一週間もたなかった。
この国は百年ぐらい前に、災難が襲ったんだよ。
当時の国王夫妻、長い間子供ができなくて困ってたんだと。
夫妻は仲睦まじかったし、国家憲章にも一夫一婦制があったので、
側室もとらず十年ぐらい頑張って、ようやくお姫様が誕生。
国をあげてのお祭り騒ぎで、普段あまり表舞台に出てこない魔女たちも
その時お城に招待されたんだ。その数全部で十二人。
魔女のほうもせっかく呼ばれたし、と様々な祝福をお姫様に与えたけど、
実は他に一人だけ評判が良くない魔女が呼ばれなかったんだね。
単に忘れられてただけかもしれんけど。
祝福与えてる会場にその魔女が怒って乱入してきて、お姫様に呪いをかけた。
「十五になったら姫君は糸車の針を刺して死ぬ」なんて呪いを。
こういうひといるよね。自分が会話に入れていないと気に入らんって。
だから嫌われるんだけど、本人は永久に気づかない。
呪ったら満足したのか、嫌われ魔女は即姿を消しちゃって。
会場は大騒ぎになったんだけど、まだ祝福を与えてなかった最後の魔女が、
「それはウソ。姫君は眠り込むだけ」と呪いを上書きしてくれた。
嫌われ魔女の力はとても強くて、他の魔女たちでも簡単には消せない。
死亡が昏睡になっただけマシなんだけど、国王夫妻はおびえてね。
国中の糸車は廃棄して焼却処分。輸入も禁止したんだと。
当時はそのせいで布製品にえらく難儀したらしい。ひどいとばっちりだよ。
嫌われ魔女も「ぜっったいこいつら悪あがきするよな」と思ってたんだろう。
十五年後、糸車を知らなかったお姫様の興味をひいて針を突き刺しちゃった。
その途端、多分呪いの上書きで誤作動したんだろう、お姫様だけじゃなく
国王夫妻も大臣も騎士も平民も、国中の人々が眠りに落ちちゃった。
嫌われ魔女は思ってたんと違うけど、面白い事になったとはしゃいでた。
数日間は。
国中の人々が寝てるんだけど、いびきが凄かったんだと。数十万人分の轟音。
それが昼も夜も国中で響き渡るの。場所によっては歯ぎしりも。
面白がってた嫌われ魔女も、一日二日は我慢してた。自分でやったんだし。
でも嫌われ魔女が寝ようとしても、グゴゴゴゴゴ、とうるさすぎて寝られない。
最後は嫌われ魔女も限界に達してね、十二人の魔女と協力して呪いを解いた。
さすがにまた呪いかける気もなかったのか、嫌われ魔女は引っ越したらしい。
はじめっからお姫様に関わらきゃよかったのにね。
お互い腹立つ相手は無視に限るよ。
この話の聞き手、百年後のとある国の王子は、いまだに独身です。




