Web小説の暗い真実
Web小説の暗い真実
諸君、ごきげんよう。業界の奴隷たちよ。
このサイトにわざわざ現れたのは、Web小説界の真実、君たちが吹き込まれてきた嘘、そして連中が隠したがっている事実を語るためだ。では、始めよう。
第1部:トレンド
小説家としてやっていくうえで、結局ものを言うのはたいてい三つだと、多くの人間は知っている。
タイミング、運、そして何よりテンプレ。
テンプレというのは、世間知らずのために説明しておくと、要するに飽和しきっているのにクリックされやすい題材を骨格とした物語のことだ。
そして、そういう作品はだいたい長いタイトルをしている。たとえば――
• 「悪役令嬢に転生したので保育園を作って見返してやります!」
• 「ダンジョンでレベル上げ? 退屈だ。なら史上最強のダンジョン配信者になってやる!」
• 「勇者パーティーを追放されたので異世界でスローライフします」
これらはすべてテンプレ作品だ。
既存の多くの作品で見られる要素を使い、気軽なクリックと軽い読み味を狙っている。
そして、よく使われるテンプレ要素は次のようなものだ。
異世界
これは最大手だ。
Web小説という文化が育て上げ、メインストリームにまで押し上げた代表格と言っていい。
『Re:ゼロから始める異世界生活』『転生したらスライムだった件』『盾の勇者の成り上がり』『オーバーロード』――どれも異世界ものだ。
異世界とは何か?
異世界とは、主人公が死ぬか、あるいは転移させられるかして、別世界へ送られる物語だ。
そこでよくある要素は、主人公の俺TUEEE化、ハーレム形成、スキル獲得、魔王討伐など。
正直、私が見てきた中でも最も使い倒されている類型の一つだ。なぜなら、誰もが"楽にクリックを稼げる"と分かっているからだ。
悪役令嬢
これも巨大ジャンルの一つだ。
なろうやカクヨムは特にこれで潤っている。とりわけ女性読者層には強い。
タイトルに「悪役令嬢」と入れるだけで、気軽なクリックがある程度見込める。
ただし、定番から外れすぎるなよ。連中はそういうのをあまり好まない。
悪役令嬢とは何か?
多くの場合、これは女性主人公を中心にした異世界系の派生だ。
彼女はしばしばゲーム世界の"悪役"の立場に置かれており、破滅の運命を回避しようとする。
単に別世界へ転生する場合もあるが、今は前者のほうが主流だろう。
婚約破棄、復讐計画、破滅回避――そういう単語が見えたら、だいたい悪役令嬢ものだと思っていい。
ダンジョン
これについては私も評価が割れている。
『俺だけレベルアップな件』が示した通り、ダンジョン作品は上手くいけばとてつもない規模まで伸びうる。
だが全体で見れば、安価に量産される低い天井のレベリング幻想に落ち着きがちだ。現実逃避を求める読者向けのパワーファンタジーとして消費されやすい。
うまくやれば大きく跳ねる。
だが大半の作品は、失敗して群れの中の一つで終わる。
ダンジョンとは何か?
これは誰でも分かるだろう。ダンジョンだ。
報酬のために攻略する迷宮。重要な場合もあれば、ただの舞台装置にすぎない場合もある。
多くはソロで攻略されるか、あるいは物語上ほとんど意味を持たない脇役チームと一緒に潜る。
主人公はたいてい最初は弱く、レベルを上げ、あっという間に強くなり、さらに効率よく次のダンジョンを攻略していく。
最近ではダンジョン配信ものも増えてきた。ダンジョン攻略に「配信」を足しただけの代物だ。だが、見た目に騙されるな。中身は大して変わらない。特筆すべきものではない。
なぜテンプレはここまで流行るのか?
理由は単純だ。
読者にとって、安心して一気読みできる"見慣れたもの"だからだ。
読者は頭をあまり使いたがらない。予測可能で、単純で、負荷の少ないものを好む。
その結果、ホラー、SF、心理スリラーのようなジャンルは明らかに不利になる。
読むのにも書くのにも手間がかかる。だが、そもそも読者はそこにエネルギーを使いたくないのだ。
この記事執筆時点で、なろうやカクヨムの上位トレンド作品はこういう顔ぶれだ。
• 【毎日更新中】チートなんて無い。~貧乏男爵の跡継ぎに生まれ変わったので何とかしたい~
• 兄が勇者に選ばれたので恩返しの旅に出たら、隠しキャラと裏ボスが仲間になりました
• 現代ダンジョン発生から72時間――配信していたら【世界最強】になっていた件 ~掲示板では『頭おかしい』と騒がれているが、俺はただ効率よくレベルを上げているだけです~
• もし、社畜が異世界の第三王子に転生したら【連載版】
• 毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます
• 転生した受付嬢のギルド日誌
どこかで聞いたことがあるようなものばかりだろう。
Web小説業界がトレンドに支配されていることなど、今さら驚く話でもない。
では、トレンドの何が悪いのか?
トレンドそのものが本質的に悪というわけではない。
Xでも、私と近い意見を持つ投稿をいくつも見た。要するに、テンプレ作品は**"無難に機能する"**のだ。
大爆発はしないかもしれないが、最低限の基盤はある。作者本人もそれで満足していることが多い。
別に国民的作品を目指していないのなら、それはそれで問題ない。
問題は、流行ものを書きたいわけではない人間にまで、その路線を強いる空気だ。
たとえば私も昔、ホラーを書こうとしたことがある。
するとある人間に、「恋愛にしたほうがいい」「異世界に変えたほうがいい」と言われた。
なぜ私が変えなければならない?
その後、Xでは「テンプレを書いて、そこに自分の個性を足せばいい」などという妙な助言も見かけた。
私の助言はこうだ。
やめておけ。
目的が**"出版されることだけ"**なら止めはしない。
だが、それ以外を望むなら、安易に乗るな。
では、第2部へ進もう。
⸻
第2部:現実
もちろん、ここにいる全員が次の『俺だけレベルアップな件』や『薬屋のひとりごと』を書けるなどとは思っていない。
だが、だからといってテンプレ作品を書くことが、長期的に見て最善の目標になるわけではない。
なぜなら、そういう作品は代替可能だからだ。
ギルドマスター、ダンジョン配信者、スローライフ農業、誤解される悪役令嬢――
そういうものは、他媒体に行くと途端に弱くなることが多い。
なぜか?
それは、Web小説向けに最適化されているからだ。
漫画向きでもなければ、アニメ向きでもない。
正直、金を払う価値すら薄いものもある。
だってそうだろう。
どうせ何が起こるか、最初から分かっているものに、なぜ金を払う?
Web小説が愛される大きな理由の一つは、無料だからだ。
無料の娯楽。
だから人は、楽しめれば品質にそこまで厳しくならない。
だが、金が絡み、映像化や商業化が視野に入った瞬間、話は変わる。
以前、私は読者にアンケートを取ったことがある。
「不死者ゾンビを扱うホラー・スリラー」と「主人公が女神と国を築く異世界もの」、金を払うならどちらか。
結果は、87%がホラー作品支持だった。
理由は明白だ。
ホラーのほうが、驚きも、どんでん返しも、展開の揺れもある。
先が読めない。
一方、異世界のほうはだいたい見える。魔王を倒す、ハーレムを作る、そんなところに着地する。
コンテストも、結局は同じ構図に寄りやすい。
選ばれるのは"最良の作品"だからではない。
人気の型にはまっているからだ。
売れはする。
だが、本来もっと刺激的な作品が持ちえた爆発力ほどには届かないかもしれない。
なぜコンテストはそうするのか?
答えは簡単だ。
安全策を取るからだ。
より野心的で、より深みのある作品に賭けるだけの力があっても、しばしば無難なものを選ぶ。
なぜなら、誰も大コケを引きたくないからだ。
大失敗するか大化けするか分からない作品より、そこそこ売れて、いずれ忘れられる作品のほうが扱いやすい。
要するに、鍵になる言葉はリスクだ。
コンテストはリスクを好まない。
書き手もリスクを好まない。
読者もリスクを好まない。
だから、よりニッチな作品を出して拾われなかったとしても、そこまで驚く必要はない。
Web小説業界が今の形になっているのは、この中にいる人間たちが変化に積極的ではないからだ。
彼らは、快適で、安全で、頭を使わなくて済む娯楽を好む。
同じようなものが何度でも売れるのは、読者が「何を頼めばいいか」を分かっているからだ。
いつもの軽食が食べたくなって、馴染みのファストフード店に行くようなものだ。安心できる。
だが、それが本当に良いことかは別だ。
新しいものを手に取る機会を、自分で捨てているのかもしれないのだから。
結局のところ、人生はリスクでできている。
では、何かしらの変化はあるのか?
一応、コンテスト側も少しは新しい作品を取り込もうとしているようには見える。
カクヨムコン11は部門も要素も幅を持たせている。
なろうのネット小説大賞14では、ホラー作品にも目が向けられている。
テンプレへのうんざりを口にする読者もいるし、バトルアクション系が伸びる場面も増えてきた。
だが、それはまだ多数派ではない。
より大きな変化を起こす努力が払われない限り、テンプレは支配し続けるだろう。
根本の問題は、結局読者だ。
そして書き手は、その読者に行動を決めさせすぎている。
確かに読者は観客だ。だが、だからこそ書き手もまた、読者と同じくらいリスクを負う覚悟を持つべきだ。
ひょっとすると、次の大ヒットを書けるのは君かもしれないのだから。
この二つの主要コンテスト――カクヨムコン11とネット小説大賞――から、どんな作品が出てくるのか。
それが今のシーンに一つの光を当てるはずだ。
それまでは、私はこの業界のトレンド、暗い真実、容赦のない現実を、少しずつ暴いていく。
書き手たちよ、オリジナルであれ。




