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02.原宿の乱 (6)変形・蹴術 対 虚構  

永久凍土と化した原宿にて。

パニック状態の人々が逃げ惑い、凍死した遺体や破壊された建造物の残骸が散乱した、凍結している歩道を歩きながら、二人の人物が公安第零課員用バッジを口元に近付け、公安第零課本部と通信していた。



「大凱将人、現着したぞ」

藍羅あいらも同じくぅ~」


一人は、[変形]の兆位魔術師にして戦闘班班長、大凱将人。短く切り揃えられた黒髪と一片の光もない死んだ目が、彼という人物像を分かりやすく伝えている。身長は185cm以上、戦闘服の上からトレンチコートを羽織った大柄な男は、のしのしと歩いていた。


もう一人は、[蹴術けじゅつ]の億位魔術師にして戦闘班員、藍羅咲。吊り目とギザギザの歯が特徴的な女子高生で、コンパクトショートヘアの茶髪がサラサラと風に揺れるさまは、彼女のスポーツ少女らしい活発さを容易に想像させる。

オレンジを主軸にライトブルーのラインが何本も入った、ぴっちりと張りつく全身タイツのうえから装甲を嵌め込んだような戦闘服を身に纏い、彼女は大凱の左隣を歩いていた。



『現着了解しました。日向さん・沙美誰さんから、闇良さんが[蒼氷]リヴァと戦闘中との連絡が入っています。お二人は闇良龍真さんの救出および永遠乃さんの到着までの時間稼ぎをお願いいたします』

「はーい!確か、永遠乃さんは永遠乃さんで霞が関で防衛戦してるんだよねー。絶対向こうが囮でこっちが本命だよねー、大凱さん」

「(黒炎絡みの話は緘口令(かんこうれい)が敷かれているし、藍羅には伝わってないはずだが……流石の勘の良さだな)さあな。敵に聞かねば分からんだろう」



この時、公安第零課最高戦力の永遠乃流軌は、千代田区・霞が関にいた。用件は内閣総理大臣との会談だったが、偶然にも(・・・・)多数の魔物たちが襲来。永遠乃は原宿へ急行したいところだったが、政府からのこの上なく強い要請(・・・・・・・・・)を受け、霞が関の安全を確保するまでその場を動けなくなってしまったのだ。



「しかし、原宿全体を氷漬けにするとは……とんでもない魔術だな」

「ねえ大凱パパ、こんな魔術使う相手と戦って勝てる気がしないんだけどさあ、もしかして私たち今日死ぬの?」

「パパって呼ぶな。怪しい関係に見えるだろうが。……闇良を助けて時間稼ぐくらいなら出来るだろ、きっと。万が一のときは俺が死んでも助けてやるから安心しろ。お前と闇良は逃がしてやる」

「えー死なないでよ!!大凱パパが死んだら生きがいの七割無くなっちゃうよ!!」

「それはお前の問題だから知らん」


[蹴術]藍羅が[変形]大凱の左腕に抱き着こうとして、さっと避けられる。[変形]大凱は零バッジの魔素レーダー機能を使用し、辺り一帯の魔素反応を調べたが、[地獄]闇良、[蒼氷]リヴァらしき魔素反応は存在せず、首を捻った。



「闇良もリヴァもいないってことは……既に連れ去られたか、別の場所で戦ってるか、どちらも死んだか………だな」

「なんにせよ別の場所で戦ってる説を信じて行動するしかないよねー。連れ去られ済パターンと相討ちパターンはもうどうしようもないし」


[変形]大凱が魔素レーダーを使用しながら辺りを見渡し、[蹴術]藍羅がそれに追従しながら周囲への警戒を怠らずに歩んでいた、その最中のことだった。


二人の背後に、{[虚構]ジョークマンが現れた}。



「えっ!?」

「構えろ、敵襲だ!!」



この世界において、戦闘魔術は三種類に大別される。魔術師本人が白兵戦闘を行う、白兵魔術。魔術師が周囲の環境を変化させて戦う、環境魔術。そして、魔術師が現実改変して戦う、論理魔術である。

ピエロメイクに奇抜なスーツを着た男、[虚構]ジョークマンは、その論理魔術によって突如彼らの背後に登場したのである。



「ストァーップ!!!初対面の相手に突然敵意剥き出しなんてっ!!もう少し話し合いましょうよッ!!」

「いいや、敵襲だ。お前は聖軍上級幹部にして兆位戦闘魔術師、[虚構]の魔術師ジョークマンだな?」

「アーーー!!!名乗りたかったのに勝手に名乗られたっ!!折角自慢の名乗り口上考えてきたのにぃ…………はいはいそーですよぅ、ワタシが[虚構]のジョークマンですよぅ」

「はあ!?こいつも格上ってかビッグネームじゃん!!」


[変形]大凱はトレンチコートを脱ぎ捨て、両の拳を固く握り、ファイティングポーズをとる。[蹴術]藍羅は半身になって高頻度でステップを踏み、テコンドーの構えを取る。



「藍羅、分かってるな?敵は論理魔術師。細かい現実改変を繰り返して翻弄してくる。」

「てか、あたし論理魔術師と戦ったことないんだけどさ!!論理魔術師って『相手が死ぬ』みたいな現実改変すれば無敵じゃない!?」

「いや。相手が死ぬとか戦いに勝利するとか、現実改変の幅が大きすぎるものは駄目だ。超格下の相手なら別だけどな。相手が躓くとか攻撃してなかったことにするとか、そのレベルの小さな現実改変を積み重ねていくのが定石だ」

「そう、こんな風にねっ!!!」


[虚構]ジョークマンが叫んだ瞬間、彼は{二人の背後からナイフで斬りかかった}。現実改変により、突如二人の目の前から背後へと擬似的な瞬間移動を行った[虚構]ジョークマンに対し、[変形]大凱と[蹴術]藍羅は驚異的な反応速度で振り返り、外側へアクロバティックに空中側転して横薙ぎのナイフを回避した。



「行くぞ!!」


[変形]大凱は最もオーソドックスな"阿修羅形態"となり、左右側頭部に能面のような顔を生やし、追加で四つの腕を生やし、合計六本の腕に刀や槍や拳銃などの武具類を持って、[虚構]ジョークマンに一斉に斬りかかる。



「うんっ!!」


[蹴術]藍羅は両脚に魔素を充填し、循環させ、テコンドーの構えから反転して一気呵成にステップで距離を詰め、[虚構]ジョークマンの顔に達するほどの高さまで蹴り上げる。



「そうそうこれこれぇ!!最高の戦闘(ショータイム)といきましょうかねぇ!!」


[虚構]ジョークマンは左側から迫る[変形]大凱の猛撃と[蹴術]藍羅の蹴りを{華麗なイナバウアーで回避した}。そしてアメリカのカートゥーンのようにコミカルな動きで足をバタバタと動かし、地面を這いながら二本のナイフで二人の足首を抉ろうと宙を掻き混ぜるように両手で大きく弧を描いた。



「よっ、と」

「はぁっ!!」


二人とも大縄跳びの要領で大きくジャンプしながら回避し、[変形]大凱は六本の腕の先を鋭利な刀のように変形させ、[虚構]ジョークマンに突き立て{ようとするが命中せず}、[蹴術]藍羅はサッカーのシュートの要領で思いきり回し蹴りをかました{が、[虚構]ジョークマンの手の甲で受け流された}。





「良いですねぇっ!!もぉっとブチ上げていきますよぉ!!」


[虚構]ジョークマンは{二人の100m前方に居た。そして二者の目の前にはダイナマイトがバラ撒かれていた}。またもや擬似的瞬間移動し、突然爆発物を出現させられたのを見て、[蹴術]藍羅は目を見開いた。



「ダイナマイト!?小さな現実改変しかできないんじゃなかったの!?」

「おそらく近くに武器類を運んできたんだ!!何が出てくるか分からんぞ!!」

「サプラ~~イズ!!それでは、着、火っ!!!」


ダイナマイトが一斉に爆発するより先に、二者も動いた。[変形]大凱は"防衛形態"に移行し、両腕を広く変形させて大盾を創り出し、身の周りで固める。[蹴術]藍羅は思いきり地面を蹴って一瞬で疾走し、ダイナマイトから全速力で距離を取る。


そして鉱山で大地を吹き飛ばすようなダイナマイトたちは一斉に爆発し、激しく爆炎と黒煙を上げながら小さなキノコ雲を作った。爆風で永久凍土と化していた原宿の街は氷漬けにされたままピシリとヒビ割れ、ガラガラと崩れ落ち、爆心地付近は氷の砂漠のような様相を呈していた。




「んぅ~、街を破壊するレベルの大爆発、[変形]の方は無傷とはいかないでしょうねぇ………」

「どこ見てんのピエロおじさんっ!!!」


爆心地が崩壊していく景色を見物していた[虚構]ジョークマンに対し、最高速度で接近した[蹴術]藍羅がその脳天へ踵堕としを喰らわせ{ようとしたが、命中しなかった}。

にこりと微笑む[虚構]ジョークマンは、真っ白な手袋をつけた手でいざなうような形を作り、[蹴術]藍羅へと向けた。



「お兄さん、ね。てか速いねぇ、君」

「音速までなら出せるからね……!!てか、あんたなんか大凱パパと比べれば大したことないから!!」

「へえ~~?あの男は破れかぶれで防御したみたいだけど、あんな大爆発喰らって無事なわけないでしょ?情けないクソ雑魚ちゃん………」


[蹴術]藍羅が何十もの乱れ蹴りを繰り出す{も、それら全てが命中しない}なか、[虚構]ジョークマンは現実改変により全ての攻撃を無効化していく。ヒートアップし、どんどん加速する猛攻のやり取りのなか、二人の意識は先鋭化し、研ぎ澄まされ、外界の情報をどんどんシャットアウトしていった。



「俺が、何だって?」


だから、[変形]大凱がこれほどまで早く戦線復帰してくる可能性など、[虚構]ジョークマンの頭からは除外されていたのだった。[変形]大凱の手首の先が日本刀になり、[虚構]ジョークマンの首を{浅く切り裂いた}。



「…………ッ!!!」

「ようやく現実改変が追い付かなくなったなクソピエロ!!」


[変形]大凱は無傷だった。火傷一つない、いつもの姿で、100m移動した戦場に現れた。その事実を想定していた[蹴術]藍羅の攻撃はどんどん苛烈かつハイペースになり、その事実に頭が追い付かない[虚構]ジョークマンは完全にペースを崩され、現実改変はどんどん追い付かなくなっていった。



「なんでっ、あの爆発で無傷っ………!!!」

「さあな!!!"超高速形態"っ!!!」

「"音速(マッハ)"!!」


[変形]大凱は筋肉を凝縮した脚を四本生やし、ハイスピードでステップを踏みながら格闘技を中心に肉弾戦を仕掛けた。[蹴術]藍羅は右脚と右手を地面につけながら、左脚でマシンガンのように蹴り技を繰り出して多段ヒットさせた。

[虚構]ジョークマンはその猛攻が繰り出される最中{から、なんとか抜け出し}、バックステップを踏んで二人と距離を取った。



「くっは………思った以上にやばいねぇ公安第零課……」

「今のタイミングで逃げ帰らず距離を取るだけ……?妙だな………藍羅、警戒しろ」

「いや、攻め時でしょ!!こっから打開策とかないだろーし!!ピエロお、じ、さ、んっ!!」


颯爽と懐に飛び込む[蹴術]藍羅に呼応するように、[虚構]ジョークマンは大きく手を広げ、大気中の魔素をぐるぐると渦潮のように循環させ、天高らかに叫ぶ。



究極魔術(アルティマジカ)!!虚構之空間(びっくりハウス)!!!」

「うっわあ!?」

「言わんこっちゃない……」


瞬間、画像編集アプリなどでよく見られる透過色である白色と灰色のチェック柄が三者を包み、閉じた空間を形成する。まるで風船の中に閉じ込められたようになった[変形]大凱と[蹴術]藍羅は表情を曇らせ、半身になったまま背中合わせになって、にんまりと笑う[虚構]ジョークマンの方を見ながら、再び戦闘態勢を取った。



お読みいただきありがとうございます。

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