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第九話 妹と護衛

「ソルリア、この娘の服を脱がせなさい」

 スターレスト様の妹君ウィルメイ様に裸を見せろと言われてしまった。ストレートに嫌とは言えないため、一人ではドレスが脱げないと言ったら、親切にもメイドのソルリアが手伝ってくれた。余計なことを……。

 真っ裸にされた私の体を舐めるように見て、服を着せるようにソルリアに命令した。

「本当に貧相な体ね。しかもまだ子供じゃない」

 どう見ても5,6歳のウィルメイ様に言われたくない。

「正妻オーフェルも、貴方と同じくらいの年齢だったわね。兄はロリコンなのかしら? 貴方もそう思うわよね?」

「わ、私にはわかりません……」

「良い子ぶっても意味ないわよ。はっきり言って、メイシャル・フランデリア。貴方のことは大ッキライ」

 これはウィルメイ様による揺さぶりだ。

 聞き流してしまえば問題ない。問題ない……。

 泣くな……。あっ……。

「ちょっと、泣かないでよ」

 アニーやエルブレンドに散々注意されていたのに……。

 人前で感情的になってしまった。泣いてしまった。

「わ、私は子供をあやす時間はないの!! で、出ていって頂戴!!」





 バタンと豪華で頑丈な扉が閉まる。こんな泣き顔じゃ、屋敷の外で待つエルブレンドやマシルマに会えない。

「メイシャル?」

「えっ?」

 スターレスト様だった。驚くがスターレスト様も住まわれるお屋敷なのだ。いるのが当たり前だった。

 泣き顔のまま私はスターレスト様の部屋に案内された。

「妹に随分とやられたみたいだね」

 スターレスト様は自ら淹れたお茶をマグカップ後と私に渡す。

 貴族の作法とかは気にしていないようだ。

「嫌われてしまったみたいです」

「ハハッ。妹に好かれる者など滅多にいない」

「それよりも申し訳ない。君との時間がなかなかとれなくて」

 確かに……。未だに一度も二人きりで話したことなど無かった。




「な、何なの!? いきなり泣き出すなんて」

「まったくです。貴族のご令嬢ともあれば、あそこはグッと堪えるところ。そもそも泣くなら裸にされたところでしょうに」

 ウィルメイの言葉にメイドのソルリアも即答する。

「気分が悪いわ。ちょっと散歩してくるわね」

 ウィルメイは護衛も付けずに屋敷を飛び出す。そして視界に入ったのは、かつて自分を悪漢から救い出してくれた一人の少女の姿であった。

「マ、マシルマお姉様!?」

「ウィルメイ様? 随分と大きくなられましたね」

「ウィルメイ様、お久しぶり」

「え? エルブレンドまで? 一体どうしたのよ?」

「うん? 私達の主とお茶会だったのでは?」

「まさか……メイシャル・フランデリアの護衛!?」




 スターレスト様の話術に乗せられて、素敵な時間を過ごしたメイシャル。

 ついつい最近覚えた自慢の六大精霊術・土について自慢する。

「例えば……その暖炉の裏側から迷宮に行けます?」

「凄いな、これは数人しか知らない緊急用の脱出通路だ」

 今のメイシャルには魔眼を使わなくても建物の構造が手に取るようにわかる。

「ほ、他の者には黙っておきますね」

「メイシャルを信じるよ」

 紳士的で、知的で、清潔で……とは正反対だ。

「もっと話したいが、そろそろ時間だ」

 恐ろしく装飾された振り子時計を見てスターレスト様は言った。

「はい……」

「メイシャルの屋敷と繋がっていれば……。夜は6時で門が閉まってしまうからな」

「あ、あの……私、抜け道から来られるかも」

 メイシャルは暖炉をジッと見つめていた。



 メイシャルが屋敷を出ると、スターレスト様の妹君ウィルメイ様がマシルマやエルブレンドと仲良く話していた。

「メイシャル・フランデリア……。貴方のことは嫌いだけど、今度屋敷に遊びに行くわ」

「ウィルメイ様、それは私達に会いに来るということですか?」

「そうよ。メイシャル・フランデリアではなく、マシルマお姉様とエルブレンドに会いに行くのよ」

「ウィルメイ様、私たちはメイシャル様の従者です。主を敬わない者と仲良くする事はできません」

 マシルマがウィルメイ様に厳しい口調で言った。

「わ、わかったわ。メイシャル……。と、友達になってあげるわ」




 その夜、エルブレンドをベッドに誘った。しかし、隣で寝るエルブレンドは凄く不機嫌だった。

 エルブレンドは子供だ。夜ふかしは苦手なのだ。

「メイシャル、相談は何? 早く寝たいんだけど」

「あの……。私って暗殺対象らしいの。それを止めさせるには私も暗殺するしかないって」

 エルブレンドはため息をつくと目を閉じた。

「誰に聞いたか知らないけど、確かにシレーン国内ではそんな風習が根付いている。だけどメイシャルが暗殺ると後ろ盾になったブルリュ様の名を傷つけるわよ」

「でも……」

「確かに六闘技師の連中が襲ってきたら私達では太刀打ちできない。でももっと信頼して欲しいの」

 負けん気の強いエルブレンドの瞳から涙が零れ落ちる。

 こんな小さな子どもを傷付けてしまった。

「ごめんなさい、エルブレンド」

 何のクッションもない貧相な胸でエルブレンドを抱きしめる。

「ごめん。メイシャル……怖い……よね」

 エルブレンドは全身を震わせって心の底からメイシャルに謝った。

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