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32.時には洗濯も

「ヨシタツ様。一つ提案があります」

「おお。どんどん提案が欲しい」


 ジャンプ中だったため、ベルヴァの顔を耳元に寄せ彼女の意見を聞くことに。

 喋ると彼女の息が耳にかかってくすぐったい。寄せ過ぎた。

 駄竜もいるから、寄せるとなるとぎゅっと抱き寄せることになるんだよな。駄竜は最悪落ちても空を飛べるからいいとして、ベルヴァが落ちると大事になる。

 

 駄竜を腹に挟んで、ベルヴァの胸が俺の胸上辺りに密着する形になってしまった。

 くすぐったさを感じながらも、やり過ぎたかなとちょこっとだけ後悔する。彼女は俺がセクハラに過ぎる動きをしても、気分を害したりしない。

 ヨシタツ様、ヨシタツ様、と慕うというよりは敬意を払っているから、全肯定ガールになっている。

 それだけに危ういと思っているんだけど、こればっかりは中々ね。これも習慣。

 ハッキリと聞いたわけじゃないけど、彼女は邪蒼竜を倒した俺を新たな主として仕えている心つもりなんだと思う。

 彼女は巫女なのだから。何かしらに奉仕する使命的なものを持っているんじゃなかろうか。

 それでも、自分の意見を述べてくれるから、そのうちもっとフランクな関係に慣れるはず。道のりは遠そうだけど……。

 

「……というのはいかがでしょうか?」

「確かに。街中じゃできないし。フォルダを分けておいてどのような形で収納できるのか確かめることもできる」


 いいね! ベルヴァの言う事は最もだ。

 街に戻ってからまた出かけるより、今やってしまう方が効率が良い。

 

「一旦着地するぞー」

「はい!」

『肉はまだか』


 駄竜が食事をと煩いので、地面に降り立った俺たちは休息を取ることにしたのだった。

 もちろんアイテムボックスの中で。

 余談というか、アリアドネも他のペットたちも時が止まったまま収納されている。

 アリアドネを元に戻すのは言葉の赤の準備ができてから……すまんが、もう少し待っててくれよ。

 

 「獲物保管庫」フォルダに入った狩ったモンスターたちを取り出し、「夢のスローライフ」フォルダに収納する。

 続いてベルヴァと駄竜を収納し俺も中に入った。

 

「待て。肉を焼くのはいい。だけど、先に皮をはがしたりするんだって」

『何をするー』


 はいはい。駄竜の首根っこを掴んでぽいっと放り投げる。おー、よく飛ぶ飛ぶ。遠投向けだよな、あのサイズ。

 アイテムボックスに収納したとき、重なるように出て来ることが多いんだよな。全部が全部ってわけじゃないけど、現在、獲物が折り重なった上に駄竜が乗っている状況だ。

 ベルヴァは獲物の山から下へ降りた様子。


「ファフサラス。まず鹿もどきからやるから待ってろ。ベルヴァさん」

「はい」


 二人で鹿のようなモンスターを解体し始める。

 遥か彼方に飛んで行った駄竜が戻って来る頃には解体が終わっていた。

 

『我を何だと思っているんだ』

「良い運動しただろ? ほら、ブレスブレス」


 駄竜を掴み上げ、鹿の肉ブロックにぐいっと顔を向けさせたらブレスを吐く。

 こんがりお肉が出来上がった。

 

 駄竜が食べている間に残りを解体し……数が多ければ一体一体が大きいのでなかなか終わらねえ。

 駄竜が食べ終わった。別の肉ブロックを与える。

 こいつ肉なら選り好みせずに食べるよな。毒が入っている肉とかもありそうだけど、鉄の胃袋らしいから問題ないらしい。


「よし、これで全部だな」

「はい!」


 ぐううと俺の腹が盛大に悲鳴を上げた。

 これだけの量を解体したんだ。結構な時間がたっているよな。明るさが変わると嫌なので夜間モードはOFF状態で作業をしていたんだ。


「外を見てくる」

「行ってらっしゃいませ」


 ベルヴァが胸に手を当て頭を下げる。解体によって彼女の服も体も汚れているが、彼女の笑顔の魅力は一切損なってない。

 日本にいる頃の俺だと、魔物の体液や脂でベッタリに嫌悪感を覚えていたかもしれない。しかし、今は違う。

 仕事をやりきった人の勲章に見えるんだ。もっとも、俺の方が遥かに汚れているけど、言いっこなし。

 

 外に出るとすっかり暗くなっていた。すぐにアイテムボックスの中に戻り、ベルヴァに外はもう夜だったことを告げる。

 駄竜のブレスで肉を焼き、持ってきた香草やらで包んで食べることにした。

 他にはスープとパンも一緒に。塩コショウと辛子味噌くらいあれば、もっとおいしく食べることができるんだけどなあ……と思いつつ腹いっぱいになる。

 

「ふう。今日はそのまま寝てもいいんだけど、さすがに体がべたべたで気持ち悪い。ベルヴァさんもだよな?」

「私は平気です。着替えもありますので」

「俺はこのジャージしか、ローブもあったな」

「ズボンもあります。ヨシタツ様のお召しになっているジャージよりは品質が相当落ちますが、汚れもありません」


 そういえば、族長からもらった品の中にそういうものが入っていた気がするぞ。

 まとめてアイテムボックスの中に放り込んで碌に見てもいないから……アイテムボックスは便利でいいけど、収納しちゃうと実物を見ることがないので、忘れてしまう。

 収納したアイテムを一覧表示する機能もあるんだがね! ちゃんと見ろよ、俺ってやつだ。

 

 彼女は平気と言うけど……俺は用意もあるならさっぱりしておきたい。

 

「俺は水浴びして、ジャージを洗っておこうかなと。ベルヴァさんも水浴びする?」

「私も良いのですか?」


 彼女の尻尾がピンとなる。表情はそれほど変わってないけど、尻尾が彼女の気持ちを現していた。

 やっぱり、さっぱりしたおきたいよな。

 

 水は大量にあるし、水桶はここに三つほどある。


「ベルヴァさん、一旦外に出よう。ファフサラスはここで待っててくれ」

『我は寝る』


 満腹な駄竜は顎を地面につけ目を閉じていた。この辺、人間より動物に近い。

 ベルヴァを外に、続いて俺も外に出る。

 月明かりが俺たちを照らし、よくわからない魔物の鳴き声が遠くから聞こえてきた。

 

「準備するからちょっと待っててね」

「はい」


 フォルダを新しく作って、水と桶にあとはタオルやら着替えやらを。

 これでいいかな。

 ベルヴァと共に新しく作った「風呂(予定)」フォルダの中に入る。

 

「うん。これでまあいいだろ。ベルヴァさんの服はどれがどれか分からなかったから適当に引っ張ったけどこれでいいかな?」

「はい。問題ありません」

「本当は風呂にしたかったんだけど、今はこれで我慢してくれ」

「いえ! 水の塊が宙に浮いているなんて、ヨシタツ様の魔力の一端を拝見できて感動しております」


 そうなのだ。桶に入れた水だけでは足らないと思って、水30リットルをフォルダの中に入れておいたんだ。

 スタック有にしたので、水が固まりとなって地面から1メートルほどのところに浮いている。

 

「ま、待ってベルヴァさん。まだ服を脱がないで! 俺がいる」

「え?」


 服に手をかけ始めた彼女に待ったをかけた。ビックリしたよ。俺がいるのに躊躇なく脱ごうとするなんてさ。

 

「また後で。俺用のも作っているから。ここなら誰も覗かないので安心して水浴びをしてくれよ」

「は、はい」


 心なしか彼女の尻尾がかくんとした気がしたが、気のせいだろうと思い、一旦外に出る俺なのであった。

 

ドロマエオとケラトルの取り違えがございました。

現在修正済みです。

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・タイトル

緑の魔女ルチルの開拓記~魔力無しと追放された元伯爵令嬢ですが、実は魔力が数倍になっていました~

・あらすじ

魔力無しと追放された女の子が実は計測できないだけで膨大な魔力を持っていて、その力と仲間たちと協力して快適な村を作って行くおはなしです

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