本当に?
自転車を漕いでいる。学校から帰っている。キー。キー。
寒い。暗い。ひたすらの黒。
さして起伏のない高校生活。退屈である。
入学してからはずっと頭が痛い。体調の良かった日など、ほとんど無かった。
今日は珍しく快調だった。
あそこへ差し掛かる。ぞわぞわする。街灯は星空に紛れてしまうほどに遠い。嫌い。
しかし、上機嫌だった。頭痛が無い。
暗闇を漕ぐ。池に墨でも垂らしたのか。ヘッドライトは白墨か。
自分程の背丈が移動している。ヒトか。珍しい。
漕ぐ。ギィーコ。ギィーコ。進む。ギィーコ。
道路脇のガラクタがボンヤリ見える。
その反対のガードレールが目に付く。
アレは、ネコか。クロネコ。それにしてはクロのベタ塗りで、テカリが無い、闇。
ギィーコ。
街灯はLEDの鋭さを持っている。視神経にナイフ。脳髄の小爆発。
頭痛。激しく捻じ曲がる。
ぅ…。
ここから先は車通りと商店、街灯で明るい。
キー。キー。
白と黒の乱交だ。
キー。
チェーンの油が切れている。耳障り。
つまらない。不調で無くとも刺激など無い。
この横断歩道を越えれば、家に着いたも同然。
ただ今。