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熱気と止まったままの時間

side朔夢


「よいしょっと.................ほら彩海。家ついたよー。鍵を出してー」


「...........スカートのポケットの中に入ってるから勝手にとって」


いや、普通自分で取るでしょ?思いっきり私に太もも触らすけど良いのかそれで。


まぁでも私が取らないと始まらない。だって彩海は私が背負ってるんだから。


彩海は全然ご飯も食べないから細くて軽いんだよなー。だからちょっと身体の弱い私でもこうやって背負ってあげられる。ほんと私以上にご飯食べなくて、水も飲まなくて、運動しないのになんで体調を崩さないのかが私には不思議。


肉付きの少ない太ももをできるだけ触らないようにポケットの中から家の鍵を取り出す。ちなみに彩海はあれからも熱が上がり続けててもう39度を超したあたりくらいかな?背負ってる私の背中がものすっごく熱いからね。


ガチャリと鍵を開ける。


相も変わらず殺風景な家。まるであの日から時間が止まったかのようなほんとに必要最低限のもの以外何もない家。


それに防犯のためなのか女子高校生の一人暮らしってのを隠すためなのか彩海が暮らしてる家はワンルームの部屋じゃなくて、4人家族が住めるような広さの家。だから余計に寂しさを感じる。


この2階に彩海の部屋がある。


年頃の女子とは思えない部屋。ぬいぐるみもない。タンスも小さい。化粧台はあるけど必要最低限のメイク道具しかない。それに娯楽のものが一切ない。テレビも小説も漫画もゲームも何もない。


ほんとに生活してるのかが不安になるレベルで何もない。


とりあえず背負ってきた彩海はベッドに放り込む。もちろん優しくね。


それから一階に降りて電気ケトルに水を入れてお湯を沸かす。


ここの家には何回も来てるから何がどこにあるかも全部知ってる。だから滅多に使わない洗面器だってどこにあるかすぐに分かる。


たしか冷蔵庫に冷却シートと彩海の部屋の机の中に薬があったはず。着替えも全部上にあるから今はぬるま湯を作って、冷却シートとタオルを準備すれば良いかな?


.................よし完成。


彩海の部屋に戻るとぱっちり目を覚ました彩海がベッドに横になってた。さっきまでは私の背中で寝てたくせに。


「はーい。それじゃ制服脱いでー。汗ふかないと余計に熱上がるからねー」


「...........................ん」


ちなみにうちの学校の制服はセーラー服。夏の間は白で冬になると黒くなる。王道のザ・セーラー服ってよりかは現代風にアレンジされた可愛い制服。


長袖、半袖どっちも選べてだいたいの女子は長袖を選んでるけど彩海は半袖。


あの日に負った酷い火傷跡を隠すために暑くなるとハイネックのインナーを着るようになる。長袖だと長袖のインナーに長袖のセーラー服ってなってさすがに暑くて熱中症になる。


というか一回なったから無理やり私が変えさせて今のスタイルにした。


まぁこれが上半身だけならまだ良いんだろうけど脚にも酷い火傷跡があるからストッキングやタイツは必須。


体育の授業だって基本は見学が許されてる。


ほんと顔だけは奇跡的に火傷跡にならない程度の火傷だったからまだ救いなのかな??


身体の全身に生々しい火傷跡が残ってる。赤くなってるだけならまだマシ。しわしわになった部分だってある。皮膚が再生しないのかピンクの肉の部分だって見えてる所がある。


可哀そうだって思う。治ってほしいって思う。元はすっごい綺麗な色白な肌なのに.........。色白な肌だからこそ目立つこの火傷跡はほんとどうにかならないのかな?


触られても痛くないって言われてるけど、私は力を入れて拭けない。何かの拍子に悪化させたらどうしようって思ってしまう。


でも彩海がこうやって火傷跡を見せてくれてるってことは信頼されてるってこと。だから私はできるだけ彩海に言われた通りにする。


されるがままの彩海の身体を丁寧に拭いてく。終わった順から全部着替えさせていく。


さすがに下着は自分で着てもらったけどそれ以外は全部した。全部拭き終わって着替え終わらせれたらベッドに横にさせる。


目を閉じたのを確認したら一階に降りてさっき使ったぬるま湯を捨てて、コップに水を入れてまた上に上がる。


熱さましの薬を口にねじ込んで水を流しこむ。飲んだのを確認したら冷却シートをおでこに貼り付けていったんの私の仕事は終わり。


あとは彩海が寝るまで待つ。


これくらいはいつものことだから別に苦じゃない。むしろもっと頼ってほしい。彩海は絶対に独りにはさせないんだから。


あの日、大火事から全身に酷い火傷を負いながらも救い出された彩海を見た時からずっと思ってる。


それが8歳の頃から思ってること。


だから私は表ではバカ騒ぎをするキャラを作ってる。彩海はもう笑うことはなくなった。泣くこともなかった。嬉しそうな顔も悲しそうな顔もしなくなった。


だからせめて私だけは近くでバカ騒ぎして、愛想笑いでも良いから、呆れた表情をされても良いから感情を引き出そうとしてる。


無理やりでも良いから彩海には笑ってほしいから。体調を崩しやすい体質の私でもこれぐらいはできるから。


「はぁ..........やっぱり私ってダメだな。どうせ私がバカ騒ぎするようなキャラを演じてるのは分かってるんでしょ?本当は今でも引っ込み思案でいつも彩海の後ろについて歩いてた私だって分かってるんでしょ?でも私は止めないから」


どうせもう聞いてないからこれくらい漏らしても大丈夫でしょ?


.....................さて!気持ちを切り替えよう!!いつもの私にチェンジ!!!


じゃあ彩海が起きたらすぐ食べれるご飯を今のうちに色々作っときましょうか!!


おかゆに雑炊、うどんはゆでるだけだから放置。消化の良い物をたくさん入れた栄養満点のスープにリンゴは切っとけば良いでしょう!!


こんぐらいあれば今日のお昼と夜、明日の分のご飯にもなるでしょう!!


待っててね彩海。美味しいごはん作ってくるから!!!






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