綺麗、やな」
「ほんに、ほんに」
「星のように、またたいているな」
「ほんに、ほんに」
「この辺りでも、やってくれへんかな」
「・・・、・・・」
女は、相槌を、打てない。
{case 19 終}
{了}




