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公爵家を勘当された僕は薬屋ソルシエールで働きます  作者: 雪下月華


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旧街道

 


 馬車は、アリティア王国の広い街道をゆっくりと進んでいく。


 朝の冷たい風が頬を撫でた。

 馬の足音と、車輪が石畳を転がる規則正しい音が、静かな旅の始まりを告げている。


(……辺境のほうは魔物が出るって聞いたけど)


 そんな話を思い出して周囲を見回すが、

 街道はよく整備されていて、危険の気配はまったくなかった。


 王国兵が見回りをし、

 旅人たちも穏やかな表情を見せる。


(本に書いてあったとおりだ……ここは安全な道だ)


 僕の膝の上では、小さなゴレムたちが

 外の景色に興味深そうに体を揺らしている。


「落ちないようにね」


 そう声をかけると、ゴレムたちはこくりと反応した。




 ――しばらく走ると、国境付近に近づいたあたりで前方に長い行列が見えてきた。


 「ルーク様……かなり混んでおりますね」


 御者が馬をゆるめる。


 検問所には、旅人や商人の馬車がぎっしりと並んでいた。


 「どうしてこんなに……?」


 疑問に思っていると、近くの旅人が教えてくれた。


 「坊や、今は国境越えは無理だ。

 街道の先で土砂崩れがあったんだよ。

 復旧はまだ始まってすらいないらしい」


 「そんなに……?」


 「迂回すれば 数週間は余計にかかる って話だ。

 俺たちも参ってるところなんだ」


 (数週間……それじゃ路銀がもたない……)


 胸がざわつく。



 検問所の兵士に話を聞こうとすると、開口一番、強い口調で制止された。


 「ここから先は立ち入り禁止だ! 危険だから帰れ!」


 「あのどうにかして崩落地点の手前まで行けませんか?」


 「……はあ? 何言ってんだお前。いつ次の崩落があるかわからないんだ! ダメに決まってるだろ!」


 「それはわかっています……! でも、少しでも前に進みたいんです」


 無理を承知で頼み込んでみたが──


 「子どもを危険地帯に行かせられるわけないだろう。悪いが帰ってくれ」


 兵士は頑として首を振り続けた。



 夜の国境付近は、焚き火の光が点々と揺れていた。

 旅人や商人たちが思い思いに腰を下ろし、疲れた顔でため息をつく。


 僕と御者も火を囲んで簡単な夕食を取っていると、

 隣に座っていた中年の旅商人が話しかけてきた。


「坊やたち、マケドニアへ行く口か?」


「はい。でも……通れそうにありませんね」


「だろうな。崩落が直るのはいつになるかわからねぇ。

 運が悪けりゃ数週間どころじゃ済まんかもしれん」


 旅商人は肩を竦めて続けた。


「だがな──“旧街道”ってのが昔あってな。

 今じゃ使う者もいなくなったが、森を抜けて国境の向こうへ繋がってるらしい。

 もっとも……まともに通れるかどうかは知らん」


 そう言って笑ったが、

 焚き火の影に落ちた表情には、どこか冗談に聞こえない重さがあった。


「旧街道……?」


 僕は思わず聞き返す。


「噂だよ、噂。ただ……このまま待ってりゃ路銀が尽きるだろ?

 探すだけ探してみる価値はあるかもしれねぇな。

 ま、自己責任でな」


 旅商人はそう言うと、火に小枝を放り込んだ。


 パチ、と燃え上がる火花を眺めながら、

 僕はしばらく考え込んでしまった。


(旧街道……

 道が残っているなら、もしかして……抜けられるかもしれない)


(でも……危険もある。

 地図にも載っていない道……

 行くべきだろうか……)


 ゴレムは僕の膝の上で、静かに体を揺らして僕を見上げている。


(……戻れば路銀が減るだけ。

 進むなら、道を見つけるしかない)


 火の揺らぎを見つめながら、僕はゆっくりと決意を固めた。



 翌朝。

 噂を頼りに森の縁を探していくと──

 草木に埋もれた古い石畳が見つかった。


「ここですね……旧街道」


 しかし、そこから先はひどかった。


 石畳は割れ、倒木や岩が行く手を阻み、

 馬車ではとても進めそうになかった。


 だが──

 このまま戻ったところで、街道は封鎖されたままだ。


(やっぱり進むしかない……)


 覚悟を決めて、僕はゴレムたちへ目を向けた。


 すると小さな泥の人形たちは、まるで「任せて」と言わんばかりに体を揺らしていた。




 ゴレムたちは荷台から跳び降り、障害物へ散っていく。


 彼らは小柄だが、見た目からは想像できないほどの力があり、互いに協力すれば大岩でさえ押し退かすことができる。


 御者は言葉を失い、ただその光景を見つめている。


 ゴレムたちは蔦をちぎり、倒木を脇へ運び、草木を取り払って道を少しずつ開けていった。



 しかし進むほどに、僕は妙な違和感を覚えていた。


 根元からねじ切れた倒木。

 岩に刻まれた、爪のようにも工具の跡にも見える溝。

 自然とは思えない倒れ方。


「……自然の崩れ方ではありませんね」


 御者が不安げに漏らす。


 けれど、

 魔物の仕業か、人の手なのか──

 断定できるものは何もなかった。


 ただ、

 “なにかが”ここを通った

 ということは確かだった。


 ゴレムたちもぴたりと動きを止め、森の奥をじっと見つめている。


 鳥の声も虫の音もない、

 不自然な静けさが辺りを支配していた。


「……慎重に進みましょう」


 そう言って僕たちはさらに奥へ踏み込んでいった。


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