夢
あれ••••••俺、今死んだよな。学校の体育館で。
あ、俺の死体が床に倒れてる。でも皆が、注目してるのは"俺だったもの"ではなく、"俺"だ。
不思議と、皆は俺のことが見えているようだった。
「なあ、俺死んじゃったっぽいんだよね。そこに死体あるじゃん」
「あー、でもお前今ここに居るし。俺もお前のこと見えるし、会話も出来るよな」
「何でだろうな。まぁいいか••••••あれ?」
急に皆が俺から視線を逸らす。あんなに注目されていたのに、一瞬で、全員が。今更だけど、そもそもこいつらは誰だ? 初めて会った奴らだ。でも、何故か初対面って感じがしないんだ。
「おーい、おーい!」
反応がない。まるでさっきまで見えてた俺の姿、聞こえてた声。その全てが見えなく、聞こえなくなってしまったかのように。
ふと、"俺だったもの"。に目をやると、無くなっている。先程まで倒れていたはずの肉体は消滅した。今思えば死因はなんだ? 分からない。何も。
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急に場面が切り替わった。ここは、外? さっきの体育館とは別の場所に何故か移動した。でも、見覚えがない。何処なんだここは。
「ちょっと」
「おーい」
「見えてる〜?」
街行く人に手当り次第声をかけるが、誰も反応をしない。誰も、俺の事を見えてないし声も聞こえてない。
「よう!」
と、明るく声をかけたが、俺が知らない子だった。でも、先程同様、初対面って感じがしない。知らないはずなのに、知っている人な気がする。
そのメガネをかけ、制服を身につけた女の子は、中学生、高校生くらいだろうか。
「ん? なに? ○○」
え••••••。今俺の名前を。でも、なんて言ったんだ。なんて言ったか聞き取れなかったけど、何故か俺の名前を呼んだ。俺の声に反応した。それだけは分かる。この子は間違いなく俺を認識している。
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また場所が変わった、今度は彼女も一緒に。そしてこの店は、また知らないところだ。こんな店、見た事がない。でも、何故か既視感がある。少し気持ち悪さすら感じる。
「なあ、俺の事見えてる?」
「もちろん。見えてるよ。他の人は見えてないらしいけど」
「俺、死んだらしいんだよね」
「知ってるよ」
ここから先の会話は、全く記憶がない。でも、分かったことは、この名前すら分からない不思議な女の子。彼女以外に、俺は認識が不可能だって事だった。
お店で買い物中の彼女に俺は着いて回り、会話を続けていたけど、内容は何も分からない。でも、彼女は周りの人からすれば、見えない何かと会話する頭のおかしい奴に見えたと思う。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
また場面が切り替わる。ここは、教室? 気づいたら、何故か制服を着て、机の前で着席していた。何故か彼女も俺の左斜め後ろの席に居た。
窓の方を見てボーっとしている彼女を見ていると、視線に気づいた彼女がニコッと可愛らしい笑顔見せ、手を振ってくれた。正直惚れかけた。相変わらず、彼女以外俺には気づいてないらしい。
改めて周りを見ると、知らない教室だけど、周りに居るのは••••••みんな、中学校の時の同級生たち。見覚えがある。
ガラガラ
そんな音と共に教室のドアが開くと、ジャージ姿にスリッパ、そしてガタイもが良くガッシリしている、例えてみるとゴリラ。いかにも体育系、というような教師が入って来た。
「○○ー!!! お前生きていたのか!」
こちらの方を見た瞬間、走って来て、急に肩を掴まれ、そんな事を言われた。正直呆然とした。
その瞬間、クラス中の視線が集まる。この教師も俺のことが見えるらしい。
そして、生きていたのか。というセリフ。俺が死んだことを知っている。
「あ、○○だ」
「ほんとだ。○○だ」
クラス中からそんな声が聞こえる。何故か急に皆が俺を認識できるようになったらしい。よく分からない。全て、何もかも。
こんなに視線を集め、騒がれると普通は不快なものだが、何故か今回だけは、ホッとした。むしろ嬉しかった。
そしてその瞬間、俺は目を覚まし、現世に戻ってきた。
結局何がなんだがサッパリではあるが。
最初の死体が無くなった時点で、俺という存在が最初から無かった事にされた。それによって、最初から無かったから死体もないし、俺も認識できないし、皆の記憶からも俺という存在は無くなる。
じゃあ、何故あの女の子と教師だけは俺を認識できたのか。それは俺にも分からない。
そして、最後、なぜ急に皆が俺の事を認識できたのか。
多分、教師が俺の名前を呼び、生きていたのか。と発言した事で、そもそも俺が存在すること、俺が死んだ事、そしてそれを皆が認識した事で、俺という1つの概念が生まれ、それによって、"俺"という存在が証明され、あったことにされたことで、皆が認識できるようになった。
と考える。
これは、実際に作者が見た夢の話である。