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断章 邂逅
――気づいたとき、私は、見知らぬ夜の街に立っていた。
石畳。
やわらかな灯り。
どこか懐かしくて、胸が締めつけられるような空気。
足元に視線を落とすと、淡い光が、私の影を静かに縁取っている。
ここは……どこ?
そう思った瞬間、背後から、そっと声がした。
「……やっと、来てくれたね」
振り向くと、そこに立っていたのは――
私と、同じ顔をした少女だった。
黒い髪。
やわらかな瞳。
そして、少しだけ幼さの残る笑顔。
けれど、その表情は、私よりもずっと無邪気で、あたたかい。
「大丈夫。ここは、怖い場所じゃないよ」
彼女はそう言って、そっと手を差し出した。
その指先に触れた瞬間、胸の奥に、言葉にならない安心感が広がる。
――帰ってきた。
なぜか、そう思った。
石畳の先には、無数の灯りが揺れている。
まるで、ずっと前から、私を待っていたみたいに。
「ここは、名古宵市」
彼女は、静かに微笑んだ。
「あなたの心が、還る場所」
その言葉と同時に、夜風が、私たちの間をすり抜けていった。
遠くで、鈴の音が鳴る。
――この出会いが、
私の世界を、そっと変えていくことになるなんて、
このときの私は、まだ知らなかった。




