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ルーク・シェラードー4





 ―人形使い「ドール・マスター」



 それが神様から授かったスキルの名前であった。



 「……ザイン大司教、これは一体どのようなスキルなのですか?」



 ザイン大司教にそう尋ねた父様は兄や姉とは明らかに毛色の違うスキルにどこか落胆しているようであった。


 「ドール・マスターですか。私も始めて聞く名です」


 顎に手をやり思案していたザイン大司教は鑑定の書を手に取るとスキル名が書かれたページを引き千切りボクに手渡した。


 「ザイン大司教様!?」


驚くボクを他所に鑑定の書は手の上で淡く光るとそのまま消えてしまった。


「か、鑑定の書が」


「ルーク、掌を御覧なさい。そこに小さな魔方陣が刻まれているはずです」


 「魔法陣?」


 ボクはザイン大司教の言う通りに右の掌に目をやると、そこには鑑定の書の表紙に描かれているのと同じ紋様の魔法陣が刻印されていた。


 「神託の儀式を受けたものは掌に魔方陣が施されます。ルーク、その刻印に意識を集中させ鑑定の書をイメージするのです」


 「わ、分かりました。やってみます」


 ボクはそっと目を閉じ深呼吸すると頭の中で鑑定の書をイメージしゆっくりページを捲っていく。


 丁度半分ほどまで捲ったところで手を止めるとそのページだけが何故か先程と同じ様に淡く輝いていた。


 「ルーク、そのまま目を開けてごらんなさい」


 ザイン大司教に言われるまま目を開くと、眼前には“ドール・マスター”と書かれた一冊の書物が宙に浮かんでいた。


「ザ、ザイン大司教様、こ、これは!?」


「それがルーク、お前に与えられたスキルの書です。それはお前の能力が記された他人には見ることが出来ない特別な書物。神託の儀式を受けたものは例外なくその書物を与えられます」


「父様や兄様たちも?」


「そうです。ルーク、本を捲るようにイメージしてみてください。そこにお前のスキルがどういうものなのかも記載されているはずです」


「はい」



 ボクは皆が見守る中、静かに息を吐くとゆっくりページを捲っていく。


 震える手で一枚、一枚ページを捲っていくとそこにはスキル名と共にこう記してあった。



 「この“ドール・マスター”は……、人形を造り出し操ることが出来る能力、だそうです」



 消え入るような声で一文を呼んだボクはそのまま俯きそっと本を閉じだ。

 


 「――よ、良かったじゃない、ルーク! ちゃんと神様からスキルを頂けて!」



 シアナ姉さまはボクが落ち込んでいるのを察したのか、何とか励まそうと声を掛けてくれた。


 「人形を造り出す能力何て素敵じゃない! ねぇ、コンラッド兄さまもそう思うでしょ?」


 「そ、そうだな、素敵じゃないか! ルーク、お前にピッタリだ。きっとこのスキル、ユニークスキルに違いないぞ!」



「――なにがユニークスキルだ」


 突然、父様が声を荒げ目の前の台座をなぎ倒した。


 「ドール・マスターだと!? そんなスキル、一体なんの役に立つというのだ!? 代々王国に仕えてきたシェラード家の恥さらしにも程がある。こんな事なら病弱だからと言って甘やかすのではなかったわ!」


「あなた!」


「うるさい! そもそもマリア、お前とシアナがルークに人形など買い与えていたのが悪いのだ! だからこんなゴミみたいなスキルを!」


「お父様、いくらお父様でも言っていい事と悪いことがあります! ルークに謝ってください!」


「い、いいんです、シアナ姉さま! 父様は何も悪くない。父様の期待に応えられなかったボクが悪いんです」


「ルーク、あなた――」



 悔しさから来るものなのかそれとも情けなさから来るものなのか。


 いや、その両方だったのかも知れない。


 なんとか気丈に振舞おうとしていたボクは自分でも気づかぬうちに涙を流していた。


 シアナ姉さまはそんなボクをただ黙って抱きしめてくれた。



 「――シェラード卿、わたしはあなたの職責を多少なりとも理解しているつもりです。その重責もね」


 「ザイン大司教……」


 「シアナ、神は何故私たちにスキルを与えるのだと思いますか?」


 「どうして? ……そんな事考えたこともありませんでした」


 「私たちにはそれぞれ神に与えられた役目があると私は考えています。それは王として国を守る役目であったり、田畑を耕し作物を育てる役目であったり。数えきれない程の役目がある中で、そのどれか一つ欠けても世界は回らないのです」


 「それではスキルというのは――」


 「神が与え給う役目を全うするために必要な能力だと私は思っています」


 「神の与えし役割、か」


 「そうです。神がこのルークにドール・マスターなるスキルを与えたのも必ず何かしらの意味がある。それはもしかしたらシェラード卿、あなたや王国を、いえ、世界を救うものかもしれないのです」


 「……」


 父様はボクとザイン大司教を交互に見やると目をつぶり押し黙った。


 それからしばらくすると父様は頭を下げ謝罪の言葉を述べた。



 「ザイン大司教、先程の神への冒涜たる私の失言、ここに深くお詫び申し上げます。……それからルーク、お前も悪かったな」


 「い、いえ、父様」 


 「マリア、シアナ、ザイン大司教をお見送りして差し上げろ。申し訳ありませんが、私は気分が優れぬゆえ、自室に戻ります」



 父様はもう一度ザイン大司教に深く頭を下げるとそれ以上何も言わずそのまま部屋を後にしてしまった。














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