第2話
第2話 噂話
週末の客入は平日に比べるとスロースタートだ。
「Caffe KADUKI」の客層が若者になるためである。
輝夜が来店してから1時間もするとカウンターが2席、テーブル席が1つ空いているだけだった。
「やっぱりうちの生徒が多いね。」
輝夜が周りを見渡しながら蓮希に話しかける。
「そうね。やっぱりあの噂のせいかしらね輝夜ちゃん?」
蓮希が微笑を浮かべながら輝夜の顔を見つめると、輝夜は頬を染めて俯いた。
「噂?なんかあるの?」
コーヒーカップを拭きながら樹が問いかけるが、
「樹は知らなくていいのよ!」
と輝夜に凄まれてしまった。
蓮希と颯希は顔を見合わせながら微笑を浮かべていた。
「カランカラン」
来店を告げるベルが鳴るとホールの颯希が出迎える。
「いらっしゃいませ。一名様ですか?」
「はい。え〜っと1年の香月さんよね?アルバイト?っと思ったらA組の香月さんもいるのね。」
来店したのは香月姉妹が通う暁高校3年B組の大地遥だった。
「あら、大地さんいらっしゃい。因みに私の隣にいるのは弟よ。」
蓮希がスルーされた樹の存在を苦笑いしながらフォローする。
普段からあまり目立つことのない樹にとっては気に病むことでもないので通常営業で対応する。
「いらっしゃいませ。お一人でしたらカウンターへどうぞ。」
と輝夜の隣の席に誘う。
「あ、香月姉妹って聞いてたから2人だけだって勘違いしてたよ。弟くんもいたのね。
と、輝夜もきてたの?」
遥は輝夜と顔見知りだったらしく、カウンターに腰掛けながら話しかけた。
「おはようございます。私ここの常連ですよ。わからないことがあれば教えますよ先輩。」
2人は同じ弓道部の先輩後輩の間柄らしく、遥は部内で聞いた噂を耳にして来店したらしい。
「ほんと?なんでもいいの?じゃあ聞いちゃうぞ。輝夜が告白成功したのはここで恋愛相談してたからって聞いたんだけど、誰に相談すればいいのかな?」
「ふぇ?なんのことですか遥先輩!?私はここで恋愛相談なんてしてませんよ!」
輝夜は狼狽えながら両手を使って否定をアピールするが、
「ん。それは当店の恋愛マスターこと樹のことね。」
「ん。間違いないね。輝夜ちゃんを支えていたのは兄さんね」
香月姉妹は揃ってカウンター内で我関せずの樹を指差した。