出会いと願い
「みんなー!おはよー!!」
「おはよう」
「滄井さんもおはよう」
「おはようございます」
朔夢ってよくあんまり仲良くない人にも挨拶できるよね。私じゃ絶対無理。というかする必要性を感じない。
「朔夢ー。今日の数学小テストあること覚えてる?」
「え!?何それ!?私聞いてない!!!彩海は知ってたの!?」
「もちろんです。先週から言われていたではありませんか」
「何でさっき来る途中に教えてくれなかったの!?」
「聞かれなかったので。それに先ほど教えるのと今教えるのでも変わりませんしね」
「それでも教えてくれたっていいじゃん!!」
だってあそこで伝えると絶対急いで学校に行こうとするじゃん。病み上がりなのにそんなことすると今度こそ熱出すぞ?
「やばい!どうしよどうしよ!!」
はぁ、しかたない。
「朔夢さん、これをどうぞ。今日の小テストの範囲をまとめたものです」
どうせこんなことだろうと思って試験用に作ってた公式とかをまとめたノートを渡す。
「ほんと!?ありがとう!!!さすが私の親友!!!!」
ちょっ.....!はーなーせーっ!!いきなり抱き着いてくるんじゃない!!
「あの、放してください。苦しいです」
「それじゃ勉強してくる!!」
ほんと騒がしいんだから。
ーーーーーー
そんなこんなで無意味な時間を過ごしてたらいつの間にか朝のHRになった。小テストの方は、まぁ8割は取れるだろうからそれでいいや。
「それじゃあ今からHR始める前に一つお知らせだ」
朝のHRとか聞く意味ないと思う。別に重要なこと話さなそうだし。
それよりも早く見つけないと。
朔夢にも叔母さんにも迷惑かけない死に方を。より自然に死ねる方法を早く見つけないと。
生きることに全く価値を見出せない。何をやるにしてもやる気は出ない。自分から何かをしようとは思えない。
あのノートだって結局は夏休みに補習に行きたくないから作ったもので、それ以外に別に意味はない。
私が死んだら朔夢や叔母さんを悲しませるかもしれないけどそれだけ。他の人は別に私が死んでもなんとも思わないだろうから躊躇なく死ねる。
でも下手な死に方すると二人をすごく傷つけると思うからそこにだけは気を付けないと。
...................?なんか、いつもより騒がしい?何かあった?
「今日からうちのクラスに来る子だ。自己紹介よろしく」
「はい。皆さん初めまして宵月暁黎と言います。よろしくお願いします」
............................私あの子のこと大嫌いだわ。よりにもよってなんであの色をもってるかな。
全てを飲み込んでいったあの色。私にとっては大嫌いなあの色。二度と目にしたくなかったあの色。
綺麗な綺麗な、とても綺麗で何もかもを吸い込んでいきそうなあの紫色。私から全てを奪っていったあの紫色。
それを誇るかのように綺麗で真っすぐなあの紫色の髪。
「それじゃ宵月は滄井の隣でいいか?滄井は学級委員もやってるし、分からないことがあれば滄井に聞くように。それじゃ席に移動してくれ」
..............................................は!?
「分かりました」
視界に入れたくないのになんで.........!同じクラスなのはまだ我慢する!でも、でもさすがにこれはないんじゃない!!!
「えーっと、蒼井さん?初めまして宵月暁黎です。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくおねがいしますね」
今からでも良いから学級委員辞められないかな?もしくは学校もう来なくても良いかな?
「もし時間があったらで良いんですけど.........」
「転校生ちゃんヤッホー!!私は緋翠朔夢って言うんだ!!これからよろしく!!!」
.......................!?..................朔夢?どうしてこんな変なタイミングで会話に割って入ってきたの?でも、私にとっては好都合。ありがとう朔夢。
「はぁ.......宵月暁黎です。こちらこそよろしくおねがいします」
「そかそか!私のことは気軽に朔夢って呼んでね!!」
「分かりました........。では私も暁黎と呼んでください」
「了解!!」
「よし!それじゃあ今日の連絡事項は......................」
........................なんか顔にめちゃくちゃ視線を感じるんだけど。過去最高に見られてるんけど。
「じゃあ今日も一日頑張るんだぞー。」
あまり意味のない朝のHRが終わった。次は数学で小テストあるけど朔夢は大丈夫なのかな???
「ねね暁黎さん!前はどこ住んでたの?」
「前の学校ってどんな感じの所だったの?」
「その髪めっちゃ綺麗!!いいなぁ......。」
「えっと........」
そんな一気に質問したら絶対分からないでしょ?本当は関わりたくないけど学級委員っていう面倒くさいものになったから助け船ださないと。
パチン。と手を叩いて私に注目を集める。
「そんなに一気に質問すると宵月さんも答えられないですよ。質問したい気持ちも分かりますが一人ずつゆっくり質問してあげてください」
「あっ.........!ごめんね!」
「転校生なんて珍しいから興奮しすぎた........。ごめんなさい」
「私も。ごめんなさい」
「い、いえ。大丈夫です。滄井さんありがとうございます」
「当然のことをしたまでです」
「よっ!さすが我らが委員長!!」
「クラスのお母さんの名は伊達じゃないね!!」
誰がお母さんか!!!こんな面倒くさいやつらを私は相手にしたくない!!!!
「そんなことを言っていないで準備をしたらどうですか?次は小テストですよ」
「はーい。お母さん」
「やっぱり委員長ほどお母さんが当てはまる人ってうちのクラスにいないね」
だから!誰がお母さんか!!!
.....................ふぅ。落ち着け私。素の私をだしちゃいけないんだから落ち着け。
「.................彩海ちょっと良い?」
「朔夢さん?どうしました??」
いきなりなんだろう?小テスト大丈夫なのかな??
「ついてきて」
「分かりました」
ーーーーーー
朔良について行くと今は使われてない教室に連れてかれた。
「あの、朔夢さん?ここは??」
「ここは私が個人的に借りてる空き教室。なんで借りれたかは秘密」
「はぁ........。」
そんなことってありえるの?なんか裏取引でもしてるんじゃないの??
「それよりもその口調。今ここでは止めて」
「................分かった。で?ここに私を連れてきた理由は?」
「じっとしてて」
そう言って朔夢が私の顔に近づいてきた。..............体温チェックか。
「.................................やっぱり。今すぐ保健室行くよ。もしくは早退するよ」
「嫌だ」
帰る必要性もみえないしね
「嫌だも何もない!熱出てるのに放っておけるわけないでしょ!!今すぐ行くよ!!」
「大丈夫。別に辛くもなんともないし」
「嘘つけ!だったらその顔は何!?」
顔?別にいつも通りじゃない?
「怯えた目をしてよくそんなこと言えるね。ほんとは教室に戻ってあの色を見たくないんでしょ?それくらい分かるよ」
怯えた目?あの教室には戻りたくない?...............何言ってんの?
「無理しちゃダメ。平気な振りをしなくても良いんだから。ここには私しかいないんだから。彩海のことを昔からよく知ってる私しかいないんだから」
「だからね?思いっきり発散しちゃお?」
何かが切れる音がした。
「.............そうよ!怖いに決まってるじゃん!!見たくもないに決まってるじゃん!!あんな色二度と見たくない!!宵月さんには申し訳ないけど私はあの人と関わりたくない!!あの人と話してると思い出すの!!あの日のこと!!お父さんとお母さんと弟が死んだあの日を思い出すの!!自分だけが助けられた瞬間を思い出すの!!」
「...................うん」
「正直話したくもない!!でも私は学級委員であんなこと言われたら関わらないといけない!私がどんなに嫌でもあの人は私の隣にいるんだから話さないといけない!!それが嫌なの!!!」
「........分かってる」
「でもどうしようもないじゃん!!私は逃げられないの!!だから......だから!!!」
「うん。でも彩海がやらなくていいじゃん。私が代わりにやってあげる」
「................え?」
「何のために私がいると思ってるの。彩海が苦手なことは私がカバーする。昔からずっとそうだったでしょ?」
たしかにそうだったけど。でも、今回の事と朔夢は関係ないでしょ?
「........................。」
「彩海は独りじゃない。私がいる。私だけはずっと傍にいる。なんたって彩海の一番の親友だからね。だからさ無理しちゃダメ」
なんで、この親友はこんなカッコイイこと言えるの?
「..............うん」
「今日みたいなことがあったらこうやって私がなんとかしてあげる。だから一人で背負い込んじゃだめ」
弱い私が出てくるからもう、やめて。
「...................うん」
「それじゃあ今日は早退しよっか?」
そっと抱きしめてくれた。
「......................................うん」