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不快と感じる表現等ありましたら、読むのをやめてください。
戦いとは永遠に続いてきた歴史であり、娯楽である。
ー始まりのコロッセオから現代に至るまで、人間は心昂る争いを望んでいる!」
「今夜ここに集いし闘士達は、栄光のためどんな死闘を繰り広げるのか!」
「実況は私前田圭吾と、解説は元、森の大海原と呼ばれたこの男!熊本敦弘さんです!」
「よろしくお願いします」
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「始まったよシュウ」
その声を聞いて青年が練習をやめ、声の主の隣に腰掛ける。
薄暗い部屋に、テレビの光りがチカチカとうつる。
中継のカメラはやたらと構図を変えてコロシアムを映している。
この部屋は窓がないため気づかなかったが外は雨が降っているらしい。
青白い光がソファーや2人の肌に映っては消える。
(まだ始まってないじゃないか)
シュウと呼ばれた青年は思う。けれどもうすぐ始まりそうで練習に戻るのもおかしいだろう。
「ウルさんは今日の予選、誰が勝つと思いますか?」
シュウは太腿に肘をつき顎を手に預け、リモコンの音量を2つ下げながら暇つぶしに問う。そしてリモコンをソファー手前のテーブルに置く。
やたらと選手紹介をしている実況を聞いてシュウは、もうちょっと練習すればよかったと心の中で思う。
ウルと呼ばれた男が長い脚を組み直す。
「普通ならベテラン達だ。」
「普通なら?」
「時々見たこともない選手がポンと勝ち上がって来ることがあるだろ?」
ウルリヒはリモコンを取り音量を2つ上げ、そのリモコンをウルリヒが座っている左側の肘掛けに置く。
シュウは何も言わない。この続きを促す無言に慣れているウルリヒは言葉を続ける。
「期待の新人は隠されて特訓してるんだよ。そしてバーンと出ていい所まで行くと一気にファンがつく。人気勝負の面もあるから、最初から華やかにするんだろうね。でもたいてい消えるよ、そこから勝ち続けれるのは一握りだから」
「でも本当にいきなり出て来る人もいますよね」
「そう、だから今日も僕たちは期待して予選から観てるんだろうね」
中継が昨日のハイライトに変わるとシュウは先程の体制をやめソファに背を付け、足を伸ばす。
ウルリヒはソファーの背もたれの上に片腕を伸ばして置く。
夜空が映ると暗い画面に、並んで座っている2人が反射する。
外人と日本人、成年と未成年。秀才と生意気な青年。はたから見れば不思議な関係だろう、とウルリヒは思う。
兄弟でもなんでもない、一回り年の離れた男2人が毎週ここでテレビを見るなんて、人から色々言われそうだ。だから2人とも誰にも言っていない、不思議な関係。
ハイライトが終わるとまた実況と解説が話し始める。
どうやらdボタンでゲームに参加して、抽選で選手と握手しよう!らしい。
いつもは中盤で挟むのに、何かトラブルでもあったのだろうか、試合は一向に始まらない。
「あ、ウルリヒ選手とも握手出来るんですね、「他人と触れ合うなんて気持ち悪いね」とか言いそうなのに」
少し驚いたシュウはテレビに指を指しながら言う。
「本戦後にちょっとするだけだよ、負けた時気まずいけど。君より何百倍大人だからね」
「ウルさん俺子供なのでゲームしたいです、リモコン取ってください」
リモコンを受け取ったシュウは音量を2つ下げた。
一応ボーイズラブとつけましたが、どうなるかは分かりません。