始まり
いつか見たあの色。
漆黒の闇夜が炎で色付き、まばらにちった雲にもその色がほんのりついたあの紫。
何もかもを飲み込んでなくそうとするあの色。色々なものが焼けた匂い、肌に感じる熱気、そして息が詰まるほどの痛み。
全部全部あの時に得たもの。
私の大切なものを奪ってまで私に強制的に得させたもの。
そんな紫の髪を持つ不思議な人と私は会った。
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朝6時。なんとなくこの時間に起きるのがもう癖になった。
特別やることなんてない。今日のお弁当を作るくらい。それ以外することがないのになぜかこの時間に起きてしまう。
.............いや理由は分かってる。早起きはただの自己防衛なんだってことくらいは。
「はぁ...........学校行きたくな」
こんな世界滅びてくれたら楽になるんだろうな。
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外は嫌いだ。
どうしてもあの時を思い出してしまう。
極力外に出たくないけどそれだと叔母さんに心配かけることになるからそれは回避したい。でも私の願いが叶うなら叔母さんに心配かけても良いって思ってる。
だってこれは私の人生で、私の命の使い道は私が決めるんだから。
「まーくん!いってらっしゃい!!車に気を付けるんだよ!!」
「はーい!!!」
.....................最悪。この道通るんじゃなかった。
「........!...........み!........あみ!....彩海!!聞こえてる!?」
うわっ、びっくりした。昨日体調悪いって言って休んだくせになんでこんな元気になってるの?
「うるさい。ちゃんと聞こえてる」
「嘘だ!!さっきからずっと呼んでたのに全然気づいてくれなかったのに!?」
「それは朔夢が遠くから叫んでるからでしょ」
「たしかにそうだけどあんなに声張り上げてたのにそれで気づかないのはおかしいよ!!」
「はいはい」
「めんどくさくなったからって投げやりな反応をかえすな!!」
はぁ..........もう本当に朝からうるさいな。
でもそれが朔夢のいいところでもあるんだけどね。
「先学校行ってるから」
「いや!一緒に行こっていつも言ってるのになんで待ってくれないの!?」
さすがにそのテンションには付き合えないからに決まってるじゃん。
「その前に、はい!そこで止まる!!」
せっかく逃げれると思ったのに..........。
「今度は何?」
振り返った瞬間おでことおでこをくっつけられる。
朔夢の整った可愛い顔が間近にある。大きく開かれたきれいな黒目が私の濁った赤色の目を見つめてくる。
「...............うん。今日も熱はなさそうだし体調も悪くなさそう」
「はぁ、いつも言ってるけど体調管理ぐらい自分でできるから」
「嘘つけ!!中学の頃39度まで熱出してたのに平然な顔して授業受けてたのはどこの誰よ!!そのあげく40度まで上がっていきなり倒れたのはどこのどいつよ!!!」
そういえばそうだったね。あの時は別に苦しいとか感じなかったから適当に過ごしてたっけ?
「仕方ないじゃん。私平熱が普通に37度超えてるんだから」
「仕方なくない!!だからこうやって私が毎日確認してるんでしょ!!」
毎日確認する朔夢はすごいと思うよ。休日だろうが関係なしに朝おしかけてくるからね。
「.........そろそろ学校行かないと本気で遅刻するよ?」
「それは嫌だ!!急ぐよ!!!」
あっ.....ちょ!私の手を掴んだまま走るな!!