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第8話 奴隷市場へ

「アレだな」


 沢山の櫂が節足動物の脚みたいに、船体から突き出た⋯⋯確か『ガレー船』というタイプの船だ。

 ちょうど近くに、港湾で積み荷を移動させている船乗りがいたので、船について聞いてみる。


「あのくっさい船は何だ」


「ああん? ⋯⋯ああ、あの船の積み荷はこの街一番の人気商品さ」


「人気商品? なんだ?」


「アンタ知らねぇのかよ、奴隷だよ、奴隷」


「ほう」


「ガレー船ってのは、積み荷も、漕ぎ手も奴隷ってのが相場だ。漕ぎ手は暴れ出したりしないように鎖に繋がれて、何もかんも垂れ流し。だから臭ぇんだ。全く、こっちの積み荷に匂いが移る前に作業しねぇと」


 どうやら、奴隷ってのはひどい環境で働かされてるようだ。


「なるほど、忙しいところ済まんな」


 邪魔をした詫びに、俺は懐から黄金の粒を一つ取り出し、渡そうとした。

 すると男は目の色を変えた。


「お、おい、冗談だろ? よせって、そういうのは」


「何がだ?」


 逡巡している男の手を取り、手のひらに黄金を乗せる。

 男はしばらく黄金の重さや色を見ていたが⋯⋯。


「おい、アンタ、これ本物じゃねぇか」


「そうだろうな。まあ、話の礼だ」


 当然だ。

 魔王様や爺やが偽物を渡すとは考えにくいからな。


「いや、それにしちゃあ多すぎる! わかった、もう少し教えるよ。あの船の積み荷は『魔族』や『半端者』らしい」


「半端者?」


「それも知らないのか? ハーフだよ、魔族と人間の。長い間抵抗していた魔族の里に領主様が派兵して、一網打尽にしたらしい。その結果奴隷が大量入荷したってことだ」


「ふーん、なるほどな」


「そのせいで、今この街の奴隷市場がパンパンで、船から下ろしきれない『荷物』が、ああやってまだ船にいるんだよ」


 なるほど。

 奴隷は需要の多い商材だろうが、供給過多にならないように調整している、ということだろう。

 劣悪な環境に押し込められ続ける奴隷にしてみればたまったものじゃないだろうが、奴隷の苦情なんて聞く耳持つ者はいないだろう。

 奴隷の事ばかり聞くのもなんなので、男が運んでいる者についても尋ねる。


「ちなみにお前は何を運んでるんだ?」


「ああ、武器だよ。剣やら槍やら最近多くてさ、戦争でも始めるのかね⋯⋯おっと、これはあまり言わないでくれよ、結構『上』からのお達しらしいからさ」


 上、と言いながら男は指を上に向ける。

 恐らく偉い奴の指示、ということだろう。


 武器か。

 もしかしたら、暗黒大陸に遠征するために集めているのか? だとしたらさっさと勇者とやらをブチ殺さんといかんな。


「良くわかった。色々すまんな」


「俺が言ったって言わないでくれよ、この街じゃ公然とはいえ、一応秘密だからさ。じゃ、俺仕事に戻るからさ⋯⋯いや、これがあれば今日はもういいか」


 と言った男は、黄金を懐にしまうと積み荷など放ってどこかに行ってしまった。

 無責任な奴め、ま、俺が雇い主でもないし、咎める気もないがね。


 男の話を整理すれば、こうなる。


 あの船には、最近捕まった魔族や魔族のハーフたちからなる奴隷が積まれてる。

 そのせいであの船は臭い。

 俺は臭いのは、嫌。

 解決策はシンプルだ。


「よし、じゃあ奴隷を逃がそう。そうしたらこの臭いのもマシになるだろう」


 これは別に、捕まってる奴が可哀想とか、そういうのは一切ない。

 ずっと一人だった俺には、近しい人物に対してはともかく、魔族全体に対しての同族意識みたいなものはまるでないからな。

 捕まるのは弱いからだ。

 弱い奴は強い者に支配される、それが世の(ことわり)って奴だ。

 そういう意味では、こうやって魔王様の部下として働く俺も似たようなもんだな。


 ⋯⋯ちょっと同情しそう。

 

 とは言え、だ。

 流石に昼間っから船を襲撃したりすれば目立つだろう。

 奴隷逃がして空気スッキリ作戦は、とりあえず夜にでも決行するとして、まだ時間はある。


「敵を知るのが大事って、爺やも言ってたからな」


 情報収集のため、まずは奴隷市場とやらを視察だ。


主人公の初バトルは16話目です。

ちょっとそこまで間がありますが、とてもかっこいいので是非この物語を追いかけてください。




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