ゴミ拾い
夜勤を終え、軽くメシを食った俺は、いつものようにコンビニに寄って今日の晩飯を買い、アパートに向かった。
帰ったらすぐに風呂に入って、カーテンを閉めて夕方まで寝て、その後レンタルでも行くかな。明日は休みだ、ちょっと多めに借りてこよう…そんな事を思いながら薬屋の角を曲がると、何やら道路が散らかっている。
どうやら、うちのアパートのゴミ出し場所をカラスが荒らしたようだ。雑誌のゴミに弁当箱、よくわからない布にレジ袋…はっきり言って、見苦しいことこの上ない。ここのアパートの住人はこんな低俗な雑誌を読んでいるのか、こんなハデな下着をはいているのか、半額弁当ばかり食べて貧乏くさい…そんな事を思われそうで気が滅入る。
今日は風があるから、このままでは更に散らかってしまいそうだ。
足でちょいちょいとゴミをあつめ、ザバッとつかんで、積み重なっているもえるゴミ袋の奥につっこんでやった。
「あら!ありがとうねぇ、助かりました!」
声をかけられたので振り向くと、近所に住んでいるらしいオバさんがほうきとちり取りを持って立っていた。
「いえ…」
頭を軽く下げ、アパートの階段をのぼった。
次の週、夜勤を終え、軽くメシを食った俺は、いつものようにコンビニに寄って今日の晩飯を買い、傘をさしながらアパートに向かった。
帰ったらすぐに風呂に入って、カーテンを閉めて夕方まで寝て、その後レンタルを返しに行くかな。その頃には雨も止んでいるだろう、明日は休みだし、今度はマンガでも借りてこよう…そんな事を思いながら薬屋の角を曲がると、またしても道路が散らかっている。
どうやら、うちのアパートのゴミ出し場所をカラスがエサ場と認識したようだ。箱ゴミに野菜クズ、よくわからない食べ残しに洗剤のケース…はっきり言って、汚らしいことこの上ない。ここのアパートの住人はこんなもったいない事をしているのか、ごみの分別もできないのか、ゲテモノ食いばかり住んでいる…そんな事を思われそうでイライラする。
まだ雨はしばらく続きそうだし、このままでは更に散らかってしまいそうだ。
足でちょいちょいとゴミをあつめ、ザバッとつかんで、積み重なっているもえるゴミ袋の奥につっこんでやった。
「あら!いつもありがとうねぇ、助かりました!」
声をかけられたので振り向くと、カッパを着込んだオバさんがほうきとちり取りを持って立っていた。
「いえ…」
頭を軽く下げ、アパートの階段をのぼった。
夜勤を終え、軽くメシを食った俺は、いつものようにコンビニに寄って今日の晩飯を買い、アパートに向かった。
帰ったらすぐに風呂に入って、カーテンを閉めて夕方まで寝て、その後買い物にでも行くかな。明日は休みだ、新しいゲームでも買おうか…そんな事を思いながら薬屋の角を曲がると、今日もド派手に道路が散らかっている。
電線の上からうちのアパートのゴミ出し場所を見下ろすカラス軍団が、俺を監視している。あらゆるゴミ袋が漁られて、弁当箱、マンガ雑誌に紙袋、スナック菓子のゴミ、ハンバーガーのかすに破れたクッション…はっきり言って、大惨事だ。ここのアパートの住人はこんな状態なのに気にもしないのか、お菓子ばかり食べている幼稚な人が多いんだな、ひと昔前のキャラクタグッズはこのアパートのキモヲタのおっさんが捨てたんだな…そんな事を思われそうで忌々しい。
今日は風もないし晴れてはいるが、このままでは更に荒らされて大変な事になるに違いない。
足でわさわさとゴミをあつめ、ザバッとつかんで、積み重なっているもえるゴミ袋の奥につっこむも、ぜんぜん片付かない。
「ありがとうねぇ!!すごいことになっちゃって困ってたの!」
声をかけられたので振り向くと、近所に住んでいるらしいオバさんがほうきとちり取りとゴミ袋を持って立っていた。
「あ、袋…助かります、いいですか?」
俺はオバさんと一緒にゴミを片付けた。
散らばるゴミを袋に押し込みながらポツポツ話をしたところ、今週中にゴミ捨て場は改装されるという情報を得た。なんでも、この辺り一帯がカラスに目をつけられたので、ガードが設けられるのだそうだ。
「これでゴミ捨て場も安泰よ。いつもきれいにしてくれてありがとうございました!あのね、いつも感心してたの!なかなかできることじゃないわ、誰かのゴミを拾って片付けるなんて!あなた本当にいい人ねぇ!」
今どき見ない好青年だねだとか。掃除の仕方が丁寧だとか。綺麗好きなんだねだとか。こういう人に娘の旦那様になって欲しいだとか。
さんざんオバさんに持ち上げられたあと、いつものようにアパートの階段をのぼる。
階段の途中で振り返ると、オバさんがニコニコしながら手を振った。
……どうやら、本格的に気に入られてしまったらしい。
どちらかというと人見知りで、友達も少なくて…コミュニティが非常に貧弱ということもあり、どう対応して良いものか困惑する。
……もしかしたら、オバさんが娘さんを紹介しようと画策するかもしれない。
……ひょっとしたら、オバさんが部屋を訪ねて来るかもしれない。
考えすぎかも、しれない。
でも、万が一のことがあるよな……。
………。
そうだな、ゴミ捨て場にガードがついたら、カラスに荒らされたり、中身を見られる心配はなくなるし……。
俺は、次の週、部屋中にみっちり詰まっているゴミ袋を……、すべて出すことを決めたのだった。