02.原宿の乱 (8)日本最強の[光]
異空間。無間地獄を模した奈落の穴の途中、蒼氷の床が張られた部分にて。[蒼氷]リヴァはひっくり返った虫けらを見るような冷酷な目つきで[地獄]闇良を見下ろし、蒼氷剣の切っ先を喉仏に向け、呟いた。
「"蒼氷滞斬"」
その瞬間だった。地獄を模した異空間{に[光]永遠乃が現れる。なぜなら永遠乃は最強なのだから}。突如現実改変により現れた[光]永遠乃は、こつんと蒼氷剣を拳で叩くようにして吹き飛ばし、殺気立った[蒼氷]リヴァと地面に倒れ伏す[地獄]闇良のあいだに割って入り、彼の方へ振り返らないまま、優しく声を掛けた。
「よく頑張ったね、闇良龍真くん」
「………あなたは!?」
「永遠乃流軌ッ………!!!どうしてここにっ……!!」
「私は白兵・環境・論理すべての魔術が使える鼎魔術師だからね。ここへ来ることなど造作もないよ」
ぱんぱんと手を叩き合わせて戦闘突入前のルーティーンを終え、[光]永遠乃は自身の中指を親指でぐぐぐと押さえ、光の速さで弾き出した。瞬間、空気が弾丸の如く押し出され、ほんの刹那で[蒼氷]リヴァの肩口を貫き、血潮が溢れる間も与えずに焼き切った。
「言っておくけど、私と君じゃ戦いにならないからね」
「ぐあ……ッ!?違うッ、俺は京位だぞっ!!聖魔だぞおおおおおッ!!!」
「そっかあ……一発当てれば[蒼氷]の力で永久停止させられるし、希望を捨てたりしないか」
[蒼氷]リヴァも、蒼氷剣を再び生成し、鬼気迫る表情で[光]永遠乃に斬りかかる。芸術的なまでの居合斬り。ほぼノータイムで最高速度に到達するほどの熟練したその一閃を、[光]永遠乃は不敵に微笑みながら見ていた。
「ま、君じゃ無理だけど」
[光]永遠乃の姿が消え、[蒼氷]リヴァの背後に移る。剣閃のために最適化された身体は、背後からの攻撃をなんら警戒しておらず、がら空きの背中に[光]永遠乃は手を添えると、[蒼氷]リヴァの全身に高圧電流が走り、彼は絶叫しながら痙攣し、ばたりと倒れた。
「今、何を………?」
「ああ、超高圧電流を流しただけだよ」
「永遠乃、流軌ぃ………!!!」
全身をガクガクと震わせながらも、恨めし気な表情で[光]永遠乃を睨む[蒼氷]リヴァは、立ち上がろうとしたところで頭を踏み付けられる。そして[光]永遠乃の靴裏でぐりぐりと押されるようにして蒼氷の地面に額を擦り付けさせられ、惨めにその顔面を濡らした。
「私と君はどちらも京位。だけど、一般人の80京倍強いだけの君と、2000京倍強い私では格が違うんだよ。そもそも私光速で動けるから、君の攻撃は一切当たらない。申し訳ないけど、君が勝つ可能性はないよ」
「ぐ、ぐごがッ………!!!」
頭を踏み付けられて動きを制限されていた[蒼氷]リヴァは、地面としていた蒼氷を一気に溶かした。[光]永遠乃は片眉を吊り上げると、[地獄]闇良の方へ下がりながら自然落下に身を任せ、[地獄]闇良は状況を理解できないまま無様に落下し始めた。
「愚かにも聖軍に叛逆するッ!!!、凡人に毛が生えた程度のぉッ!!!!救いようのない愚者があああああああああッ!!!!」
「あはは。久しぶりに遊ぼうか」
「(巻き込まれないようにしなくちゃ………!!)」
[蒼氷]リヴァが、無間地獄の壁面を蹴って一気に肉薄する。抜刀のモーションと同時に蒼氷剣を生成し、[光]永遠乃の眼前へと一気に振り抜く。[光]永遠乃は背を反らすように回避しながら光速移動し、光を纏う聖剣を生成して背中を斬り上げる。
筋力、敏捷性、反射神経、分析力、判断力、戦略構築力。それら全てにおいて凌駕する[光]永遠乃は、何よりもその圧倒的な速度によって、[蒼氷]リヴァを超越していた。
「ぐはッ………!!!」
「悪戯したんだから、お仕置きを受けなきゃね?」
宙を舞った鮮血の水玉模様を突っ切るようにして、[光]永遠乃が飛ぶ。空中でバランスを崩した[蒼氷]リヴァは、半ば破れかぶれながらもすぐさま反転し、蒼氷剣でガードする。
二者が衝突すると同時に、聖剣と蒼氷剣が鍔迫り合いを開始し、爆ぜ暴れる衝撃波をを巻き起こしながらギリギリと火花を散らす。極大のエネルギーのぶつかり合いは一瞬均衡状態をつくったが、しかし、一段、また一段と、[光]永遠乃の握る聖剣が圧倒し、二者の身体は轟音とともに墜落速度のギアを上げていく。
「あはは、これ無限に落ち続けるんじゃ埒が明かないね。闇良くん、無間地獄を終わらせてくれるかい?」
「………ッ!!!………ッ!!!!」
「はいっ!!!閉じます!!!」
そして、無間地獄に終焉が訪れる。突如として現れた地面に[蒼氷]リヴァは流星のごとく墜落し、クレーターを形成しながらめり込んだ。[光]永遠乃は服についた埃を払いながらふわりと着地し、聖剣を放るように投げ、[蒼氷]リヴァの胸元に深々と突き刺した。
「ってことで……ゲームオーバーだね、リヴァくん。遺言はあるかい?」
[蒼氷]リヴァは倒れ、胸に剣が突き刺さったまま吐血し、もはや観念したかに思えたがが………意を決したように両眼を見開き、[地獄]闇良の方角へ、左右の掌を構えた。
「ゴフッ………ぞ………"蒼氷一矢"ッ!!」
瞬間、煌めくような蒼い光が[蒼氷]リヴァの手の平のなかで弾け、鏃のように尖った蒼氷が飛び、吸いこまれるように、不格好に着地した[地獄]闇良の胸へと向かう。
「"光柱滅却"」
しかしソレは、[光]永遠乃により放たれた光の柱により何のことはなく滅却され、消滅した。
しかし、彼女の意識が"蒼氷一矢"に向いた瞬間。何者かの現実改変により{[蒼氷]リヴァは姿を消した}。
「リ、リヴァの姿が消えた!?」
一瞬の出来事に理解が追い付かず、[地獄]闇良は立ち上がって周囲を見渡す。[光]永遠乃は腕を組んで、先ほどまで[蒼氷]リヴァがいたところを見つめていた。
「……やられたね。"蒼氷一矢"で私の意識を反らした瞬間に、誰かがリヴァを"回収"したみたいだ。恐らくジョークマン以外にも撤退役の論理魔術師が居て、そいつがリヴァを転移させたのかな………」
「そ、そんな………!!」
「ね。これだから論理魔術師が多い勢力は面倒なんだよねぇ。この様子だとジョークマンも復活させられてるかもだし………正直、なんかなあって感じだよねぇ」
気味の悪い静寂が取り戻された無間地獄に、手を所在なさげに宙に浮かせたままの[地獄]闇良と、目を閉じて溜息をつく[光]永遠乃が、ただ二人そこにいた。
しかし、ぱんと柏手を打った[光]永遠乃は努めて明るい声を出して、[地獄]闇良へとゆっくりと歩み寄る。
「ま、億位の闇良くんが京位のリヴァを足止めできたってのは大金星だよ。例えるなら、君はゾウを足止めできたアリだ。マジで凄いから誇っていいよ。」
「えっ、あっ、ありがとうございます………」
「てか初めましてだね?公安第零課総統、永遠乃流軌です。よろしくね。」
「……あああっ!!そ、そうですね!!は、初めまして!!ご、御挨拶が遅れてすみませんっ!!僕、闇良……」
「龍真くんでしょ。超大手柄を挙げた大型新人のことくらい認知してるから安心して?」
慌てふためきバタバタと狼狽える[地獄]闇良に対し、[光]永遠乃は余裕げな笑顔でにこりと微笑みかけ、手を差し伸べる。[地獄]闇良はどこか子犬のような不安げな表情で、おずおずとその手を取り、ぎこちなく握手した。
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