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2-6


 幼いけなげな勇者たちは、魔女をかまどへ閉じこめて焼き殺してしまいました。


「やったわ、兄さん」

「よかったよ、グレーテル」


 ふたりはおおよろこびで抱きあって、互いの無事と勝利とを祝福しました。


「ところでグレーテル、目的を忘れてはいけないよ」

「ええ、もちろん覚えているわ」


 ふたりは魔女の城をくまなく物色し、金目のもの ―― 宝石やきれいな真珠 ―― を集めては前かけにかかえました。


「けっこうな収穫しゅうかくね。でも兄さん、ばちが当たらないかしら」

「かまうもんか、グレーテル。僕らは英雄になったんだよ」



 宝物をたずさえたヘンゼルとグレーテルは、意気揚々と家を目指して歩きはじめました。途中、鴨の背に乗って川をわたり、お礼にすこしだけ真珠をわけてやりました。


「ほんとうに、いいのかい?」

「ええ。私たちうんととってきたものだから、持って帰るのがたいへんなくらいですもの」

「ありがとう、勇者さんがた」



 家へ着くと、やつれたきこりがふたりを出迎えました。


「ヘンゼルと、グレーテルかい……」

「お父さま……」


 三人は涙をこぼして抱きあいました。


「ごめんよ、ひどいことをして」

「ううん、これからは一緒に、いつまでもいつまでも、しあわせに暮らしましょうね」


 ひとしきり泣いて親子の再会をよろこんだあと、きこりは子供たちの前かけからこぼれた宝物の山を見て驚いて、いっそう泣いてよろこびました。

 ところで、きこりの妻はすでにこの世の人ではなかったので、魔女退治の英雄ヘンゼルとグレーテルは、この父親と三人でしあわせに暮らし、父の死後は都会へ移り、数々の慈善事業でさらに名声を高めて世の人にしたわれ、天命をまっとうしてこの世を去ったのでした。


 そのあとのことは ――、この世にのこされた人間にうかがい知ることはできません。



 (おしまい)

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