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02.原宿の乱 (4)究極魔術



[蒼氷]リヴァが殺意を迸らせた瞬間、叫んだのは[重力]沙美誰だった。


加重時間遅滞(ディレーション)っ!!」


その刹那、[蒼氷]リヴァの動きが静止する。まるで時が止まったかのようにぴくりとも動かなくなった彼を見て、[地獄]闇良と[建築]日向は戦闘態勢のまま驚いた。



「琴音、なんだこれ……!?」

「[重力]の力の応用でこの人の速さを1万分の1にしたのっ!!だけど1分くらいしか保たない!!逃げながら作戦会議するよっ!!」

「え、い、今こいつ倒したら済む話じゃ………」

「こいつは聖軍上級幹部のなかでも最強格!!京位戦闘魔術師の[蒼氷]のリヴァだ!!動き止まってても攻撃通らねえよ!!」


原宿の街々は、永久凍土になっていた。一瞬にして氷結した建物は氷塊の山脈となっており、凍結した地面には氷漬けになって凍死した民間人たちが数多く固まっていた。三人はなるべく遠くへ逃げるべく[重力]沙美誰の力で低空飛行を続けるも、辺り一帯でパニックを起こしている民間人たちの雑踏を見て、苦しげな表情で作戦会議を続行した。



「京位魔術師なんて、永遠乃さんしか対抗できないだろう。とにかく永遠乃さんが来るまでの時間稼ぎをするしかない!!」


[建築]日向が発破を飛ばすと、意を決したような声色で、俯いていた[地獄]闇良が二人に語り掛けた。


「……敵の狙いは僕だ。僕が残って時間稼ぎをする。交渉でも戦闘でも……出来ることは全部やるよ」

「……分かった。人命第一だ、俺たちは民間人の保護と避難を行う」

「一人で抱え込まないでって言いたいところだけど……分かった。こうするしかないもんね」


短い会話ののち、三人は一斉に散開した。

[地獄]闇良は、[蒼氷]リヴァとの対話および戦闘に向けて、元の位置へ戻るために走り始めた。

[建築]日向は、これから起こる戦闘から原宿の民間人を守るべく、巨大な南極基地の壁を創造しながら走って回った。

[重力]沙美誰は、民間人を瞬間移動させて避難させるべく、低空飛行しながらブラックホールをかざして民間人たちを吸いこみながら高速移動し続けた。




そして、一分間が経過した。[蒼氷]リヴァの時間停滞が終了し、彼は再び動き出す。


「………なんだ?三人が消えた?………いや、氷塊が極僅かに溶けかかっている……俺が時間を止められていた?」


巨大氷柱の表面を撫でてそう呟く[蒼氷]リヴァのもとに、[地獄]闇良が駆け足で近付き、魔術で鉄刀を生成しながら大声を張り上げた。



「ぼ、僕はここですっ!![蒼氷]の魔術師、リヴァ!!」

「………一人か。なるほど、三人で作戦会議をしてお前だけ戻ってきたのだな」


緊張でカタカタと手が震えるのを無理やり抑えながら、刀を下段に構えつつ、[地獄]闇良はじりじりと近付いていく。[蒼氷]リヴァはその動作に対して全くの無反応のまま、何かを考え込むように顎に手を当てていた。



「……お前、なぜ黒炎を使わなかった」

「え?どういう………」

「黒炎は、問答無用で対象を"削除"する必殺の力。まさか、そんなことも知らなかったのか?」

「知りませんよ」


[蒼氷]リヴァの顔が、不快と侮蔑に歪んだ。



「貴様……それでも黒炎の担い手か……!!強大なる力を持ったにも関わらず、無知なまま振るいもしないとは!!」

「そ、そんなの………強い力を持ったからといって無闇に振るうのは間違っていると思いますけど………!?」


[地獄]闇良の顔が、疑問と軽蔑に沈んだ。



「弱者根性極まれりだな……!!強大な力を持ったならば、己の欲望のために何の躊躇もなく力を振るい、他者を侵害して恵みを享受する!!それが強者の美学だろうがっ!!」

「なぜ!?みんな仲良しで一緒に幸せになるのがいいに決まってる!!あなたは何様のつもりなんですか!?」

「俺は聖魔だっ!!そして京位魔術師!!すなわち圧倒的強者っ!!弱者を虐げる力と権利を持った、存在レベルで貴様ら劣等生命体のゴミ人間と格が違う頂点捕食者だああああああっ!!!」


その言葉が、開戦の火蓋を切った。

[蒼氷]リヴァの瞳が蒼く光り、咆哮がごとき宣言とともに世界が氷結していく。明治通りと竹下通りの交差点が爆心地となり、幾層にも重なるようにして原宿に永久凍土が形成され、超巨大な氷塊が尖った山のように突き出して建物群たちが崩壊していく。



「死ね!!!」


[蒼氷]リヴァが手をかざした瞬間、桁違いの魔素が滾り爆ぜる。まるで原宿が南極大陸と化したかのように、超巨大な氷塊が山のように生まれ出で、何十も地面から競り出す。吹雪が吹き荒れ、霜と冷気と氷の結晶が大気全体に充満する。まるで山頂のように尖った氷塊がゴゴゴと音を立てながら[地獄]闇良へと迫る。



「大焦熱地獄っ!!」


[地獄]闇良も対抗するように環境魔術を展開した。炎熱滾る大焦熱地獄を顕現させ、永久凍土を焼け野原へと変貌させようとした。だが、寒冷の大地に対しては全く歯が立たず、魔術は簡単に受け止められ、まるで不発に終わったかのように、ただ氷塊の山々の頂点を少し溶かしただけに終わった。



「じ、実力差がありすぎる……!!」

「貴様如きの魔術で敵うと思ったか!!」


慌てて後方へ駆けだす[地獄]闇良に、[蒼氷]リヴァは氷塊の山頂を差し向ける。地殻変動がごとき激震と轟音とともに、幾つもの氷塊山が競り出し、[地獄]闇良の方へと向かっていく。



「ほ、炎でブーストっ………!!」

「させるかっ!!」


足裏から火炎を噴射して飛ぼうとした[地獄]闇良に、氷塊山から駆け出して大きく跳躍した[蒼氷]リヴァが迫る。空中で[蒼氷]リヴァが蒼く光る氷を生成すると、西洋剣の形に成形し、がしりと握って、思いきり振るった。



「"蒼氷滞斬"っ!!」

「っぐ!?」


蒼き氷が[地獄]闇良の太腿を切り裂くと、傷口から蒼氷がゆっくりと生え、ガチガチと凍結するように彼の右脚を蝕んでいった。脚を思うように動かせなくなった[地獄]闇良は墜落し、右脚を引き摺りながら這いつくばった。




「俺の蒼氷は、"対象を完全に停止させる"力を持つ。今は貴様の脚を完全に停止させた。貴様の脚は原子レベルで凍結され、一切状態が変わることはない」

「そ、そんなチートじみた技が……!!」

「さあ、俺と共に大阪魔王城へ来てもらおうか。そして知っていることを洗いざらい吐いてもらったあと、聖王のもとで天下統一のため働いてもらおう」


その瞬間だった。[蒼氷]リヴァが"蒼氷滞斬"をもう一度放ち、[地獄]闇良の動きを完全に封じようとした瞬間。彼は自らの首に刀を宛がい、撥ね飛ばした。



「………は?」


首から上を失った[地獄]闇良の身体が、がくりと倒れ伏す。突然の自殺に動揺が隠せない[蒼氷]リヴァは、その死体の近くに駆け寄り、当然ながら心臓の動きがどんどん弱まっていくことを確認する。



「なぜ………!?なんのつもりで死んだ、闇良龍真!!」


理解不能といった表情で狼狽える[蒼氷]リヴァが、蒼氷剣を[地獄]闇良の遺体に向けるが、当然答えない。そして彼の死から10秒ほど経ったあと、カツ、カツという音が鳴り響く。



「そりゃあ、戦況をリセットするためですよ」


[蒼氷]リヴァが刮目する。目の前の"無"から、内臓が、骨格が、筋肉が生まれ、徐々に人の形となっていく。人体模型のようにグロテスクな容姿に皮膚が生え、元の[地獄]闇良龍真へと変貌していく。



「貴様、不死者か………!!」

「どうせ億位vs京位、(はな)から勝てるとは思ってません!!一か八かの大博打、行きますよっ………!!」


永久凍土と化した原宿に、再び魔素が溢れ出していく。暴風が吹き荒れ、氷塊山の間を隙間風のように吹き(すさ)び、氷塊や看板や窓ガラスの残骸を吹き飛ばしてぐるぐると回る。




究極魔術(アルティマジカ)っ!!"地獄拘引"っ!!」



兆位魔術師ですら使えないものも多い究極魔術(アルティマジカ)の、土壇場での初発動。ほとんど自殺行為にも近い賭博(ギャンブル)だったが、卓越した魔素量や"対象を地獄に堕とす"という現象への解像度の高さや[地獄]の魔術との解釈的な近さから、奇跡的に究極魔術(アルティマジカ)の発動に成功した。


[地獄]闇良が叫んだ刹那、ギュルルとビデオテープが巻かれるような音とともに[蒼氷]リヴァと彼は異空間に強制的に吸い込まれ、原宿にはただ凍土のみが残った。


お読みいただきありがとうございます。

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