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02.原宿の乱 (5)凍てつく蒼氷

異空間。立方体の真っ白な部屋に、[蒼氷]リヴァは居た。家具の一つもないまっさらな部屋には、前後左右の四面に扉があり、それらは全て閉じた状態だった。



「……ここは、異空間か。"地獄拘引"ということは、地獄に無理やり引き摺りこむ魔術なのだろうが……ただの白い部屋だ。とても地獄には見えんが……」


[蒼氷]リヴァは蒼氷剣を携えながら、適当な扉を開ける。扉の先には、白い立方体の部屋が続いており、それは先ほどの部屋と寸分も違わず同じものだった。



「……まさか」


[蒼氷]リヴァが駆け抜けながら部屋の扉を斬っていく。何部屋走り抜けようと、何十部屋走り抜けようと、同じ白い部屋が出迎える。



「無限ループ型の環境魔術……この様子では天井の上も床の下も同じ部屋が続いているんだろう。知恵を絞ったな、闇良龍真」

『お褒め頂きありがとうございます、リヴァさん』


どこからか[地獄]闇良の声が聞こえてきたのを察知して、[蒼氷]リヴァが振り返る。しかし、そこに[地獄]闇良の姿はなかった。直接脳内に声が響き渡ってきたのだ。



「民間人への被害を失くせるうえ、俺を拘留して時間も稼げる。うまく考えたものだな、永遠乃を待って勝利が確定したとでも思っているのか?」

『まさか……!貴方のことだ、どうせ打開する力があるんでしょう?』

「ああ。"蒼氷滞斬"」


[蒼氷]リヴァは部屋に向けて蒼氷剣を抜き放った。ぴしり、と白い部屋に斜めの斬撃が走り、斬り痕から蒼色に発光する氷塊が生まれる。そして世界は一度ガクンと揺れて、[蒼氷]リヴァはゆっくりと蒼氷剣を鞘に納める。



『……はは。まさかこんなにも早く突破されるなんて』

「貴様も分かっているだろうが、この異空間を斬り、この異空間に付与された"無限に部屋を増殖し続ける魔術"を"永遠に停止"した。貴様はこの世界のなかで逃げ続けることで時間を稼ごうと思ったのだろうが、無駄だ。大したことない広さの空間のなかだ、すぐに見つかるぞ」


[蒼氷]リヴァが両手に魔素を漲らせ、そして、爆ぜさせた。戦艦の砲撃がごとく繰り出される超膨大な蒼氷の噴出。氷塊山を掌から生成しながら、それらを前後上下左右に向け、蒼氷の爆ぜるような奔流を、周囲全方位縦横無尽に撃ち放ち続ける。白い部屋の壁も天井も床もバキバキと音を立てて崩れていき、小さな小部屋の集合体は、どんどん大きな一つの部屋へと変わり果てていく。



「何もかもお見通しですね。逃げの一手ですら上回れないなんて………でも、まだまだここからですよ!!」


そして、[蒼氷]リヴァの直下十五部屋ほどの地点で、天井が崩壊するとともに[地獄]闇良が現れる。彼は自身の真上にいる[蒼氷]リヴァと目が合った瞬間に、思いきり炎を吹きかけた。[蒼氷]リヴァは眼下に広がる業炎の海を見て、両手をかざし、超膨大な氷塊を掌から生み出して対抗した。




「それで奇襲のつもりか!!闇良龍真!!」


当然の如く魔術強度で勝った蒼氷は、業炎の海を完全に鎮火したのち、パキと音を立てて割れた。[蒼氷]リヴァは飛び降り、蒼氷剣を携えていつでも[地獄]闇良を斬れるようにしながら、冷気の霧を突っ切るようにして真下へ急降下した。



「奇襲じゃなくて足止めですよ!!"無間地獄"っ!!」


冷気の霧を抜けた先は、下へ無限に続く奈落の穴だった。[蒼氷]リヴァは眼下に広がる巨大な円形の穴と、遥か下方にいる[地獄]闇良を見て、焦ったように張り叫ぶ。



「まさか!!永久に落下することで逃げ切るつもりか!!」

「その通り!!僕の方が先に落下し始めてるぶん、僕と貴方の距離は広がっていくばかりですよ!!」

「馬鹿なのか!?永久に落下し続ければ、失神するだけで済まず、空気抵抗だけで死ぬ可能性すら高いんだぞ!?死を恐れていないのか!?」

「痛いのも死ぬのも嫌ですよ!!でもそんな自分の感情なんか、仲間の安否に比べたら蚊ほども重要じゃないんですよ!!」


[蒼氷]リヴァも無間地獄へと飛び込むが、円形の壁面から骸骨の腕が何百本、何千本も生えてきたのを見て、顔を顰める。骨の腕は銃火器や刀剣類、催涙スプレーや神経ガス噴射装置を携えており、それらが一斉に[蒼氷]リヴァに牙を剥く。何万発もの弾丸、何百もの斬撃、霧の如く充満する毒素。[蒼氷]リヴァの表情に初めて動揺が走る。



「こんなもの………ッ!!!」

「いいや、効いてますね!?基礎魔術による身体強化にも限度がある!!蟻に一度噛まれただけでは何のダメージもない、だけど何万回も噛まれれば足の指が千切れる!!貴方の身体にダメージが蓄積しているのが見えますよ!!」

「黙れ………!!!下等生命体、路傍に転がるクソゴミ石があああああああっ!!!」


[蒼氷]リヴァの目が蒼く光り、これまでにないほどの超大規模で魔素が滾り爆ぜる。奈落の穴の円周上で一斉に蒼氷が凍結し、氷塊がドーナツ状に下へ下へと勢力を伸ばしていく。武装類を構えていた骨の腕たちも一瞬で氷結し、蒼き氷のなかで琥珀のように眠り、活動を停止した。



「まさか……無間地獄を凍結させて、蒼氷で地面を形成する気ですか!?」


無間地獄は上から下へとどんどん蒼き光とともに凍っていく。そのスピードは[地獄]闇良の落下スピードよりも速く、奈落の穴の壁面は恐るべきスピードで蒼氷でコーティングされ、永久凍土のように分厚い氷の層から冷気を漂わせていく。[地獄]闇良は炎を手足の裏から噴射して加速しようとするが、焼石に水。終いには[地獄]闇良の周囲壁面にまで蒼氷は迫り、追い抜き、彼の目の前で蒼氷が地面を形成した。



「ぐがッ!!」


[地獄]闇良は蒼氷の地面に叩きつけられ、墜落死した。[蒼氷]リヴァは蒼氷を蜘蛛の足のように延ばして壁面に何度も突き刺し、速度を減衰させながら落下することで無事に着地した。そして数秒後、カツ、カツという奇妙な音とともに[地獄]闇良の身体が再生成されると、[蒼氷]リヴァは彼の頭を踏み付け、首に蒼氷剣を宛がった。



「詰みだな。どうせ『異空間から脱出できないから捕まっても問題ない』とか考えていたんだろうが、俺の仲間には論理魔術師がいる。現実改変さえできれば異空間から脱出する方法などいくらでもある」

「は、はは………本当、敵わないですね………」

「貴様のような雑魚にしては手こずったがな。これで完全に終わりだ、今から貴様の存在そのものを永久に停止して仲間の救援を待つ。黒炎を使わなかったことを後悔しながら冷たき眠りを迎えるがいい」


蒼く冷たい地面のうえで、[地獄]闇良は万策尽きて瞑目する。首筋に当てられた冷ややかな鋭さを感じながら、ぎゅっと目を瞑り、その時を待つ。[蒼氷]リヴァはひっくり返った虫けらを見るような冷酷な目つきで彼を見下ろし、蒼氷剣の切っ先を喉仏に向け、呟いた。


「"蒼氷滞斬"」

お読みいただきありがとうございます。

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