目覚めと止まったままの関係
ん..........まぶし。
あれ?もう夕方??..........にしては外暗いけど.....................って部屋の電気がついただけか。
うわぁ、めっちゃ寝てたじゃん私。熱が下がったどうかは分からない。けど寝れてスッキリした。
「お?彩海おはよっ!!身体どんな感じ?」
「分からない」
「じゃあ確認するね」
いつも通りの方法で確認してくる。...............体温計普通にあるのになぁ。
「.......................まだ熱っぽいね。まだ下がってないっぽい」
「ん」
朔夢が言うんだから多分その通りなんだろうな。
「経験上、彩海の熱は明日も下がらないだろうから絶対に学校に来ないこと!分かった!?」
「了解」
学校に行かなくて済むのは嬉しいかな。暁黎さんに会わなくて済むならそれにこしたことはないから。
あの色を見るだけで吐き気がするんだから仕方ないよね。
「おかゆと雑炊とにゅう麺に味噌汁、野菜満点のスープにウインナー入りのポトフあるけどどれが良い?」
「...............待って。多くない?」
「彩海が寝てる間に全部作っといたよ。全部レンチンすればすぐ食べられるようにしてるから私がいない間もちゃんと食べること。スポドリもある程度買っといたし、リンゴも切っといたから自由にしてね」
..........................この子嫁力が高すぎない?たしかに時間はそれなりにあっただろうけど別に帰っといても大丈夫だったのに。
「で、何が良い?もちろん私の愛情はたっぷり入ってるから美味しいよ!!」
朔夢の料理の腕前は疑ってないから。後でお金払わないと。
「じゃあ雑炊もらって良い?」
「了解!!あっため直してくるからちょっと待ってて!」
パタパタと下に降りてく朔夢。この間にお金を.............。
カバンは.........あった。何円くらいしたんだろう?スポドリにリンゴ、そうめんは確実になかったしそれ以外も家にある食材って少なかったから.............とりあえず3000円くらい渡せば大丈夫かな?
皮肉なことにお金は口座にたくさんあるし、お金をだしてもらって食材を買って、料理をしてもらったんだからお金を払わないとね。
「お待たせー!.......って何起きてるの!?ベッドに寝たままになってなさい!!!」
入ってきたらと思ったらおもいっきり怒られた..........。ありがとね朔夢。
「食べる前にこれ」
多分足りるはずであろうお金を渡す。
「いらない!!私が好きでやったんだから!!!」
「そんなの関係ない。私しか食べないんだからお金は払わないといけない」
「彩海のためなんだから気にしないで!!」
「いや、気にするから」
無理やりお金を握らす。................この光景はなんか最低な光景にしか見えないけどこうでもしないと受け取ってもらえない。さすがに他人のお金で買って作られた料理をタダで食べるのには抵抗がある。それが朔夢ならよけいにね。
お金を握らす代わりにお盆も受け取ってローテーブルに置く。
朔夢の作るものはなんでも美味しいからちょっと楽しみ。
....................うん。美味しい。
野菜はトロトロになるまで煮込まれてるし、優しい味付けだから食べやすい。食べるのに丁度良い熱さでもあるからいっぱい食べられる。
それに、朔夢が作ってくれたからだろうけど心も身体も温かくなるような感じがする。
ごめんね朔夢。こんな私で。
本当の感情なんてもう滅多に出せることもなくなったし、話し方も冷たいものになったのに今でもこうやって私を気にかけてくれるのは朔夢だけだよ。
こんなこと面と向かっては言えないけどほんとにありがとう。
「どう?美味しい?変な味しない?」
「しない。私好みですごい食べやすい。ありがと朔夢」
「どういたしまして。それ食べて早く熱下げてよねー」
「それは難しい」
「そうだよねー」
ほんとこの熱は体調不良ってよりは精神的なやつで多分私の身体の防衛本能みたいなのが働いた結果だからいつ下がるかは分からない。でも1週間はこのままかな?
「そういえば今何時?」
「19時を少し過ぎたくらいかな?」
それって..........大体9時間くらいは寝てたってこと?さすがに寝すぎだろ私。
「帰らなくて大丈夫?」
「まだ大丈夫。お母さんには彩海の看病で遅くなるってもう伝えたから」
「そう」
でもさすがにもうそろそろ帰らなきゃ危ないよね?女子高生が夜道を歩くのは、ね?別に私は今さら失うものなんてないし、そもそも私の身体を見て逃げる人が多いんじゃない?
「朔夢?バスタオル取ってきてくれない?」
「なんで?」
「お風呂入りたい」
寝る前に身体を拭いてもらったけど寝てる間にまた汗かいてちょっと気持ち悪いから。
「ダメ!!!!!まだお風呂ははやい!!!」
「でも気持ち悪い」
「また私が拭いてあげるからまだ我慢!!!!本格的に風邪ひくよ!?!?!?」
朝も身体拭いてもらったのに今回もってのはさすがに迷惑かけすぎじゃない?
「迷惑かけるからやだ」
「迷惑なんかじゃない!!!このぐらいで迷惑なんて思わないで!!!!」
このくらいで?ってどういうことだろう??私なんか朔夢にしたっけ?
「このくらいってどういうこと?」
「うっ...........!」
言葉に詰まるなバカ。どうせ昔の私が~って話でしょ?聞かれたくない話なら言葉に出さないようにしないとね。
「どういうこと?」
あえてここは聞きにいくスタイルを貫くけどね。
「...........うーーーー!!」
うなるな。猫か。
「聞かれたくないこと?」
「ある意味では」
それもう答え言ってるよ?仕方ない。答えやすいように聞いてあげよう。
「じゃあ私を憐れんでるから?醜い姿になって、孤独になった私を憐れんでるの?」
これなら答えやすいでしょ?
「そんなことない!!!!別に私は彩海を憐れんでなんかない!!!!」
..........................?憐れんでないなら何で?
「じゃあ何で?」
「それは私は彩海の友達だから!!!」
意味わかんない。別に友達だからってここまでしないでしょ?
「普通の友達ならここまでしない」
「するよ!!!だって私にとって彩海は大切な友達なんだから!!!家族の次に好きなんだからこれぐらいは当たり前に決まってる!!」
そこは家族と同じくらい、とかって言ったほうが良いと思うけど.........。それでも私は十分嬉しいけどね。
「それに!彩海はいつだって私を見捨てなかった!!どれだけイジメられても、無視されても、話すのが下手でも、のろまでドジでも彩海だけは最後まで私の側にいてくれた!!!なら今度は私の番!何があっても彩海の側にいる!!昔彩海がしてくれたみたいに!!!!」
...................そんな昔のこと良く覚えてるね。
「彩海が迷ってるなら私が手を引っ張って道を教えてあげる!!誰かに傷つけられたら今度は私が背中で守ってあげる!!!寂しくなったら抱きしめてあげる!!悲しくなったら一緒に泣いてあげる!!嬉しかったら一緒に笑ってあげる!!全部全部彩海が私にしてくれたことなんだから!!!!!」
そんなたいしたことしてないよ。私は朔夢が好きだった。ただそれだけだよ。それだけの理由だったんだよ。
「だから私はこんなこと苦じゃない!!迷惑なんて思ってない!!むしろ嬉しく感じてるよ!!!」
そっか................自惚れた意見だけど多分朔夢も私と一緒の理由なんでしょ?なら今はそれでいいや。それが知れただけ私も嬉しい。
でも、きっと最後は絶対に朔夢を悲しませてしまう。
でも生きる意味も感じれない。
朔夢を悲しませないように死にたくない。でも根本的な私の願いは早く死にたい。
この矛盾した思いをどうすれば良いんだろう。全く分からない。
でも今は考えなくていっか。目の前のことだけを考えていよっと。
「................朔夢。身体拭くの、お願いしても良い?」
「もちろん!!ちょっと待っててね!!!!」
そういって慌ただしく降りていく朔夢。
ほんと朔夢は私にはもったいない友達だよ。
朔夢?私こそお礼を言わないといけないんだよ。ここまで生きてこれたのも朔夢がいたからだよ。朔夢がいたから私は大切なものを失わずにすんだ。
だからありがとう朔夢。